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そしてオタクは夢から覚めた。  作者: 山波アヤノ
第1章 いつか夢見た物語
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第4話 青春長者になりたい(願望)【2】

「うーん、この服もいいけど、こっちも捨て難いんだよな」

「……」

「いや、でもこっちもいいなー」

「……」

「ねえ、与菅はどう思う」

「……お前」

「……ん?」

「そんなにオシャレが好きだったんだな」

「女子なら当たり前でしょ」

 遠巻きに眺めていた俺は、これまでに見たことがないほどに目を輝かせている美月を見て、若干の衝撃を受けていた。

 その一方で、夢奈は全くと言っていいほどそれらの服に興味がないらしかった。

「なあ、夢奈……お前、流行りのJK(女子高生)だよな?」

 俺がぼーっとしている夢奈のところへ歩み寄って話しかけた。

「うん。それがどうした?」

「いや、だったらもうちょっとオシャレには興味持ってもよくね?」

 俺の提案に、夢奈は首を傾げた。

「なんでJKになったらオシャレしなきゃいけないの?」

 俺はわかる。多分、これは素で質問してるやつだ。

「まあ、それは人の自由だから、俺がとやかく言えないな」

 そう言って俺はその場を離れた。そうこうしてる間にも、美月の買い物かごには服が積もっていく。

「合計でいくらだよ」

「うーん……一万円くらい?」

「まじかよ……缶バッチ30個……いや、もっと買えるな」

「なんで缶バッチで計算するのよ」

「オタクあるあるだ」

 果たして、他のオタクはどうなのかは知ったことはないが俺はそういう癖ができてしまったのだ。


 十分くらいしてから、買い物かごから何着か元の位置に戻し出した。

「あれ、結局戻すのか?」

「まだ、他にも回るからね」

「左様ですか」

「あ、そうだ。与菅〜」

「ん?なんだ?」

「これ、試着したいんだよね。似合っているかどうかみて欲しいんだ」

「え、なんで俺?」

「まあ、細かいことは気にするな」

「え、ちょ、わぁぁ」

 文字通り引っ張られていった。災難なやつだ。前にもこんな光景あったような気がする。

 なぜ与菅がやられたのか考えたのだが、答えは簡単なものだった。

「ま、俺じゃファッションセンスがゴミくらいだからイケメンに確認してもらったってところか」

 片手に一人で納得して、深く考えないことにした。

「与菅、どんまい」

 夢奈が、遠ざかっていく与菅の背中に言葉をかけた。この思い、届けばいいな。

 ––––俺は恋する乙女かよ。


 我々『オシャレに興味ない団(夢奈命名。ダサすぎね?)』は店の外でスマホ画面を横にしてラ○ライブをプレイしてた。二人とも親指勢だったので、場所には困らなかった。

 六曲くらいプレイし終わったときに与菅と美月が帰ってきた。与菅の顔はげっそりしてた。

 だからこそ、俺は

「デートはどうだった?」

 と聞いた。もちろん、与菅は疲れ切った顔で「なめとんのか」と言ってきた。

「悪い、冗談だ(笑)」

 まあ、俺がいろいろ言ったところで与菅は何も気にしないんだけどな。なんでも言い合える関係ほど楽なものはない。

「それで、次はどこ行くの?」

 夢奈の問いに、俺は高らかに答える。

「ゲーセンだ!」

「ウォォォ!ゲーセンが俺を呼んでいる!」

 与菅が叫びながら走り出した。商店街に響き渡る。どんだけ大きな声を出したんだよ。イケメンが台無しすぎる。

「私たちも走って追いかけなきゃ」

 美月が心配そうに言うが、「いや、問題ない」と言い切る。

 何しろ、ゲーセンは今の店から徒歩三十歩くらいのところにあるのだ。

 俺らが歩いてそちらに向かい、ゲームセンターに入ったら、入口のドアのすぐ右側に太鼓の○人があった。

 俺が太鼓とモニターの間にあるスペースにカバンを無造作に置いて、バチを与菅の方に向けて宣戦布告のポーズをとった。

「やるのか?」

「ああ」

 俺らは一気に勝負師の目になる。「勝負するところ間違えてるだろ」というツッコミはするなよ?

「選曲、どうする?」

「最初は与菅が選んでいいぞ」

「それじゃあ」

 結果、一曲目から体力勝負のコンボ数が多い曲が選ばれた。

 店中にドンっといい音が響く。

 ……俺はそう錯覚した。

 曲が終わってスコアを確認したら、ごく僅かな差で俺が勝った。

「面白くなってきたな」

「負け惜しみ言うんじゃねえ」

 二曲目は俺が選曲した。このゲームで二番目に難しいと言われている曲だ。よくプレイする人ならわかるはず。あれだよ、幽玄な雰囲気の乱れた曲だよ。

 これは与菅がまさかのフルコンボを取り、こいつの圧勝。

「面白くなってきたな」

「負け惜しみ言うんじゃねえ」

 さっきと全く同じ会話だが、発言者は反転しているから、気をつけていただきたい。

 さて、三曲目となった。これが最後の曲だ。

 俺らが対戦するとなったときに、暗黙の了解というのがいくつもあるのだが、最後の曲では最難関曲を選ぶというのもその一つだ。

 曲が始まった途端、店中に「ドン」と「カッ」の音がやかましく響き渡るのであった。


「うらっしゃああぁぁぁぁ!」

「ちくしょおおぉぉぉぉ!」

 これまたギリギリのところで俺の勝ち。総合も、二勝一敗で俺の勝ちだ。


 ちなみに、俺らが喜んだり、嘆いたりしている間、女子のお二方はプリクラを撮っていたそうだ。まったく、JKめ。

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