第10話 ④
ヘルメスと後藤がドラッグと話している間にガイアと烈は地下にたどり着いた。
「行くぞ烈!!合体だ!!」
「おう!!」
「「グランコンビネーション!!」」
ブパァーーーーーン!!
走るガイアの掛け声に応えるようにグランライノはクラクションを鳴らしスピードを上げて迫ってきた。
「変形!!」
ガイアは頭を収納し車へと変形するとグランガイアと土煙を上げながら並走する。
「格納!!」
ガイアは段差を使い宙へと舞うとグランガイアの荷台に着地し、みるみるダンプの内部へと収納されていった。
「合体変形!!」
その言葉にライトが光ると車体の頭部が前へ倒れ始め収納されていた脚へと変形していく。巨体を支える脚には膝に金の突起が天を突くように伸びており、緑一色のカラーによく映えた。
猛スピードのまま脚を踏ん張ると膝が曲がり大地を削りながら車体を前のめりに持ち上げていく。
やがて膝が曲がりきると車体は空を向き跳ね上がった。
荷台が縦に割れ、後ろに移動すると腕になるであろうパーツが現れる。甲冑のような肩にはそれぞれ一本ずつ角が生えており、準備ができると展開し二本の角を天に雄々しく伸ばした。
腕には蹄を思わせる銀の装飾、先端から伸びた手は力強い拳を作りその体側に揃えられた。
最後、胸には二本の角を持つサイの頭が静かにその時を待っていた。
「目覚めろ!深緑の鎧!」
目が光り雄叫びを上げたサイを金の装飾が横から押さえ付けるように固定するとガイアの頭部が現れた。
荷台のハッチが開き、そこから一回り大きなフルフェイスの兜が現れた。サイの頭を模した頭部には横から二本、前から一本の角が天を向き後頭部には後ろ髪を思わせる毛束がさらさらと流れていた。
ガイアは両手で兜を装着すると頭部の大きさに合わせ引き締まり凛々しい顔が完成した。
「「創星合体!!エレメンタルガイアァアア!!」」
「烈!レガシー相手だと長引かせてはこちらが不利だ。相手がこちらに来た瞬間に勝負を着ける!」
「わかった。一発で決めてやる!!」
ガイアは踏みしめる大地に掌を向ける。パワードとの戦いもあってか苦戦することは目に見えていたのでガイアはなるべく早くケリをつけようとしていた。
「「ガイアソーーード!!」」
地面を割り現れた剣をガイアが抜き取るとヘルメスの通信が聞こえた。
「兄さん!任せたよ!!」
「任せろヘルメス!!!」
博物館で会ったがドラッグについてはわからないことばかりだ。一撃で倒せるか……。いや、勝てるのだろうか?そんなことを思ってしまう。しかし自分には戦うことしかできない、戦って勝つことしかないと自分に言い聞かせながら恐怖を圧し殺す。
背中のブースターを使ってドラッグが現れるボルトで囲まれた空間に急ぐガイアの手にはいつも以上に力が入っていた。
「いくぞ烈!緑神剣!!」
「一文字切り!!」
突如何もない空間に巨大な黒い植物が現れた。負の感情の塊であったその葉の上には黒一色の服を着た男が立っている。ニヤリと笑った男に向けガイアは剣を振り抜く。
ガキィーーーーン!!!
ガイアの全ての力をこめて振るわれた剣は寸でのところで止められてしまった。葉に乗った男の細い指で簡単に……。
「不意打ちとは卑怯ですね~~。それでも正義の味方風情ですか~~」
ドラッグは余裕の表情で今も震える剣を掴む。
「そうしなければ倒せないと思っただけだ…!」
「それはどうも~。では仕切り直しましょう!!」
剣を思い切り弾かれるとガイアは反動で後ずさりしてしまう。強烈な力だった。エレメンタルガイアになって渾身の力を込めたにも関わらず弾かれてしまった一撃にガイアも烈も驚き以上に恐怖があった。
「効いてない!?」
「いや!まだだ!」
ガイアはさらに剣を叩き込む。自らの恐怖を絶ち斬るように、しかし恐怖は一向に斬れようとしない
だがそうしているうちに植物から何本もの触手が襲い掛かってきた。ガイアは最初の触手を左手でつかみ、右手の剣で切り落とした。
左手の触手を振り回し後から来た触手2本の軌道をずらすとその2本も立て続けに切り落とした。
そうやってどうにか触手の猛攻を防いでいたガイアだが、突然目の前に大きな葉が舞ってきて視界を奪われてしまった。急いで振り払うが目の前には触手が迫ってきていた。
「しまっ!!がぁあっ!!」
触手の攻撃をまともに受けてしまい、後ろに跳ね飛ばされてしまった。
「ぐ……」
烈の声が中から聞こえるがそれにすぐに答えることができないほど痛んでしまった体を起こすとドラッグは葉の上でニヤニヤとこちらを眺めていた。
「油断大敵ですよ~~」
「まだだ……!!」
「そうやって無駄な努力はやめてくださいますか?私はパワードのようなバカとは違うんですよ~」
ドラッグが合図を出すと触手がさらに襲いかかってくる。縦横無尽に狂う触手をなんとか防ぐがだんだんと体に当たる本数が増えてくる。
「ほらほら~~。もう終わりですか~~」
