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第3話 ガイア、新たなる力とともに!①

ここまで読んでいただいた方に感謝申し上げます。


第3話

五月病もそろそろかという頃、龍神高校生徒会室では早くも夏休みに向けた会議が行われていた。


「それでは夏休み期間中の運動場の使用についての件ですが……」


各部から集められた使用日について書かれている資料を見ながら眼鏡をかけた副会長が堂々と話す。


「今年度も野球部からの要望が多く、他の部とも被っている日が多いです。まったく、勝てないくせに練習だけはするんだね」


副会長が皮肉一杯に言う。


「えっと……それについてなんですけど、ほかの部によると野球部は練習もせず遊んでいるらしいです」


「何だって!」


控えめな会計の女子は詰め寄った副会長に驚き、同じく会計の活発そうな女子の後ろに隠れた。


「副会長知らなかったの?有名だよ。ついでに言うとグラウンドの整備もしない、道具は出しっぱなし、挙げ句にほかの部が使ってるのに割り込んで使うってさ」


活発そうな会計の女子は指をクルクルしながら何かを思い出すかのように言った。


「会長は知っていたんですか?!」


「まあ一応はね。でも今日話し合いに行くつもりだよ」


副会長の言葉に会長の翔は当然のように答えた。


「遅くなってしまったがこれで多少は練習してくれるはずだよ」


「会長さっすが!」


会計の女子の一言に翔は一枚のディスクを見せて笑顔で言った。


「なんですかそれ?」


書記の烈の代わりにまたも来ていた刀耶が尋ねた。


刀耶の代行については特に周りの気にはしておらず、どっちかと言うとこちらの方が生徒会としては落ち着くとみんなが思っていた。


「あれこそうちらが苦労して手に入れた”実録!野球部サボりの真実”なのよ!」


「苦労したよね……グスン もうあんな汗臭いところ嫌……」


会計の女子2人が互いに健闘を讃え合っている。


「本当によくやってくれた、後は僕に任せてくれ!」


「「会長!!」」


女子2人は羨望の眼差しで翔を見ていた。


「でも素直に聞き入れてくれなかったらどうするんですか?」


当然と言えば当然の刀耶の質問だったが、翔は笑顔のままディスクを机に置き腕を組んだ。


「……その場合はアレしかないだろう」


刀耶以外の3人の息を飲む音が聞こえた。


「会長、野球部は一応メインの部活ですのでやり過ぎないでください」


「わかってるよ副会長!」


子供のようににっこりと笑う翔の顔を刀耶は何処かで見たような気がした。


あっ……


気付いたときには野球部の末路が完璧に想像できた。


そう、あの顔は自分の友が本気でいく時の顔に似て……いや、そっくりだった……。


「じゃあこの議題は一旦終わろう。さて次は……」


その後、野球部は謎の活動休止に追い込まれた。


噂によると道場破りならぬホームベース破りが現れたそうだ。


そのホームベース破りは覆面を被り野球部をボコボコに(もちろん野球で)し、あるディスクを交渉材料にし2度と部活をサボらないようにしたらしい。


野球部が復活したときには真面目に練習し始め、あの日の事を”魔の覆面記念日”として後世に伝えていくのだった。


-------------


灰色の島、その地下では7つの影が徐々にその力を強めていた。


「ヤっぱりマダダっタカ!」


バゴンと地面を踏み砕き怒りをあらわにする巨大な影が1つ。


「ごめんよパワード」


その向かいで穏やかな影が頭を下げる。


「ちっ!アダムの力ガ無駄にナっちマっタ、もっタいねぇ!」


「ヤハリ シンパイ ダッタノ デハナイカ」


パワードと呼ばれた巨体が横のぐにゃぐにゃとした物体を殴るが何事もなかったように形を戻した。


「アダム、これからどうするの?」


「そうだね……」


「俺ガいく」


子供の声にアダムと呼ばれた声が考えているとパワードが口を挟んだ。


「ちょっと力試しダよ!ちょっとダしてぇヤつガいるんダ」


「じゃあ頼んだよパワード」


「おう!!マカせろ!」


ドスドスとその場を去るパワードを見送ると残りの影はいつの間にか消えていた。


灰色の島の大地にドスドスと現れた大男がいた。先程話していたパワードだ。


その姿を一言で言うと機械の体、そう表現するのが妥当だった。


生身に体に基盤が埋め込まれ、それが鼓動と呼応するように点滅している。


大きな手足は常人の3倍はありそうなほど逞しいものだったが、体が常人と変わらないためとてもバランスが悪い。


頭にいたっては顔の半分が機械で覆われ、機械の部分は人間の骨格を表現した作りになっていてまるで機械の人体模型を思い出させる作りだった。


「ひっサしぶりの外ダぜ!空気ハ……アんマりうマくねぇナ」


前世よりは環境は格段に良くなったはずだが、パワードがこう言うのはひとえにガイアのせいである。


「いラいラするぜ……俺タちハ人の心カラ生マれタ純粋ナ感情ダっタ。それガいラねぇダと…?ふザけんじゃねぇ!!」


パワードが拳を地面に叩きつけると周りの大地が粉々に砕け、その破片が空へと浮かび上がりそして雨のように再び落ちてきた。


「俺タちが必要な存在ダってのをワカラせてヤるよ!こい!!」


拳から黒いオーラが大地に流れうねり始めた。


黒い玉が現れそれがぐにゅぐにゅと形を変えると、それはまるで戦車のような形になった。


「いい形ダ!俺の力を少しヤっタ、これでアの機械人形を潰して来い!!」


戦車は変形を始めた。


キャタピラが直角に立ち上がり足になると車体からは腕が2本飛び出し拳を作った。


そしてバキバキと砲台が一段上に持ち上がると首を動かすようにぐるぐると回し、正面を向くとパワードを見下ろした。


「マずハアの宇宙に浮いているゴミを片付けろ」


戦車は雄たけびを上げ頭部の砲塔を空へと向けると足を踏ん張り発射の合図を待った。


「うてぇ!!!」


空気を震わせるパワードの声を打ち消すように響く重音が衝撃となり灰色の島を揺らした。


戦車から放たれた砲弾は黒いオーラを纏いながら雲を切り裂き、大気圏を貫き、そしてEBの人工衛星を粉々に破壊した。


空に光る花火を見てとても嬉しそうに口笛を吹くパワードは、戻ってきている自分の力を感じ両拳を打ち鳴らした。


「ヨし!!ヨくヤっタ。んじャ機械人形を潰して来い!」


戦車はグニャリと黒い玉に戻ると飛び立っていった。目的地は以前仮面の男が行った近くにある大きな博物館のような場所。


幸か不幸か丁度そこには赤い髪の少年と珠が来ていた訳だが、彼らはあるものを探しにそこを訪れていた。


そして、新たな力が彼らに与えられたのである……。

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