何故持ち主の許可をこの人達は取らないんだろう
さてやってきた魔王様が一通り説明を終えた所で、僕はある疑問が湧いたので聞いてみた。
「でも僕に会いに来たのは今ここで倒されるため、というのもあるのですか?」
「そうしたいのは山々だが、“勇者”としてその剣をもう少し上手く扱ってくれないと、うまく“闇の魔力”をこの世界から追い出せないのだ。私ぐらい大量になるとな」
「そうなのですか?」
「そうだ。だから魔物相手の戦闘や、わが魔王の配下である四天王を倒してもらわねばならない」
そう言われて僕は、四天王ときき昔読んだ内容を思い出す。
全てを灰燼に帰す炎の王。
全てを凍らせ沈黙を呼ぶ水の王。
全てを吹き飛ばし叩きつける風の王。
全てを眠らせる大地の王。
それらに向かって果敢に勇者は立ち向かい勝利をおさめるのは、物語ならではであるけれど。
いざ自分でどうにかしようとすると、出来るのだろうかと僕は思う。
そんな不安を読み取ったのか、魔王フィスが、
「大丈夫、君は代理とはいえ選ばれたからね。それに剣の練習もずっとしていたのだろう?」
「それは……」
「諦めきれずにずっと努力してきた君だから今、こうなっている。そう考えられないかな?」
「……自信がないです。そもそも呼びだされたリョウスケの方が適正があるでしょうし」
「それはないな」
『それはないな』
そこでこの魔王様と一緒にリョウスケの声が響いた。
何で同じ発言になるんだと思っているとそこで、
「ん? どうした?」
「いえ、今リョウスケが魔王様と同じようなことを言っていたので」
「そうなのか? ふむ、ニルスだったか……手を出してもらえるか?」
そう言われたので手を出すと、魔王様だ僕の手のひらを数回、人差し指で軽く叩く。
すると僕の手の平から先ほど指が触れた場所から青い線が出てきて、それが僕の手の平の少し上で魔方陣を作り、その魔法陣の中心から球状の青い物が出てくる。と、
『うーん、何の魔法だそれ……お? 俺の声がそこから出るのか?』
「そういう風に設定した。これからいつでもこうやって、リョウスケもみなと会話ができるぞ」
『それはありがたい』
などという話を聞きながら僕は魔王様にある疑問をぶつけてみた。
「あの、これは一体何でしょう?」
「ああ、ニルスの手の平に会話ができるように魔法を埋め込んだ」
それを聞いて僕はまたも、肉体改造されてしまったと気づく。
何故持ち主の許可をこの人達は取らないんだろう、そんな気持ちに僕はなりながらももうどうしようもないので、
「それで、どうしてリョウスケの方が適正がないと? 召喚されたのですよね?」
『あー、実は俺、剣で戦うよりも魔法を使う方が主だったんだ』
「そうなのですか? では杖を振るうほうが……」
『いや、杖はただの棍棒だ』
「……」
『俺の場合魔法が特殊で強力だからそれで一掃、という形になる。忙しいのも有るが、そう考えると1つずつ潰していけるニルスのほうがこの世界の修正の目的にはあっているだろう。そっちの魔王様もそう思うだろう?』
話を振られた魔王フィスも頷く。
微妙な問題があるのだなと僕が思っているとそこで魔王フィスは、
「とまあそういった事情があるのは分かっていただけただろうか?」
「それはまあ」
「というわけで明日あたり四天王の双子が二人ほど……君たちくらいの年の子達が来るから、よろしくね」
「あ、はい」
僕はとりあえず頷いて魔王フィスを見送った。
何だかいろいろあって疲れたと思っているとそ、そこで側で聞いていたセリアが、
「ねえ、ニルス」
「何?」
「明日、早速四天王二人と戦うことになったみたいなんだけれど、どう思う?」
そこで僕はようやく、明日四天王と戦わないといけないと気づいたのだった。
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