第4話 青春長者になりたい(願望)【3】
俺らは、爆音で音楽が流れている場所––––カラオケボックスにいた。
「いやー、カラオケとか久しぶりだなー、何ヶ月ぶりだろうなー」
「貴様、絶対に昨日行っただろ」
「な、悠誠、なぜわかったのだ!?」
「素人は一曲目からそんなに声が出ねーから、だいたい昨日あたりに行ってるんだろうなって思っただけだ」
どうだ?この推理。当たってないわけがなくないか?
「あー、半分あたりで半分はずれ」
「どういうことだ!」
今の答えに半分とかあるの?とか思いつつも問いただす。
「いや、俺、バンドやってるから。しかも、ボーカルだから」
「…………あー」
「やっと思い出したか」
そうだ。こいつはバンドを組んでいて、しかもギター&ボーカルの花形を務めているんだった。
改めてイケメンムカつく。まあ、そう言ったところで意味はないのだが。
ちなみに、俺らが色々と話している間にも、JK二名は絶賛歌唱中である。現在、夢奈が米津○師さんの曲を歌ってる。何気にうまい。『この中で俺が一番ヘタクソ説』浮上してきたぞこりゃ。
「ふぅー……あ!すごい!九十八点だ!」
「「嘘だろ!?」」
あ、今、美月と声がかぶった。よし、美月もヘタクソなんだな。よかったよかった。
……なんて思ってた時期が俺にもありましたよ。
夢奈の次は美月のターンだった。
「何の曲を入れたんだ?」
与菅がすかさず美月に聞いた。
「これだよ。高得点取れるかどうかわからないけどね」
「いや、そこは流れ的に高得点が取れそうなやつをだな……」
俺がツッコミを入れようとした時に、モニターに映った曲名に驚愕した。
「……は?お前、マジで?」
曲名は『初○ミクの消失』でしたとさ。
「いやいや、高得点以前に、まともに歌えないだろ」
与菅がもっともなツッコミを入れる。まあ、美月はやめる気がないんだけどな。
さて、結論を言うと、この後美月は歌いきった。しかも、
「は?九十九点?全国トップ?マジかよ……」
「はい、次は悠誠だよ?」
「……勘弁してくれよ」
俺はソード○ートオンラ○ンの一期の一クール目のオープニング曲を選曲した。
……八十五点だった。
「なんだよお前ら……歌上手すぎだろ……」
勘違いしないでほしい。今使っている機種は、テレビのカラオケバトル的な番組なんかでよく使われているものだから、それなりに判定は厳しめなのだ。
––––はい、言い訳でした。失礼します。
* * *
カラオケで二時間くらい歌ってからは、少し離れたところにあるアニ○イトに向かった。
もう、ただのオタク団体だよな、俺ら。もうどんだけアニメが好きなんだよって感じだよな。
まあ、実際好きなんだけど。
グループ的に、男子軍団はアニメ○ト、女子の皆さんは「先にゲー○ーズを見に行きたい」とのことだったので、別行動となった。
「ところで、与菅ってどんなジャンルのアニメが好きなんだ?」
「あれ、言わなかったっけ?」
「忘れた」
そこから、「うーん……」と唸ってから、こう答えた。
「やっぱり、ファンタジーとか、アクション系かな。特にソード○ートオンラインとかな」
「結構メジャーなとこだな」
「あと、ノーゲームノー○イフとか。それよか、お前はどうなんだよ?」
「ラブコメに限る!」
「あれ、お前『恋愛アレルギー』とか言ってなかったっけ?」
こいつ、なんで去年の雑談を覚えているんだよ。
「お前的に、読むのはオッケーなんだな」
「細かいことは気にするでない」
そんなこんなで、新刊のラブコメを二冊ほど買うのであった。
一方、こちらゲ○マーズでは……。
「ねえ、夢奈」
「ん、どうした?」
「あんたって、どんなアニメ見るの?」
「うーん……あまりコレってものがないから、一概には言えないんだけど、やっぱり、ラブコメかな〜。美月は?」
「そうね、私はアクション系かな?ほら、SA○とか。あと、ファンタジーも好きかもね。ノゲ○ラなんか特に」
「ふーん。結構メジャーなところだね」
もし、あの二人が聞いていたら、顔を赤くしていただろう会話をしていた。しかし、お互いに、まさか趣味について完全一致しているなんて思わないのである。
* * *
小一時間後、俺らはア○メイトやゲーマ○ズなどが入っているビルの入り口前に集合した。
合流して真っ先に目に飛び込んだのは、美月の膨張した手提げバッグが目に留まった。
「お前、どんだけ買ったんだよ!?」
与菅が間髪いれずツッコミを入れる。
「タペストリー三つ、ラノベ二冊、画集一冊、ら○んばんで買ったフィギュア二つ……」
美月が淡々と買ったものを述べているとき、与菅の反応はと言うと、「……(´・ω・`)」のような顔をしていた。
ちなみに、与菅は「金がない」などと言ってラノベ二冊とクリアファイルと缶バッチを買っていた。多分、買った量の差に驚いているのだろう。
ちなみに、俺はラノベ二冊オンリーである。俺も金がないのに、なんだよ、この格差は……。
「んじゃ、もうそろそろお開きだね」
時刻は午後七時を回ったところだった。確かに、ちょうどいい時間かもしれない。
「それじゃ、俺は帰る」
与菅が最初に地下鉄駅に向かった。
いや、俺を置いてくなよ。
その後に続いて、美月も駅に向かった。
「それじゃあね」
「ああ」
さて、俺もそろそろ帰ろうか。
「ねえ、私の存在忘れてない?」
「…………忘レル訳ナイデショ」
正直なところ、忘れていた。えーっと、何か気が利いた言葉……。
「そうだ。小説のネタ、思い浮かんだか?」
「いい感じ。あとは、一部改造を加えたら完成」
「それはよかった。また、ネタが思い浮かばなくなったら取材いこうな」
「うん!」
すごい満面の笑みを浮かべた。この笑顔が見れたし、ラノベ買えたし、俺的にも満足だな。
そんなわけで、俺らもここでお開きとなった。
しかし、ここで俺らは気がつかなかった。
「うぐぐ……」
建物の陰から俺らを羨まし(または恨めし)そうに見ている、数時間ぶりに登場した西田啓介の存在に。
次の日、西田は真っ先に俺に食いついてきた。正直なところ、ちょっと可哀想だった。俺が言うのもなんだがな。