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1話 尊、転生する

「クソ部長、色の変更ぐらい自分でしろよ・・・」


ブラック㈱の総務部経理課に勤める32歳のデスクワーカー、伊吹 尊(いぶき たける)が呟く。


「グラフの変更や分析方法の変更ならまだ納得できる。だが、色が気に入らないって何だよ指定したのあんただろうが・・・。」


時は遡ること帰社の時間の5分前、尊は老害(部長)から明日使用する会議資料の変更を依頼されていた。何でも明日のラッキーカラーは青色ではなく赤色だそうだ、そういう理由で青色に強調した部分をわざわざ赤色に変更するという、不毛な作業に残業を余儀なくされていた。()()()()()()()()()()()()()()


「しかし、文字だけならまだしも()()()()()()()()()()って、大丈夫だろうか管理職として・・・」


作業を終わらせて一人で暮らしの家に帰宅すると、すぐにシャワーを浴びる。さっぱりした所で缶酎ハイでも飲もうと冷蔵庫を開けると


「げっ、缶酎ハイを切らしてる。時間は・・・午後8時か、近所のスーパーにでも買いに行くか」


尊はジャージとスニーカー姿で近所のスーパーに向かう、徒歩10分圏内にあるのはありがたい話だ。横断歩道の信号が青になったのを確認して歩き出すと、横から眩しい光に目を細める。右手で遮りながら光の方を見ると、20代と思われる男女が乳繰り合っているのが見える。


”独り身に見せつけやがって”


次の瞬間、体が軽くなり意識が無くなっていくの感じた。


目を覚ますと、そこは真っ白な空間だった。


「あれ、こういうのって病院で目を覚ますものじゃないの?」


「それは生きている人間の常識で、死んだ人間の常識ではないですね。」


横から声が聞こえたので、意識をそちらに向ける。そこには、穏やかにほほ笑むスーツ姿の女性が立っていた。


「お目覚めですか伊吹 尊殿、ご準備がよろしけば現状の説明と今後の説明を申し上げたいのですがよろしいでしょうか。」


仰向けの状態から起きて、女性を前にこちらも立ち上がり話しかける。


「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか。」


「これは失礼しました。私はレイチェルと申します、以後お見知り置きをお願いします。」


「伊吹 尊です、よろしくお願いします。では早速ではありますが、レイチェル様ご説明をお願いします。」


「レイチェルで結構です。では、ご説明を致します。」


レイチェルさんの説明の聞いた結果、以下のことがわかった。


・自分は車に轢かれて死んでしまった。

・今後は異世界に転生するか、元の世界に転生するかを選択出来る。

・異世界は、剣や魔法や魔物が存在するファンタジー世界である。

・異世界の転生を選択した場合、これまでの記憶と好きな年齢、スキル、装備を得られる。


「説明は以上となります。何かご質問はございますでしょうか。」


「では、いくつかよろしいでしょうか」


俺は見ての通り平凡な人間でついでに運動神経も良くない、それを考慮して以下のことを確認してみた。


・自分は、魔王や戦争といった争いごとは参加せず、スローライフを送りたい。

・あなたの思惑が分からず、分かっても応える自信はないがそれでも良いのか。

・異世界へ転生する場合、どんなスキルや装備があるのか教えてほしい。


「一つ目の質問の回答ですが、魔王はおりません。そして、自己責任の上で好きにして頂いて大丈夫です。」

「二つ目の質問の回答ですが、この世界は出来たばかりで文明が高くありません。ですから、あなたのような外部の人の知識で文明を進めたいのが主な思惑です。」

「三つ目の質問の回答ですが、こちらは可能な限りあなたの要望には応えるつもりです。」


俺は異世界の転生をお願いし、スキルや装備はダメで元々で思っていることをそのまま言ってみた。


「ヒト、モノ、お金、情報が充実するように出来ませんか。」


上記は俺が仕事を始めて上司から教えられた、”経営の資源”と呼ばれるものである。これを選んだ理由は、経営資源が充分であると経営が安定する。つまり、ヒト、モノ、お金、情報の充実は、異世界生活の安定に繋がりスローライフの実現へ繋がるではと思ったからである。

因みに、経営資源とは以下のようなものである。


・ヒトとモノとは、そのまま人と物でありこの両方をうまく組み合わせることによって、資産(利益)を増やしていくことが会社の意義に繋がる。

・お金は、人を雇う、物の購入する、製造する機械を購入する等の”ヒト”と”モノ”の取得に必要になってくる。そのため、お金の安定はそのまま会社の安定に繋がってくる。

・情報は、()()()()()()()()()()()()()()は必要ではなかった。しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()、売れる機会を作るために必要とされるようになったのである。


「ヒト、モノ、お金、情報ですか・・・。ヒトの充実は、人の成長を助けるスキル”取得経験値UP(パーティー含む)”を、モノとお金の充実はアイテムボックス(容量無限)と10億(ゴールド)で、どうでしょうか。」


お金の価値を聞くと、1ゴールド=1円ぐらいらしい。後、あまり派手な使い方は良くない人(誘拐や追いはぎ)を招くので注意することと、基本はモノの取得は自然物や魔物等からのドロップだとアドバイスされた。


「動植物(魔物を含む)のドロップが上昇する、スキルや装備品はありませんか。」


「でしたら、強運になる装備品を準備しましょう。」


「情報は、地図、街、モノや施設の値段は勿論、動植物の詳細なデータが載ったスキルでよろしいでしょうか。」


「それに前世の世界の情報と検索機能、可能であるならエク〇ル機能も付けられますか。あと、目で見た情報が分かるようにできますか。」


「エク〇ルとは、尊様の世界の計算や図を作れるモノのことでしょうか?」


「はい、厳しいでしょうか・・。」


「やってみます。後者は鑑定のスキルをご活用ください。」


「ありがとうございます。後は容姿ですが20歳ぐらいで、あと言葉も話せるように出来ますか?。」


「はい、問題ありません。では、以上で転生をしますがよろしいですか。」


「お願いします。」


「今のままですと怪しむものがございます、服装を変更することをご了承ください。」


「了解しました。」


「では、伊吹 尊様、良い人生の旅路を。」


白い光で前が見えなくなっていく、こうして俺の異世界のスローライフが始まりを迎えた。

誤字や脱字の報告、感想等で構いません。宜しければ、一言お願いします。

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