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第11話 ② 

「兄さん、兄さん!!」


ヘルメスは十本全ての触手を倒しガイアに連絡を取ろうとしていたが兄からの連絡はおろか戦っている音声も拾えないことにとても嫌な予感がしていた。


「つながらない……。刀耶、何か見える?!」


「見えるけど応答がないんだ。なんだか眠っているみたい」


刀耶は小さな鏡の中に写る烈を見て言った。


「嫌な感じがする…。急ぐよ刀耶!!」


「うん!」


「健太郎!カタパルトのとこから入るから開けといて!」


『わかった』


(兄さん、無事でいてね…)


ヘルメスは変形すると悪い予感を振り払うかのように急いで地下へ向かった。しかし地下で見たのはその悪い予感だった。


「あら~、早いですね~。もう少しで止めが刺せたんですが~。できれば邪魔しないでもらえます?」


そこにはドラッグが一体化したであろう大きな植物の触手に両手両足を縛られ空中に張り付けにされたガイアの姿があった。


「兄さん……!」


「あなたのお兄さんは今頃夢の中でとてもいい夢を見てるんです~フフフ」


「兄さん!しっかりして!!どうしたのさ!!」


ヘルメスが必死に叫ぶが、ガイアの体はダランと力なく垂れ下がっている。


「今頃夢の中で自分のやったことを後悔しているでしょう~。じゃ、続けますね~」


そう言ったドラッグは触手を締め上げガイアの四肢はミシミシと音を立てた。


「やめろぉーーー!!」


「ダメだヘルメス!」


刀耶の忠告など聞こえる筈もなくヘルメスが飛び出した。まさかあの兄が今あんな姿で目の前にいるとは思わなかったからだ。


「うるさいですね~。邪魔なんだよ!!!」


怒るドラッグはヘルメスに向かい触手を次々と伸ばした。最初の触手を躱したヘルメスだったが後から次々と迫りくる触手に躱しきれなくなってくる。


「くっ!兄さん!!」


「ヘルメス横だ!!」


「!!」


ヘルメスが横を見た瞬間にわき腹にとてつもない痛みが走り、そのまま弾き飛ばされてしまった。


「ヘルメス!!」


「だ、大丈夫だよ刀耶……。それより早く兄さんを!」


ヘルメスはわき腹に手を当ててフラフラと立ち上がった。


「私をどれだけイラつかせるつもりですか~!!」


ドラッグが追い打ちをかけるように触手を伸ばすとヘルメスは空に逃げた。しかし何本もの触手から逃げられるわけもなく足をつかまれたヘルメスはガイアと同じように張り付けにされた。


「私はこいつに罰を与えているんです。それはこの星の総意なのです~。だからそこでじっくり見ててくださいね~。あなたの兄さんが死ぬ姿を!!」


ドラッグが触手に力を込めるとガイアの右手がメキメキと音を立て粉々に粉砕された。


「や、やめろっ!!」


「ハッ!聞こえませんね~」


また力を込めると今度は左足が粉砕された。


「兄さん!!」


「いいですね~この音!!」


「目を覚まして兄さん!そんな奴に負けちゃダメだ!!」


「そんな事言っても無駄ですよ~ヒャハハハハハア!!そういえば少し覗きましたけどあなたたちが博士と言っていた男、私知っていますよ~」


「えっ?!」


ヘルメスは驚いた。父である結城博士は確かに有名な人だった。しかし、それはガイアが生まれたばかりのことであってヘルメスが生まれた頃には情報操作が行われ技術もろとも秘匿とされてきたからだ。


「私の記憶にね、そうそう!確か世界に戦争をもたらした大罪人でしたかね~?死んだとは聞きましたがあなたたちが原因だったんですね~」


ヘルメスは黙ってそれを聞いていた。その情報は国の中でも一部の上層部しか知っていなかっただろう…。それがドラッグの記憶にあるという事はどこかの国の末路か、それともそれでしか勢いをつけられなかった弱い人間か。どちらにしても博士はそんな人ではないことはヘルメス含め兄弟たちは一番わかっていた。


「この機械人形もですがその博士というのもクズですね~。人に、世界に、星に嫌われたものの末路はこうもくだらない」


「…馬鹿にするな」


ヘルメスは震えていた。兄までも馬鹿にされるか、兄がどれだけ苦しんだか、自分たちがどれだけ苦しんだか知らないのに……。


「こんなことなら前の地球のままにしておけば楽だったんですよ。いや、あなたたちを作らなけれよかった。自分勝手な男です」


「兄さんと博士を悪く言うな!!!!」


誰のおかげであんな星になったか知らずにとヘルメスは吠えた。


「二人は正しいことをしたんだ!!誰が何と言おうと!!例え世界が否定しても僕は…いや僕たち“家族”は二人を信じる!!だから二人をバカにするやつは絶対に許さない!!!」


「なら私たちが悪であることを証明してください。正義は必ず勝つんでしょ~?」


ドラッグが触手に力を込めるとガイアの右足がミシミシと音を立て始めた。


「あぁ…、見せてやる。正義の力、家族の力を!!来たれ、エアロナイツ!」


ヘルメスの叫びを聞いた水星では三羽の鳥たちが羽ばたこうとしていた。


キュィイイ!


