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第3話 ③

運航技術博物館


子供から大人まで楽しめる通称「のりもの博物館」


そこに展示されているのは日本で作られた人や物を運ぶ為に作られた陸海空の乗り物で、その中には戦闘機、駆逐艦も含まれていた。


アースによって争いが抑止されていた世界だが、技術の発展は少なからず争いによるものがあるのも事実だった。船にしても飛行機にしても最初の目的はどうあれ、争いは有機物と無機物の生産性を逆行させるのだ。


アースはこの技術を密かに人に伝え、その良心を信じた結果が今の世の中になっている。良心というは少し違うと言うものもいるかもしれないが……


烈は人工島で大きな面積を占めるその博物館を訪れた訳だがそこでガイアにとって運命的な出逢いが待っていたのだった。


「これだ……」


博物館に来て間もない時だった。車輌という事で陸のコーナーを廻っていた時にその車はあった。


白い車体だったが波をモチーフにしているのだろうか、サイドに緑のペイントが施してある。


今は珍しいリトラクタブのライト、スポーツカーらしい流線型のボディは後輪駆動の典型というべき形をしていた。


「烈、これだ……」


目を奪われていたガイアに安心した烈は自分の腹が急激に減るのを感じていた。


「ガイア、何か食べていいか?腹減っちまった」


そう言うと近くにあった喫茶コーナーに向かった。


休日らしい親子連れの多いこんな平和な日に、少し場違いだろうかと思いつつホットドッグを買った烈は椅子に座りガイアが気に入ったその車を見ていた。


確かにカッコよかった。車にあまり興味がなかった烈でも他の車にとは違った。


これが変形してロボットになる……、そこはまだ想像の範囲外だった。


食べ終えた烈はもう一度車に近づいたがそこで大切な事に気付いた。


「あれ、これってどうやってもらうんだ?」


展示物である以上高校生風情買えるものでもなく、かといってEBの事を話すわけにはいかない。


困った烈は獅子神に電話をしてみることのした。


『獅子神だ。あぁ赤兎君、どうしたのかね?』


「すいません獅子神さん、実はガイアの体を見つけたんですけど……」


『おぉそれはよかったじゃないか!』


「それが……のりもの博物館の展示物なんです……」


『ん、いいんじゃないか?』


「えっと……これって勝手にもらっていいんですか?」


『あぁ!すまないすまない。そこは私が運営してるんだ!だから大丈夫だよ』


そう、この運航技術博物館は獅子神財閥が運営している施設だったのだ。


安心した烈がガイアにその事を伝えると、とても喜んでいた。


『とりあえず今日は戻ってくれ……ちょっと待ってくれ!』


突然獅子神の声が厳しくなり周りでアラームが鳴っているのが聞こえた。


『赤兎君!今うちの人工衛星が破壊された!直前の映像には戦車らしき影が見えたが詳しくは不明だ、気をつけてくれ!!』


その直後大きな音とともに地面が揺れた。地震ではなく何かがぶつかったような衝撃。


身を屈めた烈が音のした方を向くとそこには巨大な人型戦車ロボットがその巨体を大地に沈めていた。


それを見た者は訳もわからず逃げるのが精一杯だった。


悲鳴と泣き声、怒声が響く博物館の空気に烈も巻かれようとしたその時だった。


「烈、私をあの車に!!」


自分の右手から声が聞こえた。


「烈、急げ!!」


やっと体が動き、車のところに走り出したが同時に戦車が動き始め立ち上がって砲身をこちらに向け歩いてきた。


バゴンバゴンと歩く戦車に恐怖で足が震え、転んでしまう烈。


「いっ……てぇ……」


傷を見る暇も戦車は与えてくれない。歩を進める度に烈の中の恐怖が強くなっていった。


『赤兎君!!』


突然左手の携帯から声が聞こえる。


『君ならできる!君にしかできない事を成し遂げるんだ!』


俺にしか出来ないこと……


右手を見ると緑に輝く珠に自分の顔が映っていた。


恐怖に怯える顔。鏡で見たことがない自分の顔だった。


自分らしくない……。


いつも顔全体の筋肉を使っている自分にあるまじき硬直具合だった。


こんな俺じゃない!


