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治療中

 ズブリと肉を割く音がした。

 耳障りな音だと思うと同時に激痛に悲鳴を僕はあげていた。

 のどが痛くなるくらい張り上げて、瞳からは涙がこぼれているのが分かる


 イタイイタイ痛い痛い。

 それが痛みを感じて心の中で思っている言葉なのか、僕自身が声を張り上げている言葉なのか分からない。

 何が起こったのか、けれどそんな問いかけは激痛の中で消えていく。


 やがてだんだんに意識が遠のいていく。

 悲鳴のような声が聞こえた。

 何だろう。

 

 そう僕は思った。

 けれどその時にはもう僕は地面にうつ伏して、体がどんどん冷えて、寒くて、意識が……。


『ニルス、おい、ニルス、どうした!』


 リョウスケの声が聞こえる。

 そう僕が思うと同時に緩やかに意識が回復してくる。

 そこは暗い空間のようだった。


 初めに出会った、あの夢の中のようなその場所。

 そうなるとまた僕はリョウスケと遭遇するのだろうか。

 案の定リョウスケが現れた。


 そして小さく呟く。


「この俺の身体強化魔法を貫くか」

「え?」

「選択画面で選んだろう? 体の強化と防御の魔法。だがそれらを追い抜くくらいの攻撃をお前はされたんだ。殺すために」

「! な、なんで僕を!」

「勇者が“邪魔”だったんだろうな。ドラゴンもけしかけてきたし。さっきの会話であの風の四天王のダニエルは違っていたようだから残っていたのは、地の四天王ゴートンか」

「……魔族でいたいからですか?」

「一度手に入れた力を人間はそう簡単には手放せないものさ」


 皮肉げに笑うリョウスケ。

 けれどその瞳にはなぜか僕自身が移っているような気がして、言い返した。


「この力が期間限定なのは知っています。いずれなくなることも。一部を除いてですが……誰かさんが、次々と肉体改造してくれたおかげです、ええ」

「そういえばニルスの許可は聞かずに色々やったような気がするな。……その辺りは過ぎたことだから、流そう」

「……流さないでください。そして今度からせめて僕の許可を」

「いや、なんとなくお前の特殊能力というか俺と親和性がいいのが、最近気になって来たんだが、もしかしたら全部、コピーされてニルスの中に俺の望んだ能力が残るんじゃないかという気がしてな」

「えっと僕はどうなるんですか?」

「これまで通りで妙な力が使えるようになる」

「それはこれまで通りと言えないのでは?」


 リョウスケは沈黙した。

 そこは沈黙するところじゃないと僕は思った。

 思ったが、そこでリョウスケが話題を変えた。


「とりあえず今、ニルス、お前は死にかけている」

「……は?」

「攻撃されただろう? それで意識を失ったみたいだったから俺が遠隔操作で、治療の魔法をかけておいたぞ。ついでに魔力回復魔法もだ。治療を開始すると痛みが引いて意識も戻りやすくなるから、こうやって話せているわけだ。まあ、死んだら動けなかったから終わりだったがぎりぎり瀕死の状態で止まっていたおかげで何とかなった」

「……」

「とまあ今はこっそり治療中だ。敵はもしかしたらニルスが死んだと思っているかもしれない。どうする?」


 それを聞いた僕は、すぐにリョウスケにあるお願いをしたのだった。

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