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髪シリーズ

みつあみ(短短編)

作者: 高山夕

みつあみのゆるさは股のゆるさに比例する。そう考える聡子のみつあみは、いつもきつきつだ。風も通さない。聡子は左右のみつあみで風を切って歩く。イメージは、ランウェイを歩くモデルだ。しかし、現実には観客なんていない。いるのは朝早くから、犬の散歩をしている近所のおばさんくらいだ。軽かった聡子の足取りは、だんだん重くなる。聡子は学校が嫌いだ。

なんとか教室にたどり着き、席に着く。席はある。でも居場所がないのだ。だから、すかさずお馴染みのポーズをとる。ポーズといってもカッコイイものではなく、ただ机に伏せただけである。誰も見ていない。もしかしたら、聡子がいることに気づいていないのかもしれない。聡子は暗闇のなかでファッションショーを思い浮かべる。もちろんモデルはみんな聡子だ。観客は、ゆるくあんだみつあみをこしらえた女たち。歓声をあげている。それに紛れてチャイムがなる。ショーの終わりを告げ、同時に地獄のような一日の始まりも告げる。聡子は卒業が待ち遠しい。はやくこんな生活と、おさらばしたいと思っている。実は、大学に少し期待している。そう、自分に自信がある。変われる。そう思っている。聡子はしばしば妄想する。暗闇の聡子はいつも輝いている。

お昼休みになり、お弁当を食べる。なかなか喉を通らない。それでも、無理やり完食する。最終的には、お茶で一気に流し込むのだ。お昼休みは聡子には長く感じられる。食べ終わった聡子は、食後にはきつい、あのポーズをとる。ゆるいみつあみの女たちは聡子の登場を喜んでいる。みんな喜んでいる。だが、一人、こっちを見ているだけの人がいる。男だ。聡子は驚く。その男は、初恋の人なのだ。なぜそんな人が現れたのか分からない。

家に着き、ベッドに横になる。あの顔が頭から離れない。もう好きではない。それに今まで忘れていたはずだ。聡子は、自分が今になって何をしようとしているのか、怖くなる。

今日も学校だ。今日は玄関を出るときから足が重い。風がふく。聡子のみつあみは風を通さない。

学校が終わる。初めて終わるのをはやく感じる。

家に着く。家を出る。ある家に向かう。

その家からの帰り道。聡子は暗闇の世界と現実世界のギャップを痛感する。

聡子は勝手につくりあげていた。現在・過去・未来をあんだみつあみを。しかし、今を見ようとはしていなかった。未来に期待し、その一方で、過去に執着していた。

聡子のみつあみはいつゆるくなるのだろうか。

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