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第2話 ②

EBアースベース


ロストアイランドの監視を目的として創設されたこの機関は、若き日の獅子神がアースの声を聞いたのが始まりだった。


地質学者であった獅子神は人工島がある湖の地質を調査していた。


私の声が聞こえますか?


突然聞こえた言葉に最初は祟りを疑った獅子神だったがその声に答えるとそうではなさそうだった。


お願いです、私に力を貸してください


そこからが大変だった。


獅子神財閥の御曹司でもあった皇一郎にとっては金銭面での苦労はなかったが地面を掘れども掘れども声が近づいてこない。


結局今のEBの敷地全てを掘るのに20年かかってしまいやっとの思いでアースを発見できた。


それからはロストアイランドの監視に全てを注ぎ、優秀な科学者や技術者、後藤のような特殊部隊出身者を集め準備を整えていたのだ。


--------------------


すっかり暗くなってしまった地下の建物に次々と明かりが灯る。


ここはEB職員の為に作られた所謂社宅。赤兎家族はその一室で久しぶりに家族水入らずで晩御飯を食べていた。


「それでよ!じいちゃん酷いんだぜ!」


そこでは久しぶりの母の料理を口一杯に頬張り、今まであったことを事細かに話す烈がいた。


その話をニコニコと聞く両親は息子の成長を嬉しく思いながらその時間を楽しみいつもより長い夜を過ごした。


その頃ガイアは邪魔をしないために獅子神のもとへいた。


「長官……」


「皇一郎で構わないよ」


大きな机の上で落ち着かない様子のガイアに獅子神は言った。


「何か違うような気がする。やはり私は長官と呼ばせてくれ」


アースとガイアは意識を共有していたが実際今日始めて話した男性にガイアは少し緊張していた。


「私はガイアと呼ばせてもらうよ。で、話というのは?」


獅子神が真剣な顔をした。


「これからの事についてなんだが……」


これから戦う相手のこと、太陽系に散らばる兄弟のこと、自分の新しい体のこと、そしてある少年のこと。


全てを話し、力を貸して欲しいと言ったガイアに獅子神は笑顔で頷いた。


-------------------


灰色の島ロストアイランド


その地下に7つの影が揃っていた。


「みんな、よく来てくれたね」


最初に島で聞こえた声がその場にいるものを労うように言った。


「ヤットソロッタミタイダナ」


言葉なのか音声なのかわからない声が聞こえた。


「サてアダムだったカ?これカラどうする?」


今度は機械のような力強い声が響いた。


「今日行かせたのがやられて帰ってきたんだ」


「で、ドうしタんダよ」


「力を少し与えてまたいってもらったよ」


アダムと呼ばれた優しい声は当然のように答えた。


「お前もマだ本調子じゃねんダろ?大丈夫ナのカ?」


「心配してくれるのかい?」


「バカ言うナ!それでアいつを倒せるのカって聞いてるんダよ!」


力強い声が近くにあった岩を思いっきり殴ると岩は粉々に砕けた。


「ぺっぺっ!石が飛んできたじゃないか!!」


「私にも当たったわ……不幸ね」


子供のような声と女性の声が聞こえた。


「ムグムグ……でも結構おいしいよ」


「バカなのですか?それは食べるものではありません」


太った声と細長い声も聞こえる。


「あまり怒らないでくれ、大丈夫だよ。まだ様子見さ、フフフ」


アダムの声は地下に響き、いつの間にか7つの気配も消えていた。


----------------


次の日、烈は母の呼ぶ声で目を覚ました。


地下なのに朝陽がカーテン越しに顔を照らす為、一瞬どこにいるのかわからなくなってしまう。


あぁ…そうだったと布団の中で思った烈は本当に良かったのかと今さらになって思う。


いや!!自分で決めたことだ!


烈は飛び起きると布団を畳み、ダイニングへと向かった。


どの部屋の間取りも3LDKなこの部屋は2人暮らしには少し広すぎると思うだろう。


しかし実際は1部屋を資料が占拠、1部屋を書斎として使っているため丁度いいと言えばその通りだった。


ダイニングに着くと既に父が朝食のパンを食べていた。


「お早う烈」


烈の父である赤兎健太郎はお洒落をすればどんな女性でも振り返るほどのイケメンであったが、何せ研究ばかりしていた為そのような事には疎かった。


EBの技術課 課長という役職である健太郎は今回ロストアイランドから出現したであろうものを撃退するありとあらゆるものを作る事を仕事としていた。


「烈、パンで良かった?」


母の赤兎美穂は腰まで伸びた茶色い髪が似合ういいところのお嬢様という印象を受ける。EBでは医務課に所属しており、看護士として体調が悪くなった職員を診たりカウンセリングの仕事もしていた。


「おはよう」


いつも兄と祖父には言っているが、今日は嬉しさと恥ずかしさが半々の挨拶だった。


椅子に座ると美穂がパンとハムエッグを持ってきてくれ一緒に食べ始めた。


「そういえば長官から来てほしいって連絡があったよ?」


健太郎がパンをかじる


「たぶんこれからのことだろうけど・・・」


「健太郎さん、パンがいっぱいついてますよ」


ハンカチを持った美穂が健太郎の口についたパンくずを拭うが健太郎はとても嬉しそうだ。


「んんん……。ありがとう“みーちゃん”今日も綺麗だね」


「ん~~!ありがとう健太郎さん!」


この夫婦、実はEB内でも有名なおしどり夫婦で自他ともに認めるラブラブっぷりであった。


両親が家にいたときにはあまり感じなかったが、高校生になった烈にはそれがとても恥ずかしいことなのだとわかった。


烈は顔を真っ赤にしながらパンをかじる。


「あら、烈もついてるわよ?」


今度はそのハンカチが自分の方に向いているのを見て烈は急いで腕で口を拭った。


「もう……」


美穂は少し残念そうにハンカチをしまうと自分も朝食を食べ始めた。


食べ終わって一息ついた烈は両親と一緒にEBに向かうべく準備をしていた。


「烈できたかい?」


向こうでネクタイを締めながら健太郎が言ってくる。


「もう少し……できた!」


ウゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


突然外でけたたましい警報が鳴り響いた。


驚いた烈が外を見るが特に変わった様子はない。そこに携帯電話を片手に健太郎が飛び込んできた。


「烈大変だ!!昨日のやつがまた現れたらしい!すぐに後藤隊長がくるから下で待ってなさい」


その言葉に烈の鼓動は早くなった。


昨日は意気込んで言ってしまったが、いざなってみると不安がいっぱいだった。


拳をぎゅっと握りしめる烈だったが、そこに美穂が現れた。


「烈、大丈夫よ。みんながあなたを支えてくれるわ」


美穂に抱きしめられ烈は自分の心が段々と落ち着いてきたのがわかる。


「……ありがとう母さん!行ってくる!!」


飛び出した烈の背中を心配そうに見つめる夫婦は息子の成長を感じ、全力で支えようと決意したのだった。


外に出た烈を待っていたのは装備に身を包んだ後藤達だった。後ろには昨日乗ったワンボックスカーもある。


「早く乗るんだ!」


その言葉に迷いなく車に乗り込んだ烈の横顔を見て後藤は少し嬉しそうだった。


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