第11話 飛翔せよ!鳥人合体! ①
第10話 飛翔せよ!鳥人合体!
「ここは……」
私が立っていたのは草原だった。風が吹き草木が揺れる静かな場所。なぜだか懐かしい感じを覚える。
「私はドラッグと戦っていたはずだが……。そうだ烈!!」
体を見てもそこにサイの顔はなかった。烈が体の中にいる感覚もない。
「どうしたというんだ……」
私は草原を歩いた。花がところどころ咲いている。風が吹くとサラサラと音を立てて揺れる草花に先ほどまで感じていた恐怖も吹き飛んでしまう。
そのうち大きな杉の木を見つけた。見上げるほど大きな木で腕を回しても掴めない太い木だった。
「おかしい…体が小さくなっている。それにこの木は……」
どこかで見たことがある木の向こう側を見るとそこには草が生えていない道のようなものが続いていた。そう、私はいつもこの道を歩いてここまで来ていたんだ。
「そう、この道の向こうに……」
私は導かれるようにその道を歩いた。記憶によるとその先には今はもう存在しない大切な思い出が待っていてくれるはずである。
5分くらい歩いただろうか…。目の前に大きな建物が見えてきて、その横には小さな家もある。大きな建物は白い箱形の味気ない建物、研究所だ。小さい方は赤い屋根の研究所の半分くらいの大きさの家、私たちの実家だ。
家の花壇に水をやっている人影が見えた。いつも髪がぼさぼさでおしゃれに気を使いたくないからいつも白衣を着ていて、履き古したジーンズに足元はスリッパの男性だ。
私は一瞬胸が苦しくなった。そう、あの男性はすでにこの世のはいないのだから……。私の…いや私達の一番大切な人。
「博士……」
声になっていたのだろうかと思えるほど小さな声だった。しかし男性は気づいたらしくゆっくりと振り向くといつもの笑顔で私に手を振ってくれた。
「博士!!」
驚きと喜びで私は叫び、博士に向かって全速力で走っていった。博士の目の前につくと私はゆっくりと見上げた。髭、また剃ってないんですね……。
「おかえりガイア。散歩は楽しかったかい?」
は、はい……。そうこの声だ……、懐かしい。
「ん?どうしたんだガイア?」
「え?いやなんでもない……です」
「息抜きは大事だからな!父さんもこれからちょっと昼寝をしようと思ってね!」
博士、そんなこと言って一日ゴロゴロする気でしょう?わかってるんですよ……。
「いつものハンモックですか?」
「そう!あれこそ安らぎの代名詞!人はみなあの誘惑には勝てないのだっ!!」
博士がビシッと指さす先には一緒に木に結んだハンモックがあった。
「博士、1つ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「ここはどこなんです?」
博士の困った顔はなんというか、気が抜けてしまうようなそんな顔だ。
「どうしたんだガイア?見た通り我が家だが?」
「夢ですか?」
「どうしたんだガイア、熱でもあるのか?」
私の額に当てられた博士の手は暖かかった。
そう、この手だ。
「熱はないみたいだな……」
「博士、私は……。私は見たんです!私たちが生まれたことで世界の争いが激化したこと!私たちのように意思をもった兵器ができたこと!そのことで私たちが狙われ博士が追い詰められていったこと!そして……博士がいなくなったこと。それでぼ…、私は地球と合体したんです!!」
私は必死になって博士に話した。そう、これは現実ではないんだ。そう自分に説明しないと私はこの夢に飲み込まれてしまう……。
「わかった!ガイアも昼寝してたんだな。悪い夢でも見たんだろう?父さんはこの通りピンピンしてるぞ。お前を置いてどこへもいかないよ。それにしても…プッ!自分のことを私と言うガイア……。すまんっ笑ってしまう!いつも僕だったろ?!」
「博士……」
駄目だ……本物なんだ……。“僕”の見た博士はあの時のままだった。冗談を言って、心配してくれる。ロボットの私を人間のように扱ってくれる。父さんの包み込むような雰囲気と優しい顔に僕はいつも気を許してしまうんだ。これが現実だったんだ……。今までが夢だったんだ!
「ご、ごめんなさい博士。僕…悪い夢でも見てたみたいです!」
「ハハハハ!よし、いつものガイアに戻った。どうだ?父さんの昼寝に付き合ってくれないか?」
「お供します!」
その後僕は博士と1時間ハンモックの上で話した。いや、1時間より長いかもしれない……短いかもしれない。
そんなことより僕は単純に嬉しかった。博士とまた話せることが……。さぁ帰ったら弟達が待ってる!
「そろそろ帰るか!」
「はい博士!」
博士はハンモックから降りると僕と手を繋いで家の前まで歩いた。
「帰ったら“7番目”の兄弟と合わせてやろう!」
突然の博士の言葉に僕は一瞬嬉しくなったが、ふと昔の事を思い出した。
(7番目?僕らは6兄弟……。博士も6体作った後に「家族が揃った」って言ったじゃないですか?)
