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もうすぐ否応なしにその現実をお前は知ることになるだろう

 自分がベッドに眠っているのだと認識すること、数秒。

 先ほど見た夢について少し考えてから、


「いや、流石にアレはないでしょう。僕が“勇者”代理なんて……」

『残念だが、夢ではないな、ニルス』

「! どこからともなく、さっきのタカギという人物の声が!」

『あ、そっちは名字だから、リョウスケと呼んでくれ。そしてこれは夢じゃない』

「……誰かがこの部屋の近くで僕に語り掛けているのでは」


 そう思った僕は即座にベッドから起き上がり、靴を履き、部屋の中で人が隠れられそうな場所を探す。

 いない。

 次に窓を開けて周りを見回し、ドアも開けて周囲に人影が無いかを確認する。


 美味しそうなコーヒーと焼けたパンの匂い。

 馴染のあるそれを感じてから、僕はドアを閉めて、


「見つからない。どこに隠れているんだろう」

『それは隠れていないからな。俺は異界からそちらの……これは23だ、だからここで……よし、出来た。えっと、何を話していたんだったか……そうそう、俺はこちらの世界にいて、直接ニルスに接続して頭に話しかけているから、周りを探しても見つからないし、逆にニルスが独り言を言っているように見えるからほどほどにな』

「う、嘘だ。そう言って僕を騙そうとしているんだ」

『残念だがこれは現実だ。そして、もうすぐ否応なしにその現実をお前は知ることになるだろう』


 まるでこれから何が起こるかを予言するかのように、彼は僕に告げた。

 この脳内に語り掛ける彼は、一体何をしようというのだろうか?

 そんな不安で僕が黙ってしまうとそこで、


『いや、怖がらせたか。すまない。実はそろそろこの国の王様の使者が、お前の家に到着するらしくて』

「! なんで!」

『いや、勇者の使う伝説の武器だか何だかを収納した、“聖なる指輪”がどーのこーのらしい。勇者の意志で顕現するとても強い武器だそうだ。良かったな、一番初めの武器が木の棒じゃなくて』


 よくわからないが、木の棒は子供の遊びで使うものだ。

 彼なりの冗談なのかもしれない。

 でも王様の使者という事は、


「僕、旅に出るのですか?」

『そうだぞ。勇者として魔王を倒す旅に出るはずだ。でないと魔物が延々と増えてしまうからな。今日出発じゃないのか? 装備も来るし』

「そ、そんな。まだ僕全然何が何だか分かりませんよ?」

『後で、当事者が説明に来てくれるはずだからそちらで話を聞いてくれ。俺が直接出向かなくてもある程度、何とかなるだろうと思ったのもそのあたりの事情があるから……ここは25だ。よし、正解』


 何かをやっているらしい彼、リョウスケ。

 だが当事者が説明に来るって、誰だろう? そう僕が思っているとそこで、窓の外に集団がやってくるのが見えた。と、


『おお、来たみたいだな。頑張れよ。一応はほどほどに手助けするから。わからないことがあったらその都度助言するから』

「い、いえ、助言といっても僕が知りたいことは全然答えてくれてな……見えるのですか?」

『それはまあ、ニルスに俺は“とりついている”状況だからな。映像も見えている』

「だ、だったらもうリョウスケが全部やればいいじゃないか!」

『……こういうのもなんだが、異世界の俺が救うよりも、その世界はその場所の現地の人間が自分で何とかすべきだと思う。以前ここの神も含めて色々言っているがな』


 そう言われてしまうと、僕は言い返せない。

 全部他人にお任せなんてそんな都合のいい話は、何処にもないのだと僕でも分かる。

 でもだからと言って僕がと思う部分もあるけれど……。


 そこで、僕を呼ぶ母の声が聞こえたのだった。

 

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