4話 尊、受付嬢さんに聞く
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ベッドから起きると、いつもの天井とは違っていた。
「そっか、俺は転生したんだったな。会社に出勤しないのは嬉しいが、色々と勝手が違うのは戸惑うな。」
寝ぼけていた意識を現実に戻し、身支度を整える。1Fに降りると朝食を準備しているおばさんと目が合った。
「おはようございます、昨日はお世話になりました。」
「おはよう、今から朝食にするかい?。」
俺は”お願いします”と告げて朝食も頂く。メニューは、ミルク、パン、ゆで卵、野菜のスープだった。食べ終わると、おばさんにこの村で生活していくにはどうすればいいか聞いてみた。
「だったら、クエストカウンターに相談するのが一番だね。仕事を貰えるし、管理している空き屋なら格安で譲ってもらえるしね。」
俺はおばさんに御礼を言うと、隣の酒場になるクエストカウンターに向かう。
「いらっしゃいませ、クエストカウンターへようこそ。」
ラッキーなことに、昨日対応してくれた受付嬢さんがいた。俺は受付嬢さんにこの村で生活したい旨を伝え、アドバイスが欲しいと伝えた。
「この村で生活をしていく場合、まず必要になるのが収入の方法です。この村での主な例は、野菜や麦等の食物や糸や布等の服飾系の材料、こちらの採取及び販売による方法。次は、先ほどの材料を料理や衣服への加工して販売する方法、最後に、草むしり等の住民達の要望を叶えて報酬を得る方法となります。」
「なるほど、因みに初心者は何をするのがおすすめですか。やはり、草むしりでしょうか。」
「いえ、草むしりは主に子供達の小遣い稼ぎで、大人の方は食物や服飾系の材料集めて市場で販売されます。スキルのお持ちの場合は材料を取得もしくは購入した後、加工して市場で販売するのがほとんどです。」
「それと宿屋のおばさんから聞いたのですが、こちらで空き屋の販売を斡旋して頂けるときいたのですが・・・。」
「はい、1人住みの家なら5,000G~、3~4人家族住みの家なら20,000G~、1階が店舗で2階が事務所兼従業員の部屋付きですと100,000G~となっております。」
安い、いや安過ぎる。月極のレンタル価格だと言われても安過ぎる値段である。俺は受付嬢さんに間違いではないかと確認した。
「昨日勧めて頂いた宿屋の価格が、1泊朝食付で4,000Gでした。1人住みの家の価格より少し高いとはいえ同じ価格で家が一軒家が購入できるのはどちらかが間違ってませんか?。」
「確かに、尊様がおっしゃることはわかります。ですが、こうすることが1番いい方法なんです。
家というのは建っているだけではダメなのです。毎日掃除をしなければ埃が溜まりますし、窓を開けて空気を入れ替えたり家事で火を使ったりしなけらば家の中がダメになってしまうんです。
それに空き家の状態を放置すれば、野生の動物や犯罪者が住み着くため放置はできません。結果として、維持するにも人を雇わなければならないためお金ばかりが掛かってしまいます。ですから、安くても人に購入してもらう方がこちらも経費の節約となるのです。
最近は、”こんな田舎じゃやっていけない”って理由で出ていく人が増える一方で、こちらが負担する維持費は年々増える一方なのでこちらも困っているんです。」
と苦笑いをしている受付嬢さん。
「では、食物や服飾系の材料集めは一人でも出来ますでしょうか。何すればいいのかも、どこに行けばいいのかもわからないので・・・」
「町の端に”イーストダンジョン”と呼ばれる森がございます。そちらの森に存在する植物や魔物を討伐することで、小麦や果物、野菜や肉などを得ることができます。
スキルは何かお持ちでしょうか?。知識系のスキルをお持ちだとドロップが増えるため有利になりますよ」
「すいません、知識系スキルや闘うスキルも持っていないのです。私には無理でしょうか。」
「失礼ですが、武器もお持ちではないのでしょうか?。」
「使いこなせてませんが、”ロングソード”があります。」
そう言うと、俺は腰に差しているロングソードを受付嬢さんに見せてみた。
「でしたら、”剣術”のスキルを購入されたらいかがでしょうか?。」