「おっ、見ろガイア!出迎えてくれているぞ」
「えっ……」
家の前に立っていたのは“兵器”だった。顔ではなくカメラのような単眼レンズがパチパチと光っている装甲。腕には手りゅう弾、背中にはミサイル、手にはマシンガンを持っていた。
「博士…あれは…?」
「すごいだろ!あれ1体で100人分の戦力だ!いざとなったら内蔵されている核爆弾で相手もろとも大爆発だ!!」
博士が絶対言わない言葉がその口から発せられる…。
「どうして?」
「どうして?決まってるじゃないか!これを売って世界に争いを生み出すんだ。それで儲かった金で豪遊さ!前に言っただろう?お前もそのうち暴れまわってもらうぞガイア!」
博士の顔をした別の人間だ…。僕はそう思うしかできなかった。
「ヘ、ヘルメスたちは?!」
「ん?あぁーあのクズたちか…。ほらそこにいるだろう!?」
博士が指さした場所には山のような鉄屑達が山になっていた。その中には頭のようなパーツが転がっている。
「ヘ…ルメ…ス……?」
僕が近づくと目が光った。
「ニ…イサ…ン。ヒ…ドイヨ…ボクタチ…ヲ、ミステル……ナンテ…」
「違う……」
するとヘルメス以外の頭が四つ、鉄屑の山からガラガラと出てきた。
「……アニキ」
「「タスケテ……」」
「ニクイ……」
弟達の変わり果てた姿に僕は後ずさりをしてしまった。しかしそんな僕の体を受け止めた暖かい手があった。
「どうしたんだガイア?そんなクズたちは放っておいて早くこの兵器を量産しよう!」
「博士!!どうしたんですか?!僕たちは家族でしょ!!なんでこんなひどいことを!!博士おかしいよ!!」
博士は見たことのない冷たい目で僕を睨んだ。
「ガイア……。お前までこのクズのようなことを言うんだな……。父さん悲しいぞ。家族?違うぞ。お前は“道具”で、父さんが生んだ兵器だ。それ以外のなにもでもない。お前も鉄屑になりたいのか?フンッ!しかしその姿で言うのはいささか説得力がないな」
「えっ……?」
僕の手にはさっきまでなかった手りゅう弾が握られていた。背中にはミサイル、腰にはマシンガンがあった。
「どうして……?」
「ハハハハハハハ!お前は兵器だ!よく似合っているぞ!!」
「違う……!」
僕が身体中についた武器を外して地面に落とすが落とした側から新しい武器が体内で生成され飛び出してくる。
「「「「「ニイサン…ニクイ……ウランデヤル!!」」」」」
「違う、違う!!」
弟達の狂気の視線に僕はその場から逃げてしまった。大切な弟達を置いて。
「ニイサン、コロシニイキマショウ。コワシニイキマショウ」
そんな僕の肩を兵器が血のついた手で叩く。
「違う!!」
とうとう僕は頭を抱えて座り込んでしまった。この現実を受け入れたくなくて、僕の記憶がどんどん汚されていくのを感じて。
「ガイア、さあ兵器として活躍しておいで!!」
「ニイサン……」
「「「「「兄さん……」」」」」
それでも博士や弟たちの声が聞こえてくる。こんな悲しい声なんて聞きたくない!いつも聞いていたのは笑い声なんだ!
(やめて……違う。こんなの嘘だ!)
「嘘ではないですよ~」
(この声…誰?)
「目を開けてしっかり見るんですよ~」
その言葉に僕は目を開けた。
「なに…これ…?」
目の前にあったのは焼け野原だった。さっきまであった家や研究所も壊れていて、崩れた瓦礫に博士が下敷きになっていた。
「博士!!」
「すべてお前がしたんですよ~。ひどいですね~。自分の親まで殺すとは~~」
「あ……あ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
(違う…僕は……)
「博…士、ヘルメス…みんな…ごめん。ごめんなさい…みんな・…“僕”のせいだ!!!」
耐えられなくなった僕膝をつき、頭を地面に擦り付けるように座り込んだ。ただ謝ることしかできない。それになにも考えたくない…。さっさと死んでしまいたい…そう思った。
「・・イア!!」
聞きなれた声…でも。
「うるさい…もう…」
「ガイア!!」
「兄さん!!」
「ヘルメス……?」
なんで?だってヘルメスはさっきあの中に……。それに烈……君は僕が後世で会った……。そうだ…僕は……。
ゆっくりと顔を上げるとそこに光が見えた。眩しすぎず優しい光に落ち着きを取り戻していく。ふとその中に髪がぼさぼさで白衣を着て、履き古したジーンズにスリッパを履いた男性がいた。
「博士……」
「ガイア!!」
突然怒った博士に僕は驚いてしまった。だって、こんな風に怒られることなんて一度もなかったから……
「悪に飲まれるんじゃない!!お前は正義のロボットだ!!あんなことするはずないだろ!!」
「でも…でもっ……。っ痛い!!」
僕が泣きながら言うと拳骨されてしまった。痛い…拳骨されたのも初めて……。
「しっかりしろ!お兄ちゃんだろ!大丈夫だ。父さんはガイアを信じる!」
「父さん!!」
僕は我慢できず博士の胸で泣いた。博士はぎゅっと抱きしめてくれた。心臓の音が聞こえ手がとても温かい。怒っているけど優しい声に僕の心はいっぱいだった。
「ガイア…。ガイアはまだ頑張れるぞ。父さんの手紙を読むのはまだ先だ。何故ならガイアには一緒に戦ってくれる人がいるだろう?」
「烈……」
「そうだ!友達だろう?!お前を待っているぞ!」
“私”が顔を上げると博士の向こうに烈の姿が見えた。
「さぁ行きなさい。父さんはいつもガイアの中にいるよ…」
優しい声は私の背中をゆっくりと押してくれた。その感触を名残惜しいと思うのは当然だが、私はそれでも先に行かなければならない。
「ありがとう博士!」
私は最後に後ろを向いて手を振ると博士は笑顔で応えてくれた。それだけで十分だった。地球を守ると決意したんだ!たとえ誰に何と言われようとも!それが私の選んだ道だから!!
「うぉーーーーーーーーーーー!!!」
その瞬間、私はグランガイアと強制パージした。パワードとの戦いから健太郎がつけてくれた機能で飛び出した私が見たのは植物の怪物と一体化したドラッグだった。
「「負けてたまぁるかぁーーー!!」」(父さん……ありがとう)
私と烈の拳がドラッグに突き刺さった。