そう思う自分に珠が叫んだ。


「烈!!」


その瞬間、いつもの顔が珠に映った。


立ち上がり駆け出した烈に向けて戦車は砲頭を向ける。


少年は今度こそ自分の気持ちに答えられたのかもしれない。


それを証明するために少年は友と共に新しき力へと飛び込んで叫んだ。


「「エレメンタルコネクト!!」」


戦車はその砲頭から衛星を壊したのと同じ弾を撃ち出した。


しかし空気を切り裂きガラスを割り、少年共々破壊する筈だった場所が眩い光で覆われていく。


着弾の音が聞こえない……なぜだ……


それを確認させるように光が弱まっていく場所には1体のロボットが立っていた。


白い体に緑のペイントがされているスマートで、カッコいいロボットだった。


その胸には大きな緑の宝石がキラキラと輝き、同じ色の目が戦車をじっと見据えていた。


「ガイア!」


烈がいたのは光に包まれた空間だった。ふわふわと体が浮いている感覚がある。


「大丈夫だ烈!」


緑のロボットの口からガイアの声が放たれた。


ガイアは拳を握りしめその力が自らを壊さない事を確認すると戦車に向き直り軽くジャンプすると構えをとった。


そう、このロボットこそが新たなる力。そしてさらなる力へと導く器。地球を守るため目覚めたロボットの新たなる姿!!


「「いくぞ!!」」


飛び出したガイアは一直線に戦車に向かい地面を蹴った。


それに反応した戦車も両腕をあげ一斉放射の構えをとった。


「遅い!!」


戦車が撃つよりも早く懐に飛び込んだガイアは自分に狙いをつけている頭部の砲身を思い切り殴り、その巨体を後ろに大きく飛ばした。


ズガガガ!と地面を削る戦車の頭部が爆発した。砲弾が砲身内で爆発したようだ。


両腕から放たれた砲弾もガイアの横を通りすぎ地面を削った。


「やったか?!」


倒れた戦車を見た烈の言葉に反論するように戦車は立ち上がると膝をついた。


いや脚を畳んだと言った方が言いかもしれない。脚部は地面に水平になり、その形を戦車と同様キャタピラに変形させた。


「機動力を上げたか……」


その言葉が合図のようにキャタピラを高速回転させた戦車は両腕を上げたまま突っ込んできた。


間一髪避けたガイアだったが横からの衝撃に体がよろけた。


「くっ!」


見ると戦車の両腕から煙が上がっていた。頭部よりは細い砲身からの攻撃は致命的にはならないものの、ガイアの動きを止めるには十分だった。


戦車が腰を捻ると砂を巻き上げながらキャタピラがガイアの方へと向きを変え、重厚な回転音と共に迫ってきた。


「ガイア!」


「おう!!」


ガイアは避けるのを止め迫ってくる戦車に向けて走り出した。


その間にも戦車は砲撃を止めなかったが向かってくる相手に標準も定まりにくく殆どが横へと逸れていく。


「てぇいや!!」


ガイアは跳躍し、すれ違い様の戦車の胴体へと渾身の飛び蹴りをねじ込むと、バキバキと音を立て後ろに吹き飛んでいってしまった。


迫ってきたときより速い速度で後ろに蹴り飛ばされた戦車は火花の散る自分の体を必死に動かし再びガイアへと攻撃しようとしている。


「烈、ガイアソードだ!」


「ガイアソード!!」


乗っている少年に最初の恥ずかしさは消えていた。


大地が割れ、緑の光と共に現れたのは大きさは違えどあの剣であった。


ガイアは剣を引き抜くと相手を見据え脇に構えた。


戦車が立ち上がりボロボロのキャタピラを高速回転させ最後の特攻を試みていた。すでに腕は上がっておらず体1つでガイアへと向かってきていた。


「決めるぞ烈!!」


走り出したガイアは心の中で願った。


もう戦わなくていい、お前のいる意味はまた別にある。だから安心しろ。



お前は……戦わなくていいんだ!!



「ガイア!スラァッシュ!!」


懐に飛び込んだガイアは剣を振り上げ戦車の体を斜めに両断した。


バチバチと音を立てて立つ戦車はその内部から光が溢れ、その体を包んでいった。


光の中ではその大きな車体を活かし大きな荷物を運ぶ戦車の姿と人の笑顔があった。


ガイアは剣を払い、光に包まれる戦車を背中で見送った……。


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「ちぃ!ダめダっタカ!」


自身の力の一部が消えたのを感じたパワードはその苛立ちを近くにあった冷蔵庫にぶつけると粉々にくだけ散り、山のように積んであったゴミにぶつかり爆発した。


「マァいい……。ここカラガ本番ダ!!!」


彼が立っていたのは人工島の沿岸にある廃棄物処理場。


巨大な腕に力を込めるとカタカタとゴミが震えだし1つ1つが生き物のように、仲間を集めるように固まっていった……。



次回予告

烈:良い体があってよかったな!

ガイア:あれが一目惚れというやつだな!

烈:そういえば車以外ならどんなものがよかったんだ?

ガイア:そうだな……

烈:船はどうだ?

ガイア:……変形機構が面倒だ

烈:……。

ガイア:待ってくれ!そ、そう!メンテナンスが複雑なんだよ!健太郎にも迷惑が掛かってしまうからな!!

烈:へぇ……。あ、次回予告してくれよ……

ガイア:あ、あぁ!次回「創星合体!エレメンタルガイア!!」

烈:ん?合体するのか……誰と?

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