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眠っている間に

 ニルスが死にかけた状態から、回復している最中にて。

 セリアやチルチル、ミチル、そして勇者の剣の精霊レナが悲鳴をあげた。

 何か茶色く鋭い岩のようなものがニルスの方に向かって飛んでいったかと思うと、ニルスを貫いて、そのまま倒れていくのが見えたからだ。


 赤い血が噴き出す。

 レナがすぐそばで悲鳴を上げて、ご主人様ご主人様と繰り返している。

 セリアはしばらく呆然と棒立ちになって、チルチルとミチルが焦ったようにニルスに近づこうとしているのに気づき、ようやく我に返ったようにニルスに近づこうとするが、


「な、何?」


 そこで地面が振動する大地にセリアが周りを見回すと、遠くに人影が見える。

 吹き出す魔力の大きさにセリアは一瞬後ずさりしたけれど、


「あいつが、ニルスに攻撃したの?」


 声に出した小さな疑問。

 けれどセリアの胸の内ですぐに爆発的な怒りに変わる。

 

「ニルスに、何をしてくれたのよぉおおお!」


 そう叫んですぐ、セリアは魔法を使うために呪文を唱え始める。

 昨日は魔導書をニルス達と買って練習して、戻ってきた。

 昔というかついこの前までは、私の方が強かったし守ってあげないとと思っていたのに突然追い越されてしまったとセリアは思う。


 そして勇者に選ばれたと聞いてセリアは、もしかしたら今までのニルスと変わってしまうのではないかと思った。

 力を手に入れて、セリアが今まで持っていた“優越感”が、それと同じようなものがニルスに芽生えていたりしないだろうか?

 あまりいい感情ではないけれど、それでもニルスよりも優位でいられたなら傍に居られるようなそんな気持ちになって、魔法を頑張っていた部分もある。


 そして結果は、というと、ニルスは今までと同じだった。

 大きすぎる力を手に入れて戸惑っているようだった。

 それがあまりにもニルスらしくて、そして嬉しかった。


 ニルスは代理で本当の勇者になるはずだったリョウスケは親切だったし、魔王の事情なども皆が知らないことを知っている特別感があって、楽しかった。

 この旅は楽しかった。

 何よりも、ニルスと一緒に旅するのが楽しかった。

 

 なのに、今、ニルスは!


「“乱舞風花”」


 そう呟き魔法を使う。

 風の魔法での攻撃。

 私の力全てを持って、そうセリアは思いながら連続攻撃する。

 

 同時にチルチルやミチルも攻撃する。

 けれどそれらの攻撃は全て防がれてしまう。

 それでもセリアは泊まらずに次々と魔法で攻撃する。


「セリアお姉ちゃん、落ち着いて!」

「魔力切れになっちゃうよ!」


 チルチルとミチルがそう叫んでいるのが聞こえたが、セリアは止まれなかった。

 否、我を忘れていたがために止まれなかったといっていい。

 セリアは見て、気づいたからだ。


 奇跡的な何かが起きない限り、もう二度とニルスと話すことはかなわないだろうと。

 見てすぐに分かるような攻撃だったのだ。

 だからもう、その怒りも絶望も全部セリアは、その魔族だか何だかにぶつけることにした。


 ただのちょっと才能があるだけの魔法使いの自分に出来る事がたかが知れているとセリアは分かっていた。

 そしておそらくこのチルチル、ミチルは魔族として倒されたのでその能力を失っているだろうことも気づいていた。

 だから生き残るためにも全力で攻撃して倒さないといけないという事もセリアには分かっていた。


 けれどそれらがぐじゃぐじゃに混ざって混乱する頭の中で一番感情を占めていたのは、ニルスを殺した魔法使いが許せない、それだけ。

 やがて自然と膝をつく。

 セリアはこれが魔力切れだと気付くけれど、更に攻撃をしたい気持ちがふつふつと湧き上がる。

 

 もう無理であのニルスを殺そうとした魔法使いはまだ生きている。

 それが悔しいと思うと同時に地面が微振動する。

 これで終わりかと少し残念な気持ちにセリアは思いながら瞳を閉じた。


 そこで声が聞こえたのだった。


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