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第2話 ③

龍神町商店街には再び恐怖が訪れていた。


建物は崩れ、地面が抉れ、物が散乱している光景は昨日とは全く比にならないほどの被害だった。


朝という事であまり人はいなかったが人々は逃げ惑い警官も未知の相手に避難誘導が精一杯だった。


未知の相手とは今も建物を破壊している男だった。男はスーツを着ていて顔には不気味に笑った仮面をつけていた。


そう、昨日烈が追い詰めていた男だった。


纏った黒いオーラがそのまま男の力となり常人離れした力を周りにぶちまけていた。


グォーーーーーーーーー!!


獣のような低い叫び声を上げる男は電柱をへし折りそれを家へと突き立てる。まだまだ足りない、そんなことを思いながら男が次の目標を探した。


その時1台のワンボックスカーが前に止まった。


その中から重装備をした隊員が5名出てくると間髪入れず持っていた銃を撃ってきた。


弾丸が体にめり込むが痛みはない、憎しみだけが増えていき体が震える。


殺したい


それだけの気持ちでしか感情を抑えきれなかった。


飛び出す男に隊員たちは構わず撃つが勢いが止まることはない。


段々と近づく距離に男の気持ちは高ぶっていた。これで救われるのだと思っていた。


腰に指していた包丁を握り、一番前にいた隊員目掛けて振り下ろす。


包丁が体を両断していく感覚……はなかった。


男と隊員の間に割り込むように龍のパワードスーツを着た少年が現れたのだ。


そう、あの時も男を邪魔したやつだ。


「大丈夫ですか!」


烈は男の一振りを受け止めながら言った。


「す、すまない」


後ろにいた隊員は恐怖のあまり足が竦み動けなくなっていた。


「後藤さん、こいつは俺が何とかします!だから店の人の避難を!」


「わかった!」


後藤は烈の後ろにいた隊員を助け、ほかの隊員とともに商店街の裏に行った。


「烈、いくぞ!!」


「おう!!」


ガイアの言葉に烈は包丁を弾き男の体目掛けて拳を放つとその体は勢いよく飛び店ににぶつかってしまった


「やべ!」


「今は気にするな!くるぞ!」


男はすぐに立ち上がり2本の包丁を持って襲い掛かってきた。


横からの一撃を躱し続く二撃目も躱す。烈の動体視力もあったがパワードスーツがそれを支えていた。


男の包丁が次々と襲い掛かる中烈は冷静に隙を狙っていた。


(狙うのは腕……)


次の瞬間男が両手を突き出し烈の目の前に包丁が迫る。


それをギリギリで躱す烈の耳には金属同士が擦れた音が聞こえ、下に潜った自分からは無防備に両腕を突き出した男の姿がはっきりと見えた。


「チェストォーーーーーー!!」


勢いよく放たれた烈の手刀が男の肘をとらえ、その衝撃は男を再び店へと突き刺すほどの威力だった。


「やったか!」


砂煙で見えない中ガイアが言うがその中で立ち上がる影が1つ。


「くそっ!ガイアなにか武器はないのか?!」


「そうか!ならば叫べ烈、“ガイアソード”を!!!」


「……武器を呼ばなくちゃダメなのか?」


一気に気持ちが冷めた烈はガイアに尋ねた。


「その通りだ!言霊を知らないのか?叫ぶことで通常以上の力を出すことができるんだぞ!!」


雄弁に語るガイアに仕方なさそうに構えた。


「がいあそーど……」


「烈!!!」


「わかったよ……。“ガイアソォード”!!!!」


その声に応えるように大地がバキバキと盛り上がりその亀裂から一振りの剣が現れた。


両刃で西洋の剣を思わせるその一振りは白銀の刀身と美しき緑の装飾に飾られていた。


「うぉ!!」


「烈!くるぞ!!」


ガイアの叫びに烈が前を見据えると、両腕をだらりと垂らした男が割れた仮面から獣のような牙を光らせながら襲い掛かってきていた。


急いで烈は柄を握り、剣をわきに構え意識を集中した。


両腕が使えなくなっている男は恐怖を感じなかった。今そこで悠然と立っている緑の人間を殺したい、その一心だった。


その男の記憶ではこういった場合、襲われる側は恐怖に顔を歪ませながら泣くか叫ぶか逃げるか放心するかのどれかに当てはまった。


しかし今目の前にいる人間はそのどれにも当てはまらず静かに剣を構えていた。


まあいい、仮面の下の牙を首元に刺せばいいことだと男は距離を近づける。


段々と近づく目標に隠した目が血走る、息が荒くなる、全身にアドレナリンが巡る。


ガチィーーーン!!


さぁ首元だ!と男が食らいついた先には何もなかった。


不思議に思った男が周りを見渡してもどこにもいない。


ふと下から力のある意識がこちらに向いているのに気づき、顔を向けると目標にしていた人間がこちらをじっと睨んでいた。


男はそこで初めて恐怖を感じた、今まで自分が味あわせてきた感情を今初めて体験したのである。


緑の人間は構えた剣を滑らせ、その刀身で男の体を一閃した。


体を切られてはいたが不思議と痛みはなかった、ただ暖かかった。


心が浄化すると言えばいいのだろうか、母親の温かさに近い光が男を包み、そして身に着けていた仮面が割れていく。


ありがとう


それが男が放った最後の言葉だった。




次回予告

烈:やっぱり叫ばなきゃ駄目なのか?

ガイア:もちろんだ!!

烈:恥ずかしくないか……

ガイア:なにおっ!!男なら剣の一本呼んでみたいとは思わないのか!

烈:いや、別に……

ガイア:何という事だ……博士、私はどうしたらよいのでしょう……

烈:いや、そんなことで困るなよ……。次回「ガイア、新たなる力とともに!」

ガイア:そういえば必殺技言ってないじゃないか!後で私が考えておく!!


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