そういう問題じゃない!
現れたのは二人の子供だった。
二人共金髪碧眼の少年少女で、僕達よりも若い。
まだ10歳にもなっていないかもしれない。
だがどことなく生意気そうな雰囲気のある子供たちだった。
と、そこで女の子の方が、
「私は、炎の四天王チルチル。よろしく勇者のお兄さん」
「僕は、水の四天王ミチル。よろしくね。でも、すぐにサヨナラかもね、僕達、とっても強いし。ねー、チルチル」
「そうだね、ミチル。くすくす」
などという何処かで聞いたことがありそうな台詞を言う二人。
油断はよくないけれど、こんな子達に攻撃して大丈夫なのだろうかと僕は悩む。
悩みはしたけれど、彼らはその気になっているらしい。
だから僕はセリアに、
「手加減したほうが良いよね、危ないし」
「そうね、この状況じゃしかたがないわね」
といった話をしていると、男の方であるミチルが、
「全部聞こえているんだぞ! この、“氷の刃”」
ミチルが子供のような癇癪を起こして、氷を生み出した。
僕が数人分という長さと大きさの巨大な鋭い氷の塊を瞬時に5本呼び出した様子に僕は、ぎょっとする。
「な、何て魔法を……」
「ニルス、私を横にふって! 早く!」
レテに叱咤されて、慌てて僕は剣を横になぐように振るう。
すると先ほどの生み出されたばかりの氷5つほどが壊された。
しかもこの剣から生まれた衝撃波は、ミチルを傷つけなかったようだ。
そして即座に魔法が壊されたのを見て目を瞬かせて、すぐにミチルは笑う。
「なかなかやるね。じゃあ僕も本気を出そうかな!」
「私も参戦しようっと!」
そこで無邪気にチルチルもそういった魔法を使おうとする。
それを見ながらセリアに、
「片方はお願いできるかな? チルチルの方」
「分かったわ!」
というわけで分担作業で二人と僕達は戦うことにしたのだった。
結果として、レベルを急速に上昇させたためか、今二人にはそこそこ怪我をさせずに僕達は戦えていた。
しかもこの勇者の剣には特別な効果があって、レテが言うには、
「魔物は殺せるけれど人間は、その“闇の魔力”を削っていくだけ。切りつけたり叩き潰そうとしたりしたなら別ですが」
だそうだ。
なので戦う度に徐々にその能力は削られていくらしい。
こうして僕達はこの二人を追い詰めていった。
四天王と言ってもまだこの程度なら何とかなったと僕が安堵していると安堵しているとそこで、
「く、このままではやられてしまう。こうなったら魔物を沢山呼んで攻撃してやる」
どうやら彼らはそれらも出来るらしい。
だが僕達としてはみすみす呼ばれるのも困るので攻撃をしてそんな余裕をなくさせてやろうとするも、
「来たれ、我が配下の魔物たち!」
そうミチルが叫ぶと、何かがこちらに向かって走ってくる。
狼のような僕の慎重に倍程度もある魔物がこちらに走ってくる。
だがどう考えても僕達の方ではなく、」ミチルたちの方に向かっている。
そこでミチルが、
「あいつらを襲え! あれ、何で僕達の方に来るんだろう?」
「動け、動け。動かない!?」
チルチルも悲鳴を上げるように何かをするが、二人に向かって失速する魔物は僕達の方を向かない。
青い顔で二人は何かをやっている。
「まさか、“闇の魔力”を二人共まだうまく制御出来ないんじゃ……」
セリアが恐ろしい推測を口にする。
それを聞いた僕は即座に走りだし、チルチルとミチルの二人と、こちらに向かってくる魔物の間に割って入り、魔物に向かって剣を構える。と、レナが、
「四天王なのに守るの?」
「そういう問題じゃない!」
そう一蹴するとレナは楽しそうに笑い、
「よし、私も頑張ろうっと」
そういった声を聞きながら僕も魔力を込めて剣を振るう。
今まで以上に強力な衝撃波が生まれ、魔物を両断し倒す。
後ろのほうで、二人の歓声が上がり、ミチルが、
「あ、その、ありがとう……」
「いえ、どういたしまして……!」
お礼に僕がそう返した所で僕たちは異変に気づいた。
周囲には何か沢山の“もの”が走ってくる音が響いている。
まさか……そう僕が思った所で、
『まずい! ニルス、俺に代われ!』
焦ったような声でリョウスケが僕の中で叫んで、そこで僕は意識を失ったのだった。
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