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tea time 8 いつかの優しい王さまと

 この上なく不本意であるが。


 暗く狭い物置部屋に、レアとパントジェーヌは閉じ込められていた。

 例の如く、ちょっとした言い争いをしていたところで、突然二人して謎の睡魔に見舞われ、気付くとこの薄暗い部屋に転がされていたのである。


 特に体を拘束をされているわけではないが、何か強い魔力で、扉が閉ざされているようで、少なくとも内側からは開かない状況だ。


 なお、埃っぽく狭い部屋に犬猿の仲の二人が閉じ込められれば、当然ながら黙ったままではいられないわけで。


「なんで、よりにもよって貴女と閉じ込められるのかしらね」

「……それは、こっちのせりふ」


 せめて別の相手であれば、まだマシだったのに。お互い、そう思う心を隠しもせず、ピリピリと睨み合う。当然ながら座る位置も、互いからより離れた対角線上に陣取っている状態だ。


「こんな陰険な子供と一緒なんて、気分が沈むわね」

「こんな高飛車なとしまと一緒なんて、うんざり」


 ほとんど同時に、相手に悪態をつき、ギリギリと睨み合う。

 ……しかし、そうやっていがみ合えるのは、まだ元気が残っているからに他ならない。その証拠に、何の進展もないまま少しずつ時間が経過して行くにつれて、次第に不安が芽吹き始める。徐々に二人の口数が減っていく。


 そもそも、何故自分たちは閉じ込められているのだろう、とパントジェーヌは思う。

 自分が恨みを買うとすれば王妃派の者たちからだろうか。そう推測したのだが、疑問に思うこともある。ならば何故、レアも一緒なのか、ということだ。


 そして、この結界。


 こう見えて、末妹のレアは強い魔力を持っている。その彼女をして、破ることのできない結界となると、一体どんな魔力の使い手の仕業なのか。深く考えると恐ろしくなってくる。


 やがて。


「わたしたち、出られるのかな……?」


 ぽつり、と呟いたパントジェーヌの言葉に、


「このまま誰にも発見されず、ひからびたりして」


とレアが応じた。


「ちょっと、やめてよ!」


 縁起でもないレアの言葉にパントジェーヌがきっと目を剥いたところで。


 バタン、と大きな音を立てて、勢いよく扉が開いた。暗闇に慣れた目が、突然差し込んできた光に眩む。そして、


「大丈夫か!?」


という、良く聞き慣れた声が響き渡り、二人は自分たちが監禁状態から脱することができたのだと確信した。


「ノエル!」


 少女たちは口々に歓喜の声を上げた。その様子を見たノエルは、ほっとしたように息を吐く。


「無事で良かった」


 そして彼は、二人に怪我などがないことを確認したのち、こう語ったのだった。


「ブランから、妙な魔法の気配を感じたとの連絡があって、しばらくすると、お前たちの姿が消えたという報告を受けた。胸騒ぎがしていたが……本当に、何事もなくて良かった」


 心底安堵したという表情が、彼のそれまでの焦燥を如実に表していた。


 しかし、レアもパントジェーヌは、ほぼ同時に「それ」を思い出した。すなわち今日がパーティーの当日であることを。

 そして二人は、それぞれの情報網から「それ」を知っていた。つまり、ノエルがセレスを誘っていることを。


 ……予定どおりパーティーが開催されているのであれば、既に終盤といった時間だ。今から会場に向かっても、間に合うまい。

 レアが気遣わしげに口を開く。


「ノエルは、セレスお姉さまと……」


 しかし、ノエルは「心配するな」といったように笑った。


「お前たちに何かあったら、セレスは悲しむだろう?」

「でも……」


 パントジェーヌが目を伏せると、やはりノエルは柔らかく微笑んだ。そして穏やかに口ずさむ。


「セレスは怒らないよ」


 確かに、そうだろう。彼らは長い付き合いだ。セレスは「ノエルが来なかったことには何か理由がある」と考えるに違いない。しかし、それでも。


「他の人に任せるべきでしたわ」


 キルシュ派のパントジェーヌであったが、ノエルの立場になって考えれば、遅れを取ったと言わざるを得ない。けれど。


「でも……ありがとうございます」


 心から、そう思う。


 恐らく彼は「セレスが悲しむ」という理由以上に「この国のトップ」としての責任を果たそうとして、この行動を選んだのだろう。元王女二人が突然姿をくらませたとあれば、国内の混乱は必至だった。


 そんなふうに、自分の想いより責務を重視する彼ならば、きっとこの国を良い方向に導いて行けるだろうと、パントジェーヌは確信する。


 そして自分は、彼がもし、正式な国のトップの地位についた暁には、ブランと共に、彼を支える一助となりたいと、強くそう思った。

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