2話 尊、二人の獣耳と出会う。
横から心地よい風を感じたので目を開けてみる、どうやら俺は広葉樹の木の下で寝ていたいたみたいだ。不思議な空間とスーツ姿の女性、レイチェルの話が本当ならば俺は異世界に転生したはずである。取りあえず現状を確認しようとすると”ステータス”と念じるとゲームの画面?が目の前に出てきた。
伊吹 尊 ♂ 人族 20歳
職業
スキル
ユニークスキル
取得経験値UP(パーティー含む)、世界の理の書+αLv∞、アイテムボックス(容量無限)鑑定Lv-、マルチリンガル
装備
ロングソード、旅人の服、旅人のズボン、旅人の靴、極運の指輪
備考
画面を確認してみる限りでは、俺の我儘は聞いてもらえたようである。俺は見たことのない装備を詳しく見てみる、剣はよくわからないので服装を見る。
「服やズボンの素材は・・・、綿だろうか」
ジャージを部屋着にしているため、綿の洋服はいささか肌寒さを感じる。だが、気温自体は寒い分けではないため不快な気分にはならない。次に靴を見てみることにする。
「これは・・・、革の靴ようだな何の革まではわからないが。」
スニーカーに比べると蒸れそうな感じだが、スーツに合わせる革靴ほどではないのでこちらも気にしない。
ここでお金を確認してみるが、どこにあるのかわからない。ポケットというポケットを探したが貨幣や財布は見つからず、無くしてしまったのだろうかと疑ったが・・。
「もしかして、”アイテムボックス”の中にあるのだろうか。」
そう思い、財布の確認は後回しにしてスキルの項目を確認してみる。
”取得経験値UP(パーティー含む)”、
自分もしくは、自分がリーダーのパーティーメンバーに限り経験値を通常の10倍に上昇させる。
”世界の理の書+α”
この世界の全ての情報を閲覧でき、前世の情報の閲覧とエク〇ルと念じれば計算や図の作成もできる。
”アイテムボックス(容量無限)”
生きていなければ、あらゆる物を入れたり取り出したりすることが出来る。
”鑑定”
目に映るモノの詳細を調べることが出来る。
”マルチリンガル”
あらゆる人と会話することができる
取得経験値UPは検証できないので、世界の理の書+αから確認してみる。試しに”ロングソード”と念じてみる、するとロングソードの情報が色々出てきた。どうやらロングソードは購入は1,000Gで、売却は500Gで近くの相場らしい。
次に、エク〇ルと念じてみる。すると、いつも見ている縦に数字、横にアルファベットの画面が出てきた。試しに、SUM〇数をを使ってみたが問題なく使えた。
次に、アイテムボックスと念じてみる。これまで、エク〇ル画面が消えて縦10マス✕横10マスの碁盤のような画面に変わる。1番目に財布みたなアイコンがあったんでタッチしてみると、下記のような画面が現われた。
10,000G=
1,000G=
100G=
10G=
1G=
合 計 G
残額 1,000,000,000G
取りあえず、10万G分は下記の枚数で入力する。
10,000G= 8
1,000G=19
100G= 9
10G= 9
1G=10
合 計 100,000G
残額 999,900,000G
最後に、払出のボタンが出たので押してみる。胸のあたりに袋が現われたので、それを受け止める。中身を確認すると、金貨が8枚、銀貨が19枚、重さと描かれた数字が違うど銅貨28枚入っていた。
今度は入庫と念じてみると、胸のあたりに四角の穴が現われた。穴の中に袋の3枚の金貨を入れてみると、残額が30,000増加したのを確認してアイテムボックスを閉じた。
袋を懐に仕舞って、次に鑑定を指輪に使用してみる。
”極運の指輪”
装備者はあり得ない程の運勢の上昇を授けてくれる。
極運の指輪の効果が曖昧過ぎる・・・。いずれ理解できるだろうと思い、今は気にしないことにした。
現状は簡単に確認することができたので、今度は近隣を探索してみる。そういえば近隣の地図なんかもスキルでわかるのだろうか、物は試しなので「マップ」と呟いてみる。すると、目の前の画面に地図が現われた、試しに動いてみるとマップも動いてくる。どうやら、自分をを中心にしてマップを確認できるようだ。ついでに、「縮小」と呟いてみると地図の縮尺が小さくなった。
「地図によると、このまま真っ直ぐいくと道か街道に出られそうだな。」