「くっ!!」
苦しむガイアを見てドラッグは興奮していた。体を震わせ今にも自分から飛び出して来そうなほど前屈みになっていた。
「ライノミサイル!!」
突然胸のサイの口からミサイルが放たれた。それは襲い来る触手を置き去りにしてドラッグに向けてまっすぐ飛んでいった。
「は?」
素っ頓狂な声を出したドラッグの体にミサイルが直撃した。それによって植物も動きを止め、ガイアは片膝をついた。黒煙が上がるなか人影はまだ見えない。
「やったか……!?」
そうなればいいと願うがそんな事は絶対なく黒煙の中からドラッグが現れた。
「なにがだ……?」
現れたドラッグはボロボロの姿をしていた。防御もままならなかったのだ、当たり前である。しかし痛みを感じさせる素振りもなく俯いた顔の下で口が小さく開かれた。
その様子に驚いたガイアが距離をとろうと立ち上がったその時である。
「ナァニィガァダァーーーーーーー!!!」
突如目の前に現れたドラッグの拳がガイアの頬に突き刺さった横に“落ちる”ように大地を削りながら吹き飛ぶガイアは何とか体を倒すまいと踏ん張り止まった。
「がぁ!!だ、大丈夫か烈!?」
「な、なんとか・・・」
今の一撃でガイアの顔を覆っていた兜の一部が破壊され中のガイアの顔を少し見えてしまっていた。遠くではドラッグが怒りに体を震わせて拳を強く握っていた。
「なにがやっただ……。お前は今何をしたのかわかっているのか……?お前が一番嫌いであろう兵器で攻撃したんだぞ……。お前は自らが生み出した私たちをまた兵器で破壊しようとしているのか?お前は何様だ!!神にでもなったつもりか!機械人形が!!!」
叫ぶドラッグの目には灰色の涙が浮かんでいた。
「私は……元々薬だ……。ドラッグ…薬物ではない……。何が危険なんだ!!!人を狂わすだと!?笑わせる!!つらい日常から解放してやってるんだ!!機械人形、お前は病に苦しむ人間に苦しんで死ねというのか!?私がいなければ病という重荷から解放されない…。それがわからないのか!!」
ドラッグは薬という意味だ。では薬と聞けばみんなは何を思うだろう?風邪を引いたときに飲む錠剤、飲むのが大変な粉タイプ、注射で一気に体に送るタイプ、種類は色々あれどそれは人の悪いところを治すものであった。ではクスリ(・・・)、苦しむ人に最後の安らぎをもたらす物、これは……
「……すまない。お前の言っていることはわかる」
ガイアはフラフラと立ち上がりながら答えた。
「お前は薬だ。だがそれは諸刃の剣だったんだ。”病”ならまだしも“日常”から解放されたい人間が増えすぎてしまった……。そんなお前は結果的にそんな姿になってしまった。しかし私はそんなお前を救う!どんなことをしてもとは言わないが、今度こそお前を正しく導いてみせる!」
「フザケルナ!!!」
激怒したドラッグの姿はみるみる形を変えていく。
「人間がいる限りこの連鎖は変わらない!!私はいつでも悪なんだ……。日常を狂わす、それが私の罪だ!!……もういい。お前を殺してまた前世と同じように……。“今”を忘れる世の中に!!!」
黒い服がビリビリと破れ中から藁人形のような体が姿を見せる。植物の繊維が筋肉のようにびっしりと体を支え、固く結ばれたそれには新品のグローブのように音を立てる。
「お前には安らぎは与えない。苦しみを与える!このお前の力を中和する花粉で……。地上の人間たちと同じように!!」
黒い植物からまた一つ実が落下した。それを目にも止まらぬ速さでドラッグは受けとめガイアの方を見て笑った。
「やばいぞガイア!離れろ!!」
「遅い!!!!」
烈が叫ぶのと同時に目の前に現れたドラッグの手をガイアは避けることができなかった。ただドラッグの目のなかにある黒い輝きしか見ることができなかった。
「くらえ!そして苦しんで死ね!!」
ドラッグの手から放たれた実はガイアの目の前で破裂し、ピンクの粉が広がった。その瞬間ガイアの目はパチパチと点滅し震える体はガクつきながら地面に体を預けていく。
「ガイア!!」
「烈、私が絶対守る!しんぱ…い、す…る…な……。」
「ガイア!しっかりしろ!ガイアぁ!!」
烈の周りは徐々に暗くなっていく。黒い球体に包み込まれていくようだ。烈はそれでもガイアを呼び、友を探した。外では瞳に光が消えたガイアの目の前でドラッグが高笑いをして自分の勝利を確信していた……。
次回予告
???「やばいじゃねーか兄貴!!」
ガイア「まだ出てくるんじゃない!お前の出番は次の次だ。」
???「はぁ!?まだかよ・・・。俺が行けば瞬殺だぜ?」
ヘルメス「ボクの見せ場があるんだから邪魔しないで!!」
???「べつにいらねぇし。」
ヘルメス「ガァーーーーン!!でもお兄ちゃん負けない!!次回「飛翔せよ!鳥人合体!」
???「じゃあもうちょっと寝てるわ・・。」
ヘルメス「サバサバしてる!お兄ちゃん傷つく!!」