第0話 博士と6人の兄弟 ①
プロローグ書き直し終わりました。
こんにちは、旋風寺勇気と申します。このたびはこの作品をクリックしていただきありがとうございます。
この作品は勇者ロボット好きな作者の夢と希望が溢れる、いやダダ漏れる作品になっております
それではどうぞお楽しみください。
第0話 博士と6人の兄弟
君達は感情をもつロボットをどう思うだろうか?
アニメで見た核融合で動く空を飛ぶロボットや猫型の子守りロボットを夢見た人は数知れずいるだろう。彼らは我々人間と同じように笑って泣く。無機物であってもそこに命があることが容易にわかる。
それを実現することは人類にとって同等の相手として新たなる友を生み出す作業といっていいのである。しかし、彼らは不完全だ。作った人間ですら不完全であるように彼らもまた迷い、苦しむことがあるはずだ。
だから私はそんな彼らに正直な心を知ってもらいたいと思った。
先に言ったロボット達のように自らで考え、その力を正しく使えるような正義のロボットになってほしいと思い私は研究を始めたのだ。
大学で機械工学を学んだ私にとってロボットの体を作るのは簡単だった。しかし問題なのはその中身の方だった。
ここからは長くなるので割愛するが簡単に言うと0と1の世界に2や0.5を放り込む作業だった。曖昧な答えは日本語の特徴だと言う人もいるがどんな言語でも感情はいつでも曖昧だ。
yes noの世界こそが元来の機械の世界であってそこに感情は一才含まれない。悩んでyesと言うからそこに葛藤が生まれ、互いに感情を生み出しそれを知りたいと思えるのだ。
さてさて長くなってしまったが、私はとうとう彼を目覚めさせるまでにきたんだ。20年も掛かってしまった……。それでも早いと言う人もいるが私には長い長い20年だった。
これから目覚める彼にどんな事を教えてあげよう?
まずは今まで集めてきたロボットアニメを全部見せよう。
それについてどう思うか聞いてみたい。自分と同じロボットが感情を持ち喋る。そして自分も同じようなロボットなのだと気づく瞬間、彼はどう思うのだろう……。
教えてあげたいことは山ほどある。教えてほしいことも山ほどある。私の寿命が尽きるまで彼とたくさん話していたい。
さぁ目覚めるんだ!私の息子!!
「おはよう」
最初にモニターに映ったのは男性の顔だった。眼鏡をかけて髪はボサボサ、白衣を着た男性は優しそうな顔をしていた。
「ダレデスカ?」
モニターの中で音が反響する。
「私は名前は結城。君を作った……お父さんだ!」
モニターに映る男性の声がデータとしてマザーボードに入ってくる。
「ワタシハ?」
またモニターの中で音が広がる。そこでやっとその空間が自分のハードディスクだとわかった。
「君の名前はもう決めているんだ!聞きたいかい?」
男性の顔がモニターいっぱいに広がる。
「ガイア、この星の神様の名前だよ!いい名前でしょ!」
「ガイア…」
ハードディスクに記憶した。
「ん?気に入らなかった?」
男性の顔がまたモニターいっぱいになる。
「イエ、ダイジョウブデス」
「よかったーーー!寝ないで考えたんだ!」
男性は喜んでいた。そんなに嬉しかったのだろうか?
「そういえば目は見えてる?体も動かせるかい?」
男性に言われモニターを下に向けると、そこには鉄の部品が多く接続されていた。
「首は動くね。次は手だ!ハイ握手!」
モニターに男性の手が映って同じような形の鉄の部品を握った。
その部品に伝達信号を送ると指が動いて男性の手を握った。
体温感知……37度。
「うんうんうん!!!いいよいいよ!!」
モニターを上げると男性は笑顔を爆発させていた。
「これからゆっくり動かせるようになっていこうねガイア!!」
ワタシに話しかけているのか…。ワタシ?ワタシ……?
「ん?少し温度が上がってるね。この波形は…。そうか!悩んでいるんだね」
男性が後ろのモニターに映る波形を見ながら興味深そうにノートに目をやっている。
「ガイア落ち着いて、ゆっくりでいいんだよ。なんでも聞いてくれたらそれに答えてあげるから」
男性が私のモニター外の上の部分に触った。
体温感知…37度。
「さて、なにから話そうかな?」
手を放した男性が腕組みをして悩んだ。
その日がガイアの誕生日になった。私は興奮して眠れず、ずっとガイアと話してしまった。ガイアは頷き、時に首を傾げじっと私の話を聞いていた。その日を私は絶対に忘れない。絶対にだ!
それから2年が経った。結城とガイアは一緒に暮らすようになり家族となった。今日は息子であるガイアのお披露目会のようなものが行われていた。
パシャパシャパシャ!!
多くのカメラのフラッシュが焚かれている。
ここは結城博士が勤めている研究所にある記者会見室。
多くの取材陣とカメラはが集められていて、その全てが正面にいる結城と赤い布に包まれた子供くらいのものを物珍しく捉えていた。
「博士!今回の研究はロボット事業を新たな可能性に導くものだと思われますがどう思われていますか!!」
「博士!感情を持つロボットというのは私たち人類にどれほど有益なのでしょうか?!」
「博士はこのロボットをどの分野に生かそうとしているのでしょうか?!」
記者たちから質問が投げかけられるたび、シャッターが焚かれる。しかし結城はニコニコしながら座って記者達の質問が出切るのを待っていた。その内、不思議に思った記者たちの質問の声が止むと、結城はゆっくりと話しだした。
「みなさん、今日はお集りいただきありがとうございます。先ほどいただいた質問なのですが私は聖徳太子ではありませんので、まず見ていただいてその後に一つずつ答えようと思います」
結城は立ち上がり赤い布に手をかけた。記者たちは息をのみ、カメラを構えた手に力が入った。
「これが……私が生み出したロボット、ガイアです!」
勢いよく赤い布をはぎ取ると、そこには人間の子どもくらいのロボットが立っていた。緑を基調にしたボディにしなやかな手足、顔に至っては瞼が閉じられ本当に眠っているのではないかと錯覚するほど安らかで、滑らかな表情をしていた。
一斉にシャッターが焚かれると、金属のボディは光り、ロボットの後ろに幾重にも影を作るほど部屋が光に溢れた。結城はというとあまりの光にロボットを包んでいた布で顔を隠していた。
パシャパシャパシャパシャパシャパシャ!パシャ……パシャ。
シャッターの音が徐々に止んでいくと結城はゆっくりと顔を出し、一つ咳ばらいをした。
「で、では、自己紹介をしてもらおうと思います。ガイア」
ロボットの眼が開かれ、会場にどよめきが起こる。口がゆっくりと開くと記者たちはその声を必死で取ろうとマイクを近づけた。
これが感情を持ったロボットの声か!……そう全員が思うかと思ったがロボットから発せられたのは意外な声だった。
「ハジメマシテ、ワタシハガイアデス」
なんとも機械らしい片言の音だった。まさかの事態に記者たちは全員目を丸くした。これなら最近開発された博物館を案内するアンドロイドの方がまだ流暢に喋ることができる。
「あの…、博士これは…?」
構えた録音機に納められた最初の日本語は記者の声だった。結城はキョトンと不思議そうな顔をしたが、すぐに手を鳴らしロボットの方を向いた
「動きがなかったですね!踊ってくれガイア!」
「ハイ」
またも機械らしい音を発したロボットは所謂ロボットダンスを披露した。ウィーン ウィーン と関節が動きカクカクと体が動く。これなら最近新バージョンが発売されたペットロボットの方がずっと滑らかだ。
記者たちは頭を抱え、手に持っていた録音機やカメラを次々と下ろしていく。
来たっ!と結城は内心思うが、その気持ちを隠しぎゅっとマイクを握り堂々と話し出した。
「では質問に答えたいと思います!質問をどうぞ!!」
そう言われて手をあげる記者はもちろんいなかった。
「質問ありませんか?!ではこれにて終了したいと思います。本日はありがとうございました!」
一斉に片付けを始めた記者を止めることもせず、結城は記者たちの見送りをした。その間もガイアは指示されたロボットダンスを踊り続けている。
「ふぅ……終わった」
全員が出て行ったのを確認した結城は席に着き伸びをした。
「博士、あれでよかったのでしょうか?」
一人と一体になった部屋で突然、男性の後ろから流暢な日本語が聞こえた。
「バッチリさ!お疲れ様だったねガイア。もう楽にしていいよ」
後ろを向くとロボットダンスをしていたガイアが横に立っていて、同じくらいの目線で結城は優しく微笑んだ。
「さっガイア座りなさい。疲れただろ?」
もう一つの椅子を引き、そこにガイアを誘導する。