「スキルって、購入できるのですか?。」
「はい、スキルの購入方法と覚え方を説明しましょうか?」
「お願いします。」
スキルの取得の方法には基本2つあり、一つ目は経験や体験を積んで覚える方法、二つ目は購入して覚える方法が存在する。後者の場合は、正確には取得というよりは譲渡に近いらしい。
例えばだが、まずスキルを持つAさんがいたとしよう、これをスキルを持たないBさんにスキルを譲渡する場合あるアイテムが必要となってくる。そのアイテムとは”スキル石”と呼ばれるもので、手順としてはAさんの同意の下でスキル石に渡したいスキルを記憶させる。それをBさんに渡して、Bさんが使用するとBさんはAさんのスキルを取得することが出来るらいしい。
だがこれにはデメリットがあり2つ存在する、1つ目はAさんはスキル石にスキルを記憶させると取得しているスキルを失ってしまう。2つ目はスキル石に記憶されるスキルは例外なくLv1になってしまう、つまり高レベルのスキルもスキル石に記憶させるとLv1になってしまうのである。
「なるほど、因みにどうやって使用するんですか?。」
「そうですね口で言うより、実際に見て貰ったほうが早いですね。少し、席を離れます。」
そう言って受付嬢さんは建物の奥に入っていく、しばらくすると握り拳ぐらいのクリスタルみたいなものを手に持って出てきた。
「こちらが、スキルが入ったスキル石になります。」
そういって、受付嬢さんはスキル石を俺の前に見せてくる。よく見てみると、石の中には小さな光が入っている。俺は石に向かって鑑定してみると、”スキル石 剣術”と書かれていた。
「こちらを持ちながら、”スキル取得”。」
手のスキル石から光が飛び出して、受付嬢さんの体を淡く光らせる。しばらく光っていたが、だんだん弱くなり最後にはきえてしまった。よく見ると受付嬢さんは透明な石を持っているが、中の光が無くなっている。再び石を鑑定しみてると、”スキル石”だけで剣術の文字が消えてていた。
「今度は譲渡です、”スキル譲渡 剣術”」
今度は受付嬢さんの体が光る、そして光が細かい粒子に変わって手に持っている石に集まっていく。受付嬢さんの光が消えるの確認した後、石を鑑定すると”スキル石 剣術”に戻っていた。
「スキル取得はご理解いただけたでしょうか。」
受付嬢さんに説明のお礼を言い、今度はスキルの売買の場所を聞いてみるとクエストカウンターで扱っているという。そこでこちらで提供されているモノを聞くと、1つ目は”住民及び村以外から来る依頼の仲介、2つ目は空き家の管理と販売、3つ目は”スキル”と”薬品”の売買、そして最後に、材料や生産品の買取もしていると説明してくれた。
「あれ、材料や生産品の販売はされていないのですか。」
「はい。市場の商人との取り決めで、材料と生産物は買取のみとなっております。村以外との取引は問題ありませんが、人が少ない村での取引の参加は市場のお客さんを奪ってしまうため行っておりません。
但し、事故や災害等で物資の調達が困難な場合は、参加することができます。」
「スキルは盗難があった場合使用後の回収がほぼ不可能になることと、違法な方法でのスキルの生産が可能ですので規制する意味でもこちらで管理しております。」
「違法な方法ってどんな方法でしょうか。」
俺は、疑問を口にしてみた。
「先ほどの説明でも言いましたがスキル石への記憶は、本人の同意が必要になっています、ですが例外を使えば、スキルの生産は可能になります。なぜなら生活に必要なスキルに限り、こちらもスキルの生産を行っているからです。」
「えっ、スキル石に譲渡すると自分のスキルが無くなるんですよね、スキルの生産って出来るのですか。」
「スキルを譲渡するとスキルが無くなるのは事実です、ですが全てを失うわけではないのです。例えばの話になりますが、長いことやってないことはやり方を忘れてしまうことがあります。”カンが鈍る”と言えば伝わりますでしょうか。」
「毎日していたことが怪我や病気等の理由で長くしていないと、うまく出来なくなってしまうってことでしょうか?」
「その通りです。スキルの譲渡でスキルが無くなった状態は、言うならば”カンが鈍る”ことです。ですが、”カンを取り戻せば”始めてスキルを取得した状態(Lv1)"に戻ります。」
