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ここにはいない

 背丈からはそこまで脅威と思えない不気味な魔物。

 一見すると小さなドラゴンのように見える。

 だが先ほどから、強化された杖での魔法攻撃を繰り返して、全く硬貨がないようなのだ。


 それはそれでおかしい。

 攻撃がすべて当たっても、意味がない程度に異常な防御力を持っている、その可能性があるにはあるけれど、


「そんな怪物には思えないんだよね。それに、もう一つ気になることもあるけれどとりあえず、レナ! “神殺しの剣”だっけ、行くよ!」

「はい!」


 僕は、その剣を持ち走っていく。その間この水色の怪物は何もしない。

 その場から逃げたり動いたり、それすらもしないのだ。

 ただ僕達の様子は見ているらしく、目の部分、蜥蜴のような黄色いそれがぎょろりとこちらを観察している。


 近づいて攻撃され平気だと思っているのか?

 それをこれから確かめる!


「このっ、えい!」


 掛け声と共にこの勇者の剣改め“神殺しの剣”で薙ぐ。

 炎が剣の軌道に吹き出して、それが大きく吹き上がる。

 けれど僕は斬りつける時に、奇妙さを感じていた。


 そう、僕がこの怪物の懐に入り込んで剣を振るったと言うのにまるで、この眼の前の怪物が霧か何かになってしまったかのように手応えがない。

 つまりこの怪物は存在したとしていても、ここにはいない可能性があるのだ。

 推測が当たっていて僕は笑う。と、


「全く効果がありませんね。触れている感触すらもない、つまりここにこの怪物はいないのかもしれませんね」


 レナもそれに気づいたらしい。

 そして次に僕は空を見上げる。

 白い雲が浮かんだ空。


 僕の視線の先には、僕の目的としたものが何処にもない。

 代わりにあたりを見回すと、僕が探していたものが何もない場所に浮かんでいる。


「見つけた」


 印となるそれに向かって僕は走っていく。

 僕にレナが驚いたようについて飛んでき、すぐにその存在に気づいたらしい。

 そして僕はその印のある高さから、この怪物が実際にはどれほど大きいのかを推定する。


 と、走っていく僕の目の前で突如、氷の大きく尖ったそれがいくつも現れた。

 どうやら僕を狙っているようだけれどそこで、


「“炎の矢”」


 セリアや、チルチル、ミチルが炎の魔法で援護してくれる。

 次々とその目の前の氷がとろけていく。

 そして僕が目標とした印に近づいた所で僕は、剣で薙ぐ。


 ザクッと、何かが僕のに触れる手応えと断末魔が聞こえた。

 同時にサラサラと何かが解けていくのが見える。

 魔物特有のそれだ。


 そして最後になにか大きなものが落ちる。

 見るとそれは水色の、この前のドラゴンを倒した時に手に入れたものに似ている。


「まさか、コールドドラゴンだったのかな? ……氷で光の反射を操って、僕達が疲弊するのを待っていたのかも」

「ニルス、どうして分かったの、場所!」


 そこでセリアが僕の方に走って聞くので僕は、


「ここに来る前にステータス画面を呼び出しておいたんだ。あれは敵の真上に出るから、大きさも場所も全部わかったんだよ」


 そう僕は得意気に説明したのだった。



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