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第12話 ②

灰色の島


「ナゼジブンデイカナカッタ」


「・・・・」


「なンで行かなかっタんダよ!!!」


ドゴン!!


「ひ、ぶひぃーーー!!」


「やめるんだパワード・・・」


「アダムーーー!!」


「あの戦力は予想していなかった。だから様子を見たんだよねファット?」


「ぞ、ぞうなんだよーー!」


「ジャアツギハイケルナ?」


「ふぇ?」


「そうダよナぁ!次ハ本気ダよなぁファット?」


「も、もちろん!次ごそはあの機械人形を壊してみせる!!」


「・・・・楽しみにしてるよファット」



獅子が現れた次の日の龍玉神社


「翔くん、あそびにいこぉー」


アスカは翔の部屋でお絵かきをしていて、机では翔が夏休みのしていた。


「もう少し待ってね」


翔は今日のノルマを決め、毎日少しづつするタイプでその宿題も半分が終わろうとしていた。


「ねぇーーあそびいこぉー!」


アスカが駄々をこね翔の服を引っ張るが翔は黙々と宿題を進める。


「ぷぅーーー!!」


無視し続けられたアスカはとうとう頬を膨らませプイッとそっぽを向いてしまった。


「・・・・・よし、今日の分終わり。さぁアスカ遊びに?」


振り向いた翔はその姿をみるとやれやれという感じで四つん這いになってアスカに近づいた。


「アスカ、終わったよ?遊びにいこう」


「・・・いかないもん」


「ごめんよ」


翔がアスカの正面に回り込むと頬をプックリ膨らませたアスカがじっと見つめてきた。


「・・・じゃあきょうのごはん、かれぇ!」


「アスカはカレー好きだね。じゃあ買い物ついでに遊びに行こう?」


そう言うとアスカは満面の笑顔を咲かせた。


「いくぅ!!」


青々と木々が茂る道を翔とアスカは歩いていた。アスカの頭には大きな麦わら帽子、肩には水筒を持ってちょっとした遠足だ。


「暑くなったね。喉が渇いたらお茶飲んでね」


「うん!」


母親のような言葉をかけた翔はしっかりとアスカの手を握っていた。


「翔くん、“なつ”ってすき?」


アスカが翔の方を向いて聞いてきた。


「そうだなー・・・僕は秋が好きかな。夏と冬の間ってなんか不思議な感じがするから」


「“あいしゅう”だね!」


「難しい言葉知ってるんだねアスカ」


そういってアスカの頭を撫でると照れた様に喜んだ。


「じゃあね、“ちきゅう”ってすき?」


夏から地球という突飛な質問をしたアスカに、


「そうだな・・・。好きだよ、僕らが生きている星だからね」


そう言った翔にアスカが抱き着いた。


「アスカも翔くんすきぃーー!!」


質問の答えと行動がかみ合わないことに不思議な感じを覚えた翔だが子供というのはこんな感じなのかと思い、ずれた麦わら帽子を直した。いつものように商店街に行き、八百屋にまず訪れた。


「へいらっしゃい!」


いつものように威勢のいい声を響かせたおじさんは額の汗を拭いながら迎えてくれた。


「今日は玉ねぎと茄子ください」


「へいよ!今日は晩御飯何するんだい?」


「今日は夏なんでドライカレーにしようと思って」


「オシャレだねーー!よかったねアスカちゃん!」


「うん!」


そう言っておじさんから袋をもらったアスカが元気に答えた。


「暑いけど気をつけなよ」


「ありがとうございます」


「じゃぁねー」


そうして2人がまた歩き出すと向こうから見知った顔が近づいてきた。


「烈?」


「兄貴、買い物か?」


そう言う烈の隣には同じく赤い髪の少年がいた。


「烈、友達かい?」


「そ、そうなんだ!友達のア、アレックス!」


「アレックスだ!よろしくな!!」


そういって翔は握手を求められて素直にそれに応えた。


手を握るとアレックスと呼ばれた少年は少し驚いたような顔をした。


「どうかしましたか?」


「いや、なんでもない。こっちのお嬢ちゃんもよろしくな!」


そういってアスカも警戒しながら握手に応えた。


「!!」


アレックスは驚き咄嗟に手を放してしまった。


「どうしたのぉー?」


アスカが不思議そうにアレックスを見た。


「い、いや!すまなかったな!」


「さ、早く行こうぜアレックス。じゃあな兄貴!今日の晩飯はなんだ?」


「今日はドライカレーだよ。あまり遅くならないようにね」


「オッケー!!」


そう言って翔とアスカは仲良く手を繋いでいった。


見送る烈は隣で手を見て険しい表情になっているアレックスを見た。


「どうしたんだアレス?」


そう、この少年の正体は人間に変身したアレスだった。


アレスはその手を見ながら烈に聞いてきた。


「あれは誰だ・・・?」


「あれは俺の兄貴だぜ?」


「違う!あの女の子は・・・?」


烈の目を見て言うアレスは真剣そのそのものだった


「あ、あれはアスカって言って、兄貴が拾ってきた迷子の子供らしい。でもアスカがどうかしたのか?」


(子供だと・・・。あの力は尋常じゃない。まるで星の力のような大きさだ・・・)


そう思うアレスの横顔を見て烈はますます不思議そうな顔をした。


「そ、そうか!よし、観光を続けよう烈!あ、あのソフトクリームが食べたい!」


アレスは看板を指さし烈を導いた。


ソフトクリームを買うとすぐそばの公園のベンチに座り食べ始めた。


「そういえば昨日聞けなかったけどアレスのパートナーはどうするんだ?」


烈の言葉にアレスは少し考えるように上を向いた。


「ヘルメスの時は刀耶にしか聞こえない通信で呼んだって言ってたな。アレスもそうしてみるか?」


「・・・烈、俺のパートナーってどんな奴だと思う?」


上を向いたままアレスが聞いた。


「そうだな・・・俺みたいなやつかな?」


烈は笑顔で答えた。


「でも俺はガイアのパートナーだからダメだ!」


「そうか・・・俺にもいいパートナーが見つかるといいな・・・」


「手伝うぜ!」


そう言って拳を突き出した烈にアレスが拳を合わせた。


(それにしても兄貴のパートナーが烈の兄とは・・・なかなかおもしろい。兄貴も烈のことは最初に言っておけばよかったんだろうが、まあゆっくりでいいだろう)


パートナーはお前だと言えずどこか寂しい気持ちになっているアレスを烈のまっすぐな瞳が見つめ、アレスも早くその少年のパートナーとなり兄を支えたいと思った。


そのころEB


1人になりたかったガイアは敷地内にある運動場のような場所に来ていた。


(どうしたものか・・・本当のことを言えば烈が傷ついてしまうだろうか?しかもそれが兄だと知ったとき彼はどう思うだろう)


そもそもエレメンタルコネクトとは互いの意思を機械を仲介して共有することによって力を発揮できるものだ。


だからガイアの思い出は烈に見えた。しかしそれは逆も言えることであり、ガイアも烈の過去を見てきた。


自分よりはるかに短い人生だったが、それはいつも兄と比べられていた人生だった。


烈自身も頑張ってきたのだが、それ以上に兄が優秀だった。


ガイアも兄であった為、烈の兄の気持ちはわかった。ミスをしてはいけない怖さと弟より先にいなくてはならない焦りをよく知っていた。


(こうして弟の気持ちになって見えた兄の存在とはどれほど大きかったか、長い間生きていて初めて知ることができた。その点に関しては烈に感謝したいが・・・。『私のパートナーは君ではない・・・』そんなこと言えない・・・)


実際ガイアはまだ100%の力を出せていなかったが、その気持ちを知って言えるはずがなかった。


言えば烈の心はまた兄に負けてしまう。


そうなればアレスともうまくいかないことは簡単にわかった。しかし烈の力は必要だ。


あのまっすぐな目は常に前を見続け自分の願いを叶えてくれると思った。


それは烈の兄にもなかったものでガイア自身そこに惚れたのだ。


「翔・・・。どうすればいいんだろうな・・・・」


呟いたガイアは天井に映る空を見ながら悩んだ。


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