改良して新たな杖にする
こうして新たな仲間を迎えて、一晩宿をとった僕達は次の街に向かう。
その前に一度ギルドに寄ってレベルを登録した。
そうして次の街に向かう途中、気づけば勇者たちの戦いがどうのこうの通行止めの看板がなくなっていた。
昨日の戦いをどこからか安全に観測していたのだろうか?
そして今も?
「もしかして僕達、常に誰かに監視されているんじゃ……」
「え? そうですよ。知らなかったんですかご主人様?」
レナが当然であるかのように言ってくるので僕は、
「いや、知らないよ。説明もなかったし、どうしてそんな……」
「被害を最小限に抑えるためだそうです。勇者は四天王と必然的に戦うことになりますから。戦って勝利して強くなって魔王に挑まないと、上手く“闇の魔力”が開放できないのです」
「そうだったんだ……レベルは後どれ位上げればいいのかな?」
「最低でも、40くらいですかね。でもそこまで行くのに過去のご主人様は結構苦労していたのですが……1月もたたない内にこのままだと行きそうですね」
レナが濁った瞳でどこか遠くを見るようにして僕に言う。
たしかに現在恐ろしい速さでレベルが上がっている。
本当に強くなっているのかあまり自覚はないけれど、数値上は以前とは比べ物にならない感じではある。
そこで再び魔物が出てきたので、
「“成長チート”」
と言って魔法を使い、倒していく。
今回は四人分であったけれどそれほど魔力の減少は感じないのは、レベルアップで魔力が増えているおかげだろうか?
いいことだと僕は思いながらさらにレベルを上げていく。
セリアはチルチルとミチルから魔法を教わり次々と使っていく。
新しい魔法が使えて楽しいようだ。
それを見ていて羨ましくなった僕は、
「レナ、新しい技は使えないのかな?」
「うーん、そもそもレベルアップで威力が強くなるのがほとんどですからね。後は魔力のこの剣への注入量、だから必殺技の台詞を考えてくださいと前に言ったじゃないですか」
「うん、ありがとう。僕、これからも頑張るよ」
そう答えて僕は誤魔化す。
だって、必殺技なんて冗談じゃない。
僕はそんな子供じゃないんだ! そう思いながら僕は、さらに現れた兎のような牙をむき出しにする魔物(草食系から肉食系へのチェンジ)を倒し、レベルアップする。
そこでポキンと何かが折れる音がして、
「わ、私の杖がぁああああ」
セリアの悲鳴が聞こえたのだった。
セリアの杖が折れた場所から次の街まで近かったのは良かった。
魔物を倒して急いで次の街の宿に泊まる。
必死にセリアが杖を治そうとしているも、
「だめ、真っ二つになってるよ」
「新しいのを買うしかないんじゃ……」
「昔から使っていた愛着のある杖なのに!」
涙目なセリアが必死になって杖を直そうとしている。
けれどチルチルとミチルも手伝っているが上手く行かないようだ。
なにかいい方法がないか僕はリョウスケにきいてみることに。
「リョウスケ、杖を直す方法は知らないかな?」
『うーん、俺は杖は使わないからな。あ、そういえば壊れた杖を改良して新たな杖にするのは、“魔道具チート”を使えば出来たはずだ。それを使ってみるのはどうだ?』
「そんなことが出来るのですか? 専門職の人しかそもそも杖は作れないので、思いつきもしませんでした。買うものでしたし」
『……いや、普通に考えればそうだよな。まあ、それがチート言われる所以だろう。セリアに聞いてみてから……せっかくだからこの前のドラゴンが落としたあれを、一部使ってみたらどうだ?』
そうリョウスケは提案してきたのだった。
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