「なるほど、スキルの再取得の方法は理解できました。ですが、スキルの譲渡は本人の同意が必要なのですよね?。本人が拒否すればスキル石の生産なんて成り立たないと思いますが。」
「おっしゃる通りです。ですが、スキルを持つ人と同意をする人が同じでない場合は可能になります。例えば、”奴隷”と”主人”のように。」
なるほど。奴隷は人ではなく”モノ”と判断されるため、主人の同意され得られればスキル石への記憶が成り立つという訳か。俺は納得したという顔を確認すると、受付嬢さんは話を続けてきた。
「ですからスキル石の管理は一部の者しか認められておらず、スキルの購入者もこの場で使用してスキル石の返却が義務付けされています。」
俺は受付嬢さんに説明のお礼を言うと、おすすめのスキルを紹介してもらった。
スキル”アイテム精製” 1,000G
・取得物を加工して、原料や原材料にすることが出来る。
スキル”料理” 3,000G
・食材を加工して、料理を作成することが出来る。
スキル”服飾作成” 3,000G
・糸、布、革、宝石といった材料から衣服や装飾品を作成することが出来る。
スキル”剣術” 8,000G
・片手剣や両手剣の使い方が上達する。
スキル”短剣術” 5,000G
・短剣の使い方が上達する。
「”アイテム精製”は、小麦から小麦粉を作ったり糸から布を作ったりすることが出来るので仕事と生活、どっちも使えるスキルです。
”料理”は、食材から料理を作ることができます。こちらは”調理”とは違い、”レシピ”知っていれば料理が一瞬で作れます。反対に、”レシピ”を知らないと使用することが出来ません。
”服飾作成”は、糸や布や革などを使って衣服や装飾品を作れます。スキル”料理”と同じく”レシピ”が必要です。特に衣服は頻繁に破れたりして使えなくなるので、材料さえあればすぐ作れるのでこちらのスキルは便利です。
”剣術”は、そのまま剣をうまく使えるようになります。うまく使えると攻撃力も上がりますが、武器の持ちが長くなるので便利です。
”短剣術”は”剣術”とは武器が違うだけで効果は同じです。」
俺は受付嬢さんのおすすめスキルを全て購入することにした。金額は全部で20,000Gで金貨2枚を渡した。因みに、今のステータスは以下の通りだ。
伊吹 尊 ♂ 人族 20歳
職業
スキル
”アイテム精製Lv1”、”料理Lv1”、”服飾作成Lv1”、”剣術Lv1”、”短剣術Lv1”
ユニークスキル
取得経験値UP(パーティー含む)、世界の理の書+αLv∞、アイテムボックス(容量無限)鑑定Lv-、マルチリンガル
装備
ロングソード、旅人の服、旅人のズボン、旅人の靴、極運の指輪
備考
今の武器はロングソードだが、壊れた場合のために後で短剣を買ってサブウェポンとして持つつもりなので”剣術”、”短剣術”両方購入することにした。
「こんな長いこと拘束してしまって、すいませんでした。そして、色々ありがとうございした。」
俺は、深々と受付嬢さんに頭を下げた。
「いえいえこれがお仕事ですし、スキルも買って頂けたのでお礼を言うのはこちらですよ。」
手を口にあてて笑っている。
俺は引き渡しの時間までこちらにいてもいいか、書類を出して受付嬢さんに聞く。
「それは構いませんよ、少し早いですが奥で事情聴取が終わったか聞いてきますね。」
失礼しますと頭をさげて、受付嬢さんが奥に消えていく。しばらく待っていると、受付嬢さんが帰ってきた。
「お待たせしました。手続きがございますので、奥の応接室までお願いします。」
俺は受付嬢さんの後ろについて行く。いくつかある部屋の1つに案内され、ここで待つように言われる。
案内された部屋は、真ん中に6人掛けのテーブルと椅子が置いてあるだけで窓すらない部屋だった。壁を軽く叩いてみると分厚いのか音が響かない。防音対策だろうかと、取り留めないことを考えているとノックの音が聞こえる。扉の方を見てみると、昨日ぶりのメイプルとミュートの二人の姿とお世話なった受付嬢さん、そして見知らぬ男性が1人立っていた。
誤字や脱字の報告、感想等で構いません。宜しければ、一言お願いします。