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第16話 ③

久しぶりの更新。続きを書くのはやっぱり楽しいですね!

アレスはすぐに研究室を飛び出し地上へと続くエレベーターに乗った。


『アレス……』


ガイアからの通信だ。声色は低くどこか躊躇しているように聞こえる。


「兄貴、気にすんな。烈もああやって普通に出てくれたじゃねぇか。あっちも気にしてんだよ」


アレスの言う通りガイアと烈は互いに切り出すきっかけを待っていた。先ほどの通信がいいきっかけになればとアレスも思うが何とも言えない感じだ。


『アレス、すまないが……』「答えはノーだ兄貴」


ガイアが全てを言い切る前にアレスはハッキリと断った。


「俺は電話でもねぇし、郵便屋じゃねぇ。自分の気持ちは相手に直接伝えたほうがいいと思うぜ」


ガイアの言いたかったことはこうだ。すまないが烈に私が謝りたいと言っている と……。


だがそれではいけないと思っただろうアレスは断った。直接話し合わない限り二人の距離は近づかない。もし間に誰かが入ってしまえばその分また遠くなってしまうからだ。


『だが……』


「だがじゃねぇ」


近くにいた二人が離れるというのは出会った時以上にまた近づくのが難しい。絆は一本であり二本目はないのだ。その一本を大事に太く強くすることがさらなる絆を作り出すのだ。


「俺は烈の新しいパートナーだ。だがまだ兄貴と烈の間にはパートナーであった頃の絆が残ってる。俺は悔しい。俺が新しい烈のパートナーなのにまだ認められてないことに。兄貴もわかるだろう?この気持ちが!」


ガイアは わかる と短く言った。


「じゃあ早く仲直りしてくれよ!俺は早くあいつと本気で星を守りてぇと思ってるんだ!」


エレベーターの中で声を荒げるアレスにガイアの声は答えない。


「じゃあ切るぞ!烈が待ってる」


アレスは夜の地上に出るとヘッドライトを照らし烈との待ち合わせ場所に向かった。


------------------------


町では巨大な狸が夜の街を破壊していた。獣の姿は暗くなった町により一層の恐怖を振りまくものとなった。巨大な爪、コンクリートすらかみ砕く牙、固い毛皮が建物を押し倒していく。


悲鳴を挙げながら逃げる住人に構うことなく狸は町を破壊していく。じわじわと恐怖を振りまき人々を不幸にしていく。


「いいわ、この悲鳴。私と同じく不幸になりなさい」


その様子を遠くで見ていたアンラックは自分の胸に手を置いていた。その手には龍三からもらったお守りが強く握られていた。


「そう、わたしもあんなことがなければ不幸にはならなかったの……」


遠い記憶をたどるようにアンラックは宙を見る。辿った記憶にはある男が出てきたのだがその男の笑顔だけが映っていた。男は慣れないように口端を上げ笑顔を作っていたがアンラックはその笑顔が好きだった。


「さぁ、もっともっと不幸にしてやりなさい」


アンラックの言葉に答えるように狸は暴れる。がそれを阻止しようと空から一筋の光が現れた。


J-ウイングだ。


後藤が乗っているJ-ウイングは狸の周りを飛び始めその注意を上に向かせた。


「忌々しい機械人形とその仲間……」


お守りを持つ手にさらに力がこもる。



「こちら後藤、現場に到着した!巨大な狸が町を破壊している。ジャンパーボルトの許可を!」


後藤が下を見ると狸はこちらを警戒するようにじっと見つめその爪を研いでいた。


『未だ住民の避難が完了していません!それに住宅が密集していてボルトの打ち込み場所がありません!』


ミーナが答える。確かに人工島特有の密集した住宅地ではなかなかボルトを打ち込むスペースが見つからない。さらには夜という事で住民の避難が遅れ、後手に回るしかできなかった。


「どうすればいいんだ……」


『後藤さん!』


そこに響いたのは烈の声だった。見ると一台の車が馬力に負けない轟音と共にこちらに向かってきていた。アレスの中で烈は相手を見た。大きな狸はJ-ウイングに気をとられこちらには見向きもしていない。


『烈君!アレス!』


「いくぞ烈!まずは町から離すぞ!」


「おう!」


「「エレメンタルコネクト!!」」


変形チェンジッ!!」


地面を滑るようにアレスが変形していく。車体のボンネットは縦に半分に割れそれが縦に伸び足になる。ブレーキをかけドリフトの要領で横滑りするが足となった前輪は膝を曲げその場に踏ん張り地面に垂直になっていく。片膝をつき、その腹を見せるとそこには紅き大きな宝石が姿を見せた。車体後方部が展開し腕になると頭が現れその勇敢なる顔が敵を睨んだ。



烈がアレスの中で見たのはガイアの姿だった。


いつも博士の隣にいて頼もしく手伝う姿をアレスはじっと見ているだけだった。負けじと手伝いに行くアレスだったのだがどうも不器用な手付きは博士も苦笑いのものだった。


兄に負けないようにいろいろ努力をしても追い付けず、どんどん引き離されてしまう。烈と一緒だった。


突然映像が途切れてしまった。


「悪い、変なものを見せた」


アレスの心にはまだ先程の兄とのやり取りが引っ掛かっていてそれがこの映像を映し出してしまっていた。


「いや……。なぁアレス、悪いんだけど……」


「嫌だね!」


またも即答するアレスは狸に向かい拳を振るう。


「なんだよ!まだ何も言ってねぇじゃねぇか!」


「嫌だね!一つ言わせてもらうと俺は電話でも郵便屋でもねぇ!」


烈もまたガイアと同じ事を言おうとしていたのでアレスもまた同じ事を言うはめになった。


「そんなに気になるならきちんと兄貴と話せ!俺は知らん!」


「でもアレスは俺のパートナー……」


「都合のいいときだけそれを使うんじゃねぇ!」


声を荒げたアレスは狸に蹴りをお見舞いする。その言葉の示すとおり本気の蹴りは狸を吹き飛ばし地面に叩きつける。


「ボルト撃ってくれ!俺も一緒に飛ぶ!……それで烈よ、」


Jーウイングからボルトが発射され苦しむ狸の四方に刺さった。アレスも走りそこに入ろうとする。


「厳しいことを言うがお前はもう兄貴のパートナーじゃねぇ。わかるか?」


その言葉に胸が苦しくなる烈。


「俺が新しいパートナーだ!それは前も言ったよな?」


烈は静かに頷く。


「じゃあなんで兄貴と喧嘩する?お前がまだ兄貴と戦いてぇって考えてるからだろうよ!」


兄に言ったように烈にも話していくアレス、少しの苛立ちを感じながらも似た二人に嫉妬し、羨ましいとも思えた。


「俺はお前達を繋ぐパートナーじゃねぇ!俺の我が儘だと思うんなら思え!でもよ、悔しいんだよ!兄貴に負けるのが!お前一人振り向かせられないなんてよ!あぁ!!くそ!!なんだよ!お前と仲良くなりてぇよ!」


自分の胸を殴り必死に言葉を口にしていくアレスの目には不思議と潤んでいるように見える。


「アレス……」


「兄貴とちゃんと話せ、そしてちゃんとけじめつけろ」


『ジャンプするよ!』


健太郎の言葉にアレスはボルトの内部に滑り込む。


「今は相手に集中しろ。レオ!」


『わかっておるわ!』


『ジャンプ!!』


空間に特殊な磁場が形成され地下の多目的場に繋がる。地上と違い明かりがない地下は静かなもので天井に映し出された星がキラキラと光っているだけだった。


「レオーーーーー!!」


遠くの方で火が灯った。それを目印にアレスが走り出すとその火はどんどん大きくなっていく。火から炎へ、そして焔へと、豪炎の獅子が雄叫びとともに駆けてくる


「いくぞ!!」


「「「獅子皇合体!!」」」


3つの魂が叫ぶと獅子の目に炎が宿る。


宙へと飛んだアレスは籠手を外し合体形態へと姿を変える。手は腕に収納され背中に、爪先は脚に収納され一段短くその姿を変える。


グラァーーーオン!!


獅子が吼えると頭、四肢、胴体、炎の羽衣へと分離し、アレスの体を囲んでいく。


獅子の胴体が二つに割れると膝から下の脚へと変形をし、膝や爪先が展開をするとそのままアレスの脚に装着される。


強靭な前脚は足先が肩に仕舞われるように丸く収納されると肩のパーツに、後脚は関節が伸びきり爪先が回転し拳が現れた。


その二つが合体するとアレスの肩に装着され、その拳が強く握られる。


羽衣が現れふわりと背中に纏えば、胸の赤い宝石に獅子の頭が装着され、咆哮とともに炎を吐き出しその熱で体を撫でていく。


籠手が兜に変形すると炎が顔全体を覆い、紅き瞳の光とともに勇猛なる顔が姿を現した。


「獅子皇合体!カイザー・アレス!!」


狸はすぐに起き上がり闇のなかですぐにアレスに向かい突進してきた。二つの眼球だけが怪しく光を放っていたが、両手についた爪も相当のものだろう。それに対して自らの炎で闇を照らすアレスもすぐに動き始めた。


「カイザーランス!うぉおおりゃーーー!!」


背中から飛び出した槍を握ると狸に向かい思いきり放り投げた。咄嗟のことに狸は驚き、その爪で受け止めるように手を広げた。


槍は空気を削りその刃先に炎を纏い、螺旋回転しながら突き進む。広がる炎陣はさながらドリルの様、暗い道を照らす炎の道となった。


爪と槍が衝突した。


やはり投擲された螺旋の炎槍より必死に爪を立てる狸の方がやや優勢に見える。だがそれによって狸の姿がはっきりと見え、尚且つ動きが封じられたのだ。


「うぉおおおおお!!!」


炎陣を通り抜けるようにアレスは一気に間合いを詰める。右の手には獅子皇刀が握られており、その柄を真っ直ぐ狸に向けている。


ガキィイイン!!


爪を折った音、刀の柄が槍に装着された音、二つの音が重なりあうように響く。片方は悲鳴を、片方は気合いの叫びをあげ互いの距離が近づいた。


「カイザァアア!!」


獅子の咆哮が狸を飛ばし宙へと舞い上がらせ動きを封じた。


「ブゥレイカァアア!!」


青竜刀を構えたアレスは炎の纏い空へと飛んだ。先程よりも大きな炎陣は傘のような放射線状の形からその傘布を畳むように鋭く空へと上がる流れ星のように夜空に突き抜けていった。


グギャアアアア!!


星の直撃を受けた狸は月に腹を向ける前に光となって消えていってしまった。



戦いが終わり夜の多目的場でアレスが静かに言った。


「いつがいい……」


何がかと烈は思い聞いた。アレスはわからねぇやつだなと前置いて、


「いつ兄貴と会う……」


でもと烈は言うがアレスはため息をついてこう言った。


「直接は言わねぇが手伝ってやるって言ってんだ!」


アレスも二人に早く仲直りしてほしい。元は自分が来るほど敵も強くなってきてその過程で自分の方が烈のパートナーに相応しいことがわかったのが原因だ。いや、そうでもないかと悩むアレスだったが兎に角こんなままでは気持ち悪いと思ったのが一番だ。


さて、二人はもとに戻れるのだろうか?そしてガイアは本当のパートナーと話し合えるのだろうか……。




次回予告


ヘルメス:ん?僕出てないんですけどぉ!!

刀耶:ヘルメス寝てたって言ってたよ?

マーキュリー:ペン太を抱いてましたね……

ヘルメス:起こしてよーー!

マーキュリー:暴れたんですけど……

ヘルメス:そういえば夢で大物を釣り上げた気が……ていうか刀耶も起こしてよ!

刀耶:……。

ヘルメス:あっ!刀耶も寝てたなぁ!

刀耶:ごめん……

ヘルメス:まあいっか!僕ららしいからね!次回!「兄同士、弟同士」

刀耶:今度は起きるよ……

ヘルメス:気をつけたまえ!!

マーキュリー:あなたもですよ……



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