ケェエエン!!


ペェエエン!!


それぞれ空、大地、海を自由に羽ばたく鳥たちだ。嘶きは友の助けを聞き届けた合図だった。三羽はそれぞれ水星の地表に出るとそれぞれの翼を大きく広げ地球へと流れ星のように飛び立った。


「お友達ですか~?でもそれがくる前に終わっちゃいますけどね~」


ガイアの右足が粉砕されたが、小さな鏡の中で烈が体を起こしているのを刀耶は見逃さなかった。


「烈!!」


----------


烈はフラフラと立ち上がり頭を振った。そういえばドラッグの攻撃を受けて…


「俺はどうしちまったんだ?」


「烈!!返事をして烈!!」


「刀耶…?俺は?」


「早くガイアを起こすんだ!前を見て!」


烈が前を見るとそこには植物と同化したドラッグの姿があった。巨大な黒い植物の茎の中央に全身緑色の植物の形をしたドラッグが不気味な笑いを浮かべこちらを見ている。


「ガイア!!起きろガイア!!」


呼びかけても返事はない。それにいつもより空間自体が暗く感じた。周りを見てもどこか悲壮的な雰囲気だけが漂ってそこにいるだけで自分も同じ気持ちになりそうだ。


しかし烈は知っている。そこにはガイアの心、本体がいることを。それを必死に探した。


ふと視線が通り過ぎた場所にうずくまる小さな緑色のロボットが見えた。声は聞こえないが肩が上下に揺れ、泣いているようだった。


「ガイア…なのか?」


烈はガイアの元の姿は知らないが不思議とそのロボットがガイアだとわかった。


「ガイア!俺だ!」


返事がない。


「負けるなガイア!!お前は俺と一緒にこの星を守るんだろ!こんなとこであきらめんな!!」


ロボットは動こうとしない。まさか声が聞こえていないのではないかと思い烈が走っていこうとすると後ろから不意に肩を叩かれた。叩いたほうを見るとそこにはボサボサ頭の眼鏡の男性が立っていた。年は四十台くらいだろうか、白衣にジーパン足にはサンダルを履いた男性は烈を見るとニカッと笑った。


「えっ?あ、あなたは?」


男性は”まかせろ”と言わんばかりに自分の胸を叩くとガイアの方に向かって歩き出した。


その後ろ姿を見ていた烈はどこかで見たことのある男性の顔をすぐには思い出せなかった。しかしその背中はとても優しさを感じさせる。


男性がガイアの前に立つとガイアが顔を上げた。


「……!!!」


言葉は聞こえなかったが男性が腰に手を当ててなにかを叫ぶとガイアはびっくりして体を強張らせた。


その後も何か言っていたがガイアは駄々を捏ねるようにまた俯く。とうとう男性は拳を振り上げそれをガイアに落とした。


痛がっていたガイアに男性はまたゆっくりと話しだした。その言葉をじっと聞いていたガイアだが我慢できなくなったのだろう、男性に思い切り抱き着いた。


男性は優しく抱きしめ、泣きじゃくるガイアを撫でた。


あなたは泣く姿というのはがみっともないと思うだろうか。子供ならまだしもそれは歳を重ねるにつれてみっともないと思うだろう。ではガイアは生まれて何年だったのだろう…、動物よりも、植物よりも、星よりも長く生きたガイアはみっともないだろうか?


しばらくガイアが泣いた後、優しく男性が語りかけた。


その言葉にガイアは烈の方を見た。やっと目が合ったガイアはどこか幼げでまっすぐな眼差しだった。ガイアは決心したように立ち上がるとこちらに向かって歩いてきた。途中男性の方を振り向いたガイアは手を振り、男性もそれに答えた。


ガイアの姿が段々と大きくなる中、ガイアの後ろで男性が烈に何か言っていた。


「た、の、ん、だ……」


烈にはそう解釈できた。男性は笑って手を振って消えていった。


「すまない烈。守るといったのに・・・」


烈の前に来たガイアは小さかった。少年のような姿のガイアは烈にとっては新鮮なものだった。


「これくらい大丈夫さガイア。お前は大丈夫なのか?」


「少し危なかったが大丈夫だ」


「あの人は?」


「あれは博士だ」


そうかと烈は納得した。そういえば以前エレメンタルコネクトをした時に見た男性だとやっと思い出した。


「そっか…よかったな。よし、じゃあいくぜ!」


「おう!!行くぞ!!」


--------


「うぉーーーーーーーーーーー!!!」


目の輝きが戻ったガイアはグランガイアと強制パージした。パワードとの戦いから健太郎がつけてくれた機能で飛び出したガイアが見たのは植物の怪物と化したドラッグだった。


「「負けてたまぁるかぁーーー!!」」


ガイアと烈の拳がドラッグに突き刺さった。


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