この世界の時間は分からないが、夜になる前に町か村に到着したい。
「転生1日目から野宿は勘弁だからな。」
最悪街道に出ることが出来れば、人に会えるかもしれない。知らない場所で一人は心細い理由もあるため、俺は林の中から街道に向かうことにした。
林を進むこと数分、目の前に木が無くなり街道が見えてきた。取りあえず街道に出てから、マップを確認すれば町か村の方向がわかるだろう。本日の目標は野宿の回避に決めて街道に出ようとした瞬間、馬の悲鳴のような鳴き声が聞こえてきた。
「何だ、説明で聞いた魔物か。それとも、盗賊みたいなやつ等がいるのか。」
剣の使い方なんてわからないし逃げたいが、気づかれて後ろから襲われれば逃げることも出来ない。俺はマップを開いて馬のいる方を調べてみると、どうやら馬車があって近くに二つの丸い反応と死体の存在を確認できた。隠れながら馬車に近づく、よく見ると馬車の近くで倒れている商人らしき人がいる。俺は遠くから倒れている人に鑑定をしてみる。
”死体”
始めての会った人が死体っていうのは凹むな・・。マップの二つの反応の正体は盗賊で、馬車の荷物を物色中なのだろうか。関わりたくないが、物色中ならば油断しているので俺一人でも勝てる可能性も考えられる。勇気を出して馬車を確認してみると、二人の人が抱き合って震えていた。
よく見ると二人は人間の姿をしているが、普通の人の頭にはない獣の耳らしきものが付いていた。俺のことに気づいたのか、二人が俺に話しかけてきた。
「先ほど馬が悲鳴を上げいましたが、あっ、あなた様が原因でしょうか。」
「こっ、殺さないでください。なっ、何でもしましますから。」
言葉が分かるということは、”マルチリンガル”は効いているみたいだ。俺は最初に話しかけてきた、犬か狼の耳を持つ方に話しかけた。
「いえ、それは違います。私も馬の鳴き声を聞いて様子を見に来た者です。」
そして商人の死体を発見したことや、荷台に人の気配がしたので盗賊が物色している最中かどうかを確認するために近づいたことを説明した。詳しい情報を聞くために、俺は自己紹介をすることにした。勿論、転生したことは秘密にするつもりである。
「私の名前は、伊吹尊と言います。道に迷っていた所、あなた達を発見しました。現状の確認をしたいので荷台から降りて頂けないでしょうか。」
二人は恐る恐るだが、荷台を降りてきてくれた。
荷台から降りて来た二人は、みすぼらしい服を着ていた。いや、服というよりは大きな袋に穴を開けてそこから頭や手を出している、例えるなら幼稚園児がゴミ袋の服を作って着ているそんな感じである。
そして二人を詳しくみると、一人目は狼の耳が生えている20歳ぐらいの女性で髪は茶色で肩にかかる程度の長さだった。顔は警戒しているのか強張ってはいたが、白い肌の美しく気高い雰囲気を持っている。二人目の女性は猫の耳が生えている17~18歳ぐらいのまだ幼さが残る容姿で、髪は紫色で腰までかかりそうな長さであった。顔は怯えているのか狼の耳が生えた女性にしがみ付いていたが、可愛い顔をしている。
すると、狼の耳の女性が話しかけてきた。
「お初にお目にかかります、伊吹尊様。私は、狼人族のメイプルと申します。先ほどは無礼な態度を取り、申し訳ござませんでした。」
自らをメイプルと言った女性は、俺に向かって深々と頭を下げてきた。
「頭を上げてください。見知らぬ人がいきなり現れたんです、メイプル様の反応は何も間違ってないし、こちらも疑ったこと謝らせてください。」
そう告げると、俺はメイプルに頭を下げる。すると、今度は猫耳を生やした女性が話しかけてきた。
「わっ、私の名前は、猫人族のミュートって言います。えっと、その、尊様よろしくお願いします。」
まだ、怯えているのか尻すぼみに声が小さくなっていく。俺は出来る限り笑顔で、
「ミュート様、疑って申し訳ございませんでした。こちらこそお願いします。」
と言っておいた。互いの自己紹介が終わると、彼女達の事情も確認する。彼女達の話を聞いてまとめると以下のようになる。
・彼女達は村は違うが、貧しいために両方とも口減らしで奴隷として売られた。
・村から大きな町へ移動中に、急に馬の悲鳴と揺れて来て震えていた。
・様子を見ようとしたら、俺が現われて先ほどのやり取りになった。
つまり彼女達も急の出来事で、事態の把握が出来てないことがわかった。そうなると商人の死体の原因がわからない、事故ならばこちらに問題はないが殺されたのなら殺した者が確認に現れる危険が出てくる。気は進まないが、商人の死体をもう一度調べてみることにした。
「申し訳ありませんが、わかる範囲でかまいません。馬の悲鳴までに商人が何をしていたか教えて頂けませんか。」
俺は、メイプルとミュートの両者に質問をしてみた。
「そうですね・・・。関係ないかもしれませんが、商人様はお酒を飲んで御者をされていました。」
「その通りです、”成功の前祝だ、とっておきを飲むか!”ってご機嫌でお酒を飲んでました。」
「なっ、なるほど・・。酔っ払て御者をされていた可能性がありますね。」
俺は、商人の死体を再度確認してみた。よく見てみると、近くに革袋が転がっており鑑定してみると中身はお酒のようである。次に商人の服やズボンを見てみる、土で汚れていたり、破れている部分はあるが致命傷になりそうなケガはなさそうだ。ついでに、顔を見てみるが切られたり、殴られたような傷はない。気になる部分があるとすれば、凄く酒臭いことである・・・。
「これは・・、飲酒運転の自業自得で運悪く?亡くなったパターンだな・・・。」
飲酒運転は、前の世界、異世界に関係なく存在するようだ。いや、前の世界では法律で規制されて罰則がある分異世界より少ないのかもしれないが。俺は、メイプルとミュートの所戻り飲酒が原因で亡くなったのではと説明する。
「事件の可能性は低いと思われます。早速ですがあなた方はどうされますか?、奴隷の制度自体よくわからないので的外れかもしれませんが、私は何も見なかったことにしても構いません。」
せっかく転生して第2の人生を歩もうとしているのに、余計な問題は出来る限り遠慮したい。戦う力はほとんどないが、お金に不便することはないため村なり町に適当に移住すれば生活くらいは出来るだろう。と今後を思案していると、メイプルが話しかけてきた。
「尊様。もし邪魔にならないのあれば、私達を近くの村まで連れて行って頂けないでしょうか。私達は奴隷で、亡くなった商人様が主人として契約されおります。このままの状態では逃亡奴隷とみなされ、最悪・・、殺されても文句の言えない状態なのです。」
続けて、ミュートも話してくる。
「お願いです、見捨てないでください。それに主人のいない奴隷は拾った場合、拾った人のモノで出来ます。必要ないならお店に売ってくれてもいいです。私達、今の状態だと物扱いされていて、村や町に入ることすら出来ないんです。それに・・・、もう帰る家もないし。」
ミュートが”死にたくないよ”と涙を流しながら呟く。
こちらとしては近くの町や村への案内人が得られるのはありがたいし、可哀そうなので力にはなってあげたい。しかし、奴隷の主人である商人は死んでいる。俺がメイプルとミュートを連れていくことは、最悪の場合商人の殺害の容疑をかけられることも考えられる。
「私があなた達を連れて町か村に入れば、商人の殺害の容疑がかけらる可能性があります。あなた達に悪いですが、犯罪者にはなりたくありません。」
「尊様。申し訳ございません、私の説明不足でした。私達奴隷の条件に”嘘、偽りなく話せ”と命じられれば嘘が付かずに話さなければならないという枷があるのです。ですので、私達がこの命令の下で話せば疑われることはありません。」
なるほど、主人の金やモノ等の紛失時に奴隷を疑う場合の対応策ということか。しかも、考え方によっては奴隷側の身の潔白を証明する方法にもなる。
「二人の事情はわかりました。こちらとしても、村への案内をして貰えるのはありがたいのでご同行をお願いします。」
俺は二人に手を差し出した。メイプルとミュートは驚いていたが、”ありがとうございます”と手を取って応えてくれた。
「問題は、商人の体と馬車をどうするかだが・・」
馬車を動かせるなら荷台に商人の体を置いて、村まで行くことが出来るのが俺には無理である。馬車がダメな場合は、商人の身元が分かる物を物色して村まで歩く以外の選択肢はない。
「あの商人様ほど上手く扱えませんが、何度か馬車を動かしたことがあります。」
ミュートが手を上げる。
俺達は商人を荷台に置いて布をかけて後、俺達3人はミュートの運転で近くの村へ馬車を走らせた。
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