表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/60

第1話 エレメンタルチェンジ!! ①

あれから何万年、いや、何億年経っただろう。


私の本体のおかげで星はもとに戻りつつあるようだ・・・


よかった・・・


争いのある世界はもうたくさんだ。


しかし・・・あの島に残ってしまったあれを浄化するまで真の平和は訪れない。


私が、私が何とかして見せる!!


そのためには心の力が必要だ・・・機械の私では辿り着けなかった人の心。


博士が言っていた、正義の心。


私とこの星を救ってくれるそんな心を持っている人とは・・・


----------------------


暖かな春の日だった。


暖かな空気が桜の花を撫で、その花びらがひらひらと地面に落ちていく様は自分とは違う儚い命を教えてくれていた。


私はいつの間にか祠に納められていて、


そこに彼が現れたんだ。


最初は竹刀を持ってやってきた。風を切る音が心地よく感じる。


思わず見とれてしまうその姿に私の直感が働いた。


また彼が来たとき彼は泣いていた。


雨なのに傘も差さず上を向いて涙を流していた。桜の花びらが少年の心のようにぱたぱた散っていく


私の影がそこに重なった気がした。


またある時はゆっくりと木陰に座り読書をしていた。夏の青葉がさらさらと木陰を作って彼の読書の邪魔をした。


博士の影が重なった気がした。


よし決めた!思い切って声をかけてみることにしよう!


まず最初は初めましてだな、何年も話していないから緊張してしまう。


まだ時間はある・・・まずは他愛もない話から入ってそこから徐々にだ。


よし、いくぞ!


「は、はじめまして!」


声を聞いた少年は驚いて周りを見回した。そうだ私は玉だったんだ。


「こっちだ、祠の中だ!」


私が言うと少年は不審そうに近づいてくる。


私の心臓がドクドク脈打つ感覚、緊張している・・・


祠の前まで来た少年は中を覗き私の視界いっぱいに顔を近づけた。


「初めまして!私はガイア、君と友達になりたい!」


これが私と彼との出会いだった。その時にはもう秋の気配が漂い、木の葉も黄色く色づいてきている頃だった。


--------------


「おはよー!!!」


桜の花が咲き誇る中、学校への道を大急ぎで走る高校生がいた。


彼の名前は赤兎烈せきと れつ


日本の首都東京に住んでいて、都内の公立龍神高校に通う一般的な高校2年生。


燃えるような赤い髪が特徴の彼は学生服をラフに着こなし、弁当以外なにも入っていないであろうカバンを肩にかけ校門へとたどり着いた。


「赤兎烈!!」


見ると校門には竹刀をもって仁王立ちをしている体格のいい教師が烈の前に立ちはだかっていた。


「おっと……近藤先生!!おはようございます!!」


烈はいつものように笑顔で挨拶をした。


「おはよう、ではない!お前も2年になり余裕と言うものを学ぼうとはしないのか!いつもギリギリで突っ走って来て、遅刻しないだけいいがなんとかならないのか!」


「しかし先生、これが俺の日課なんです!先生は毎日立ってらっしゃいますけど立たない日は調子が狂うんではないですか?それと同じです!」


珍しく考えた意見に近藤は言いよどんでしまいました。


「そういうことです!では俺は失礼します、遅刻しては大変なんで!また部活でお願いします!」


笑顔の烈は横をすり抜け校舎へと入っていった。


近藤はやれやれと肩を落とし、いつものように遅刻しないものがいないか見続けていた。


自分の教室へと滑り込んだ烈は自分の机に荷物を置き窓際の友の席へと詰め寄った。


「刀耶!宿題見せてくれ!!」


1時間目の授業の準備をしていた友は突然の事に驚きつつも、いつもの事だと思いプリントを出した。


「おはよう烈、また宿題してこなかったの?試験があるんだからそろそろ本気でやったほうが……」


「サンキュー刀耶!」


出されたプリントを奪い取った烈は自分の席へと一目散に走っていき、机の中から自分のプリントを取り出した。


「やれやれ……」


プリントを取られた友の名は蒼井刀耶。群青の髪に眼鏡という所謂優等生タイプの彼は自分の席で予習を始めた。


刀耶と烈は祖父が知り合いと言うことから小さい頃からずっと一緒だった。


彼の家は代々続く剣術道場で刀耶で10代目だったが父は継がずそれを刀耶に押し付けようとしていた。


父はどうにか継がせようと友達だった烈に一緒に剣道をしてやってくれと頼み込み烈の兄共々剣道を始めさせた。


しかし、やりたくもない事を強いられ刀耶はいつしか剣道から離れていってしまった。


そんなこんなで1日が始まり1時間目は眠くなることで有名な歴史の授業。


その一番の原因である年老いた渋井先生が春という指揮棒をふり生徒を眠りへと誘う。


「はぁーい、じゃあ最初のページから、まずはぁ地球の誕生と大陸の誕生からだねぇ。じゃあ質問だ、大陸はどうやって大きくなぁったか?赤兎君」


当てられたが既に3度寝に突入した瞼は閉じられている。


「寝とんのかぁ?仕方ない、蒼井」


「はい、地殻変動です」


「そぉ、大陸はプレートの上に乗っていてそれが動いて大地同士がぶつかるんだよねぇ。でも大地同士がパズルみたいにピッタリくっつくわけじゃぁない。くっつかないところが湖になるんだねぇ」


この時の地球では経済の中心と呼ばれる場所には必ずと言っていいほど大きな湖があった。


東京では東部3分の1ほどが湖になっており、その湖の上に大きな人工島を作り技術を発展させていった。


各言う烈達が通う高校も人工島の上にある都市「龍神町」の学校である。


小高い丘のようなところにある学校からは湖とその向こうに東京湾が見渡せ、入学のパンフレットにも書かれるほど立地の良さを吟っていた。


刀耶はその景色が好きだった。違った青が3つも見える景色は自分の心を落ち着けてくれた。


しかしその一番手前の青にふと黒い点が現れた。


(なんだ……?)


目を凝らして見てもただの黒い点はなんの前触れもなくフッと消えてしまった。


(なんだったんだ?)


刀耶は胸に引っかかるものがあった。見たこともない不思議な球体はそこからでは善と悪どちらとも言い難い姿だった。


「蒼井君は先ほどの質問を自分の目で確認したそうだけどぉ、今は授業に集中してくれるかなぁ?」


「す、すいません…」


(集中集中……)


渋井先生の言葉に我に帰った刀耶は眠りの指揮者に抗うべく意識を集中させた。


勿論烈は夢の中だ……。


------------


灰色の島、ロストアイランド


人類が異世界への入り口と呼ぶその島は太平洋の真ん中辺りに浮いている。


そこでは年中濃い霧が島を隠し、天気、海流、その他の気象現象をことごとく否定してそこに浮かんでいた。


その大地は草木も生えない不毛の大地、いや地面と言っていいのかわからないものからできた灰色の物質。


あるロボットの力で多くの魂と思い、そして残骸が集められていたそこに声が響いた。


「やっと形を成すことができた、長かった……」


若い男の声だ、誰に話すでもなく空間に響いた声は長い旅をしてきたかのように疲弊していた。


「これでやっとあの忌々しい機械人形に復讐できる。そうだろうみんな?」


その問いに答えるように島の各地で何かがうごめき声のようなものを発した。


「みんなはまず体を作るんだ、その後でここの地下で落ち合おう」


蠢く物体は島に吸い込まれていくが、それとは別の場所で黒い球体が1つ姿を見せた。


「待てないのかい?よし、ではお前の姿を見せてみろ!」


突然の落雷は黒い球体に当たり、その衝撃で球体は形を変え始めた。


グニャリグニャリと延びる球体は段々と人をかたちどる。


背は高く手足が細長いヒトは落雷の衝撃からその姿を表した。


まず髪、アイスピックのような鋭利な毛髪が重力に逆らって生えている。


服装はスーツ、但し着崩されていてだらしない。


そんなサラリーマンのような男の顔は、……笑っていた。


しかしその笑みは身につけた仮面のものであって、本人の表情は読み取れなかった。


大きなスーツケースを持ち、自分の体を見て少し信じがたいようだった。


「それがお前の姿か……いいだろう、いっておいで」


優しく話しかけた声に応えるように男は肩を震わせ喜びを表現し、そのままどこか旅行に行くように歩き出すと黒い玉になって飛んで行ってしまった。


「いっておいで、前世の遺産よ……」


風に乗った声が消えると灰色の島はいつもの静けさを取り戻した。


--------------


衛星は灰色の島で生まれた物体を探知した。


温度でも波長でもなく目視で見つけたそれは人型を成しているように確認できた。


すぐさまそれは地上に報告され、ある組織の警報をけたたましく鳴らせた。


「なんだ!」


初めに声を上げた初老の男性の言葉にそこにいた人の視線が集まる。


「早く報告を!」


男性に言われ我に返りパソコンを操作する女性、その後も続々と人が動き始め大きな組織全体がその小さな反応に右往左往していた。


最初に声を上げた初老の男性も心の中で焦りを感じていたが、組織の長である自分がうろたえてはいけないと落ち着いて指示を出していた。


「落ち着いてください!」


突然の声に組織全体が驚きそれぞれがスピーカーの方を向いた。


「大丈夫です!1つ1つゆっくりと、私もいます!私を信じてください」


この声はいつも全体の指揮や時報、時には相談にも乗ってくれるこの組織のブレインであった。


その言葉に初老の男性を含め全員が1つ深呼吸をし、自身の業務に戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