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15 舞踏会の小さな魔法(2)

 そうして瞬く間に時は過ぎ、舞踏会当日となった。


 セレスは、決して目立つことのない、しかし、場をわきまえた色、デザインのドレスを身につけ会場を訪れていたのだが。


(ノエル、来ないわね……)


 ざわめく会場の喧噪の中、セレスはもう一度辺りを見回した。だが、何度眺めても探し人の姿は見当らない。


 そもそも今日は、彼に部屋まで迎えに来てもらう予定だったのだ。エスコートとは、そういうものである。


 だが、約束の時間になっても、ノエルは来なかった。だからセレスは、不審に思いながらも取りあえず様子を窺うため、一人で会場へと向かったのである。


(どうしたのかしら)


 彼が何の断りもなしに約束を反故にするような人間ではないことを、知っている。


 きっと何かがあったのだろう。

 本当は、今すぐに探しに行きたいほどに心配だが、今は自分の対処で精いっぱいであるのも事実である。……うっかり会場に踏み込んでしまったのが、間違いだったようだ。


 壁の花になって目立たないようにして辺りを窺っていたつもりだったが、そうそう上手くはいかなかったのだ。

 元第一王女の自分は、社交場の紳士淑女の間では格好の好奇の的であり、みな、放っておいてはくれなかったのである。


 中座しようと何度も試みるが、その都度、誰かしらに話しかけられ、タイミングを失ってしまうのだ。

 そんなことを考えている間にも、また一人、セレスの元に近づいてきた。


「おひとりですか?」


 気の弱そうなパートナーを引き連れた娘は、くすくすと意地の悪い笑みを浮かべながら、そう尋ねてきた。


(あー、寵姫派のご令嬢ね)


 見覚えのある顔だ。

 そして顔をしっかり覚えている、ということは、己の記憶の中で「面倒な人たち」と分類されている輩なのだろう。


 今更、寵姫派も旧王妃派もないうえに、寵姫派も凋落の一途であるはずだが、それでも、これまでの習慣的なもので、旧王妃派の筆頭である自分の荒探しをし、見下さずにはいられないのだろう。因果なものである。


「パートナーなしで参加なんて、勇気がありますわね」


 そんな安っぽい嫌みを言うために、わざわざ声をかけたのだろうか。正直なところ腹を立てる以前に、


(この人、暇なのかしら)


という程度の感想しか抱くことができない。まあ、しょせん口だけなので、今までどおり聞き流せば良いだけのことだ。


 セレスはにこり、と社交辞令の微笑みを浮かべて、適当な返し文句を口にしようとしたところ。


「……パートナーはいるよ」


 背後からそんな声が聞こえたかと思えば、すっと腰に手を添えられた。

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