声が小さい!
次の日、気持ちのいい快晴であるのを窓から見ていて僕は気づいた。
今日、四天王達と戦う。
「二人同時はきついけれど、頑張ってみよう」
本で魔法も勉強したし、選択画面から魔法の性質も読んだ。
後は実践するのみ。
といっても選択画面からの魔法も少しは試してみたが。
付け焼刃程度の魔法の勉強でどうにかなる相手なのか。
何しろこの前までは“才能のない”冒険者だったから、
「勉強する段階にまでいけなかったんだよね。でもこれなら、これからは、勉強していけばもっと色々な事が出来るようになるかな?」
諦めなければならなかった。
でも諦めきれなかった。
惰性に近い形で、自分一人続けていたものが偶然にも役に立つときがこんな形で巡ってきた。
だからこれを機会に、そう僕は思う。
そして服を着替えて部屋を出ると丁度、セリア達が出てきたところで一緒に食堂に向かう。
ここのお肉の味付けが美味しいと言いながら、今日のこれからについてはその時話さなかった。
緊張するだけで、意味がない問答になると分かっていたのだろう、皆。
こうして僕達は、食事を終えて馬車に乗り込んだのだった。
馬車に乗り込んで揺られること数時間。
余りの緊張で疲れていたのか、僕はつい馬車で眠ってしまった。
皆もそうだったらしく、馬車を運転しているおじさんに起こされた時、
「全員大物だな、期待しているぞ」
と笑われてしまった。
とても恥ずかしかった。
そして馬車を降りるとそこには、広い平原が広がっていた。
周りが森になっていて、この場所だけ大きく削り取られたような形をしている。
まるでここ一帯を避けるかのような平地。
草すらも生えることを拒むような場所になっているようだった。
そこで僕は気づく。ここ一帯が、
「魔力がうっすらと残っている。炎の魔力みたいだ、何だろうこれ」
「そういえば聞いた事があるわ、昔、魔族と人間が衝突したとある場所は、未だに草すらも生えないような場所になっているって」
セリアが何かを思い出そうとするかのようにうんうん唸りながら呟いているとそこでチルチルが、
「セリアの知識はあっているよ。未だにここ一帯は炎の魔法がとどまっていて、草が生えにくいの。ここ周辺の地層には、“レディア鉱石”が一部含まれていて、それの影響による物の考えられているわ」
その説明を聞きながら、魔力を纏わせられる金属でそんなもの聞いた事がなかったので、
「“レディア鉱石”? 聞いた事がないな」
「珍しい金属ですから。それにそんな沢山とれるものではないので別の“カルット鉱石”の方が有名ですし、扱いやすいですから」
「そうなんだ。でもこの金属を使うともっと色々な事が出来たりするのかな?」
「そうですね……後でサンプルを採取していこうかな、ここには来たことがないですし」
チルチルが興味を持ったらしい。
そんなことをつぶやいていると僕達の反対側の方の道から一台の馬車がやってくる。
その馬車には二人の人物がのっていたらしい。
一人は筋肉隆々の男。
もう一人は痩せた男で、瞳が爛々と輝いている。
どちらかが僕達にあのドラゴンを仕掛けた相手なのだろうか?
そう僕が思っていると筋肉隆々の男が朗らかに笑い、
「俺は、風の四天王ダニエル、そしてこっちが、地の四天王ゴートンだ! お前たちの名前は知っている。力についてもだ。そして、俺は少しでも強い物と戦いたい。だから先に戦わせてもらう、いいな!」
「は、はい」
僕がその声に気おされているとそこでダニエルが、
「声が小さい!」
「は、はい!」
僕は出来る限り大きな声で答えると、
「よし、良い返事だ。さて、では始めるとしようか、ゴートン、端によっていてくれ」
「……分かっていますよ」
そう言ってゴードンが離れていくのを見てからダニエルは、
「では、行くぞ!」
それが開始の合図になった。




