49話 尊、ハードウッドを助ける。
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俺達が酒場の後片付けをしていると、クエストカウンターの奥からハードウッドさんの叫び声が聞こえた。俺達が急いで声がした方に向かうと、腹部を短剣で刺されれたまま倒れているハードウッドさんを見つけた。犯人がいないか部屋中に”鑑定”をかけたが反応はなかった、部屋についていた窓が盛大に割られていたのでどうやらすでに逃げた後らしい。
「ハードウッド様、大丈夫ですか。」
「尊様、申し訳ございません。売上の一部を盗まれました。」
俺はミュートに人が近くにいないかを確認させ、メイプルにアイテムボックスから全ての薬草と蒸留水を渡してポーションの作成をお願いした。
「メイプル、ポーションの作ってくれ。あと、お前の作ったポーションを使わせてもらうぞ。」
「構いません、あるだけお使いください。」
俺はアイテムボックスから、メイプルの作ったポーションを全て取り出した。
「ハードウッド様。メイプルが作ったポーションです。飲めそうですか?。」
ハードウッドさんが頷いたので、ハイポーションを渡す。メイプルが”ポーションは傷口にかけても効果があります。”と教えてくれたので、ハードウッドさんに了解を得て短剣を抜きながらポーションをかけた。俺は短剣に”鑑定”をかけると、幸いなことに毒物は塗られていなかった。気が付いたのが早かったおかげで、ハードウッドさんは特に後遺症などなく済んだ。
「尊様、ありがとうござます。クエストカウンターと私の命と2度も救われました。それと、申し訳ありません。折角の売上の一部を賊に盗まれました。」
ハードウッドさんは今日の売上を金庫に仕舞うとすると、窓から入ってきた賊に腹部を短剣で刺され売上の一部を持ち逃げされたらしい。俺達がすぐに駆け付けたので、盗まれた金額10万G程度と言っていた。
「取りあえず。メイプルに作って貰っているポーションを全て渡しますが、足りますでしょうか。」
「いえ、もう大丈夫です。尊様に頂いたハイポーションでほぼ完治しましたから。むしろ、あんな貴重なポーションを使わせたことの方が悪いと思っています。」
そんなことを言うハードウッドさんに、メイプルは”大丈夫です、あと5本程度は材料がございます”と言っていた。
「ハイポーションのお陰で後遺症なく回復したのも奇跡ですが、ハイポーションを安定して作成出来る方が近くにいたことはさらに凄い奇跡ですよ。」
ハードウッドさんの話だと大怪我にポーションを使うことが普通で、ハイポーションは瀕死の重体にしか勿体なくて使わないらしい。
「ハイポーション自体も貴重なのですが。安定してハイポーションの作成出来る薬師は大きな商会が独占するため、レシピすら出回ることはありません。」
「全ては、尊様を始めとする沢山の人達のお陰です。私を立派な薬師にして頂けただけでなく、後世に技術を伝える必要性も示してくださったのですから。」
メイプルの話を、ハードウッドさんは嬉しそうに聞いていた。
ハードウッドさんの治療が終わると、ナツメさん、ビーチさん、ティーさんが部屋に入って来た。ハードウッドさんは、入って来た3人に怪我はないことを伝えた。
「尊様、主人の命を救って頂きありがとうございます。」
「尊さん、ありがとうございます。」
「尊様、ハードウッド様を助けて頂きありがとございます。」
3人からのお礼を受け取った後、俺はハードウッドさんに詳しい話を尋ねた。
「ハードウッド様、襲って来た賊の姿を見ましたか。もしくは、心当たりはありますか。」
「尊さん、そんなのキャラバンの関係者に決まっているじゃないか。」
「ビーチ、少しは冷静になりなさい。相手は私達が取り乱すことを狙っているんだ、相手の策に嵌ることはない。」
ビーチさんは何か言いたそうにしていたが、ハードウッドさんの話を素直に聞いて口を閉じた。ビーチさんには悪いが、ここにいる俺達全員がドラッグの犯行を疑っていた。
「尊様、ビーチが失礼をしました。
賊の姿ですが残念ながらわかりません、私が金庫に売上を仕舞おうとした時に後ろから短剣で腹部を刺されました。それからすぐに尊様達がの足音が聞えたため、賊は売上の入った袋を取ってすぐに窓から逃走しました。私が見ることが出来たのは後ろ姿だけです。」
俺はハードウッドさんの腹部に刺さっていた短剣を皆に見せたが、こちらも村の武具店に売っている物のため手掛かりにはなりそうになかった。八方ふさがりになったので、犯人がドラッグである仮定で話を振ってみた。
「ビーチさんの考えていることが正しいとして、ドラッグがハードウッド様を襲う理由って何が考えられますか。普通に考えたら、私達から疑われるのはわかりますよね?。」
「そんなの、こちらを潰したいからに決まっているよ。父さんさえいなくなれば、ここの責任者はいなくなって取引が出来なくなるのだから。」
「ビーチの言う通りですが、それだとここで店を開くのは難しくなります。
商売は信用が第一です、気に入らなければ殺人を犯す者とは怖くて取引などできません。それに殺人を犯せば商売どころか、犯罪奴隷に落ちることだってありえるのですから。」
俺達がそんなことを言っていると、ティーさんが会話に参加してきた。
「行商人ドラッグ様を庇う訳ではありませんが、私は直接は関与していないと思います。あの方から何度かお誘いのお手紙を頂きましたが、完璧主義者もしくは用意周到というイメージを持ちました。ですのでハードウッド様に直接手を出して、疑われるようなことはなされないと思います。」
ティーさんの発言、俺とハードウッドさんとビーチさんは迷わずに納得した。確かにこれまでの行動を見てみると、今回の行動はいささか短絡過ぎる気がする。
「ティーの言う通りかもしれない。父さんを傷つけらえて決めつけたけど、あんな短絡的な行動する人が獣人の全てを奴隷になんか出来るとは思えない。」
「ビーチの言う通りだ。とするとキャラバンの方で何か問題が発生した結果、関係者の誰かが私を襲ったとみる方がしっくりとくるな。」
これ以上の進展は望めないため、明日は色々と調べてみることに話が決まった。俺とメイプルとミュートは家に帰ろうとしたが、夜も遅く危ないということで酒場の隣にある宿屋に泊まるように勧められた。
「じゃあ、私はベッドの準備をしてくるから、尊様、ビーチ、あなたは、先に行水をしてきてください。」
俺を含めた男3人はナツメさんに行水の道具一式を渡されて、井戸へ行って行水をする。酒場へ戻ってくると、ナツメさんがワインを準備して待ってくれていた。
「尊様、この度は主人を救って頂きありがとうございました。こんなものしかありませんが、宜しければ飲んでください。」
俺はナツメさんに気を遣わないように言うと、ハードウッドさんとビーチさんから”なんなら一緒に飲みましょう”と誘われた。
「尊様のことですから、メイプル様とミュート様に気を遣って晩酌などはされていないのでしょう。」
「父さんの言う通りです。それに1度は男だけで飲むのもいいものですよ、私も飲みたいですし。」
ナツメさんは、”親子だからって、そこまで似なくていいんだよ”と呆れていた。俺もお言葉に甘えてハードウッドさんとビーチさんとで、この世界で初めての晩酌と男同士の酒を楽しんだ。
そしてその日の夜、俺とメイプルとミュートは宿屋に1泊した。
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