魔力回復魔法を覚えた!
夢のような暗い空間に僕は放り出されている、そう僕は認識した。
そしてこの空間は身に覚えがあった。
「リョウスケ、いる?」
『おう、いるぞ。魔力切れを起こして倒れるとは。というか魔力をもっと効率的に使わないと』
「魔力を効率的に? どうやって?」
『どうやってって、範囲指定するなり一気に魔力を注ぎ込まないようにしたり、そういった調節を自分でするんだ』
「調整……そもそもどれくらいの魔力であの魔法は発動するのでしょうか?」
『それは試してみないと分からないな。もう少し魔力があればよかったがそのあたりは失念したな』
「リョウスケはもっと魔力がある予定だったのですか?」
『ああ、そこらへんは異世界召喚のための駄賃みたいなものだから。でもそうなると、魔力回復魔法でも覚えてみるか?』
「魔力回復魔法? 魔力を使って魔力回復という事でしょうか」
それにリョウスケは少し黙ってから、
『まあそういう事になるな』
「その魔力は一体どこから?」
『俺の知っている世界だと、魔力の塊みたいな世界と接続して魔力を注入するから失敗すると、体の一部が吹っ飛ぶとかなんとか』
「なんて恐ろしい魔法を覚えさせようとするのですか!」
『一応この世界にもそういった魔法は、高度ではあるが使えるらしい。だがそうだな。感覚で覚えるには危険で、高度な魔法だが……そうだな、魔法自体を一つのシステム化しておこう』
「システム化?」
『“選択画面”起動って言え』
「“選択画面”起動……何だか水色の光の枠が。それに……魔力回復20%、魔力回復40%
、魔力回復60%、魔力回復80%、魔力回復100%、集団50%回復、何ですかこれ」
『本人の持っている容量に合わせて魔力が回復する、魔法“ツール”のようなものだ』
「そうなのですか。そして右上に書かれている数字は僕の魔力の残り?」
『そうだな、今魔法を使えそうなのは、普通に魔力回復100%がいけるな。押してしまえ』
「だ、大丈夫なのですか?」
『大丈夫なようにこれを使うんだ! さあ早く!』
せかされた僕はしぶしぶそれに触れる。
同時に僕の魔力の数値がどんどん上がっていき、ある所で止まった。
体が楽になった気がする。
普通魔力は時間の経過でゆっくり回復させるかほかの人の物を分けてもらう類の物しか一般的ではない。
「これもチートというものですか? となると、リョウスケが居なくなると使えなくなると」
『いや、これはニルスの体に直接組み込んだから、後まで残ると思うぞ』
「……」
今の魔法を使っただけで僕の体はいつの間にか、魔法的な意味で肉体改造されてしまったらしい。
これから僕はどうなってしまうのだろう、そう思った所で僕は……目が覚めた。
この天井は見覚えが無い。
「ここはどこだろう」
「あ、気が付いたニルス?」
「……セリア、ここは?」
「町の宿屋だよ。倒れるくらいまで無理しなくていいのに」
「……そういえば僕よりもセリアの方がレベルが……」
「そうそう、簡易魔力測定値借りてきたよ。回復したか見てあげるね。……あれ、全回復?」
そこで数字を見たセリアがそう答えて僕は、あれがただの夢でないと絶望的な気持ちになる。
そこで、誰かが部屋を叩く音がしたのだった。