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旅に出始めました

 旅に出るといっても、人の行き来が多い街道では魔物が増えたといってもそれほど沢山葉でない。

 現れた瞬間に、行き来している人たちがその魔物を倒してしまうからだ。

 弱い魔物は普通の人間でも武器さえあれば何とかなる、むしろ動物の方が“怖い”場合も多々あった。


 また、危険性の高い魔物が現れた場合はその道自体が封鎖されて、状況に応じて近くの町の騎士団といった常駐の治安部隊や、正規に雇われている魔法使いや剣士といった冒険者がその討伐に向かい、それでも無理な場合は中央から討伐隊と呼ばれる魔物専門の部隊が呼ばれる仕組みになっている。

 よくよく考えるとこのような環境で勇者ってどうなんだろう、と思わなくもない。

 

「勇者って魔王を倒す役目だけれど、それって討伐隊じゃ駄目なのかな?」


 隣町までの道を歩いて移動しながら僕は呟いた。

 そこで勇者の指輪の精霊、レナが、


「魔王を倒すには私の力が必要ですからね。そうしないと、魔王を倒しても“意味がない”形になってしまうのです」

「“意味がない”? 魔王を倒しても?」

「ええ、ただこの辺の話は極秘事項なので、当事者にのみ伝えたりするものとなっています」

「当事者……リョウスケもそう言っていたような。当事者が説明に来るって」

「リョウスケ……ああ、あの勇者として本来呼ばれるはずだった人物ですね。彼にそう言われていたのですか。どうですか会話をした感じでは」

「歴戦の戦士といった感じがしました」

「それは頼もしいですね。その助言も含めて色々な能力が使えるようになっているそうですし今回は楽そう……これは都市に行って、流行の服を着たりなんかもできる。ぜひお願いします、ご主人様」

「あ、はい」


 真剣なまなざしで言われてしまった僕は頷くしかない。

 だがそんな僕は耳を引っ張られた。

 痛くてそれをやった人物、幼馴染のセリアを見ると、機嫌が悪そうだ。


「何をするんだ」

「楽しそうにお気楽に話しているんじゃないの。というか当事者から説明があるといった話も私は聞いていないのだけれど」

「セリアはなんて聞いたのかな?」

「……ニルスが旅に出るらしいから幼馴染だし魔法使いの才能があるから、一緒に旅に出るようにって言われただけ。路銀も沢山もらったし。……でも他にも女の子がいるなんて思わなかった」

「? 今最後の方聞き取れなかったんだけれど」

「なんでもないわ。でも服をプレゼントしたり、仲がいいのねニルスとレナさんは」


 セリアがやけに機嫌悪く言う。

 僕にはよくわからない。

 そしてそれをそばで聞いていたレナが目を瞬かせてから、楽しそうに笑った。


「ほうほう、なるほど~、ふふっ、幼馴染でしたか。ふふ」

「な、何よ」

「いえいえ。そういえば服を変える魔法って、私たち以外にもできるのですか? ニルス」

「それはリョウスケに聞いてみないと。リョウスケ、この服を変える魔法は人でも使えるのかな?」

『使えるぞ……寝かせてくれ』


 どうやらリョウスケはお休み中らしい。

 それを起こすのは可哀想だと思って僕はそれ以上聞かず、代わりにセリアの方を見て、


「服を変える魔法に興味があるみたいだったけれど、セリアも服を変える?」

「! い、いいわよ。別に。この服だって一応強力な魔法がかかっているんだし」

「そうなんだ。いつでも変えたくなったら言ってね。気に入った服に変えるから」

「……うん」


 顔を赤らめるけれど嬉しそうなセリア。

 どうやらレナに新しい服を渡したのが羨ましかったらしい。

 そこで近くの草むらがガサゴソとして……小さな魔物が現れたのだった。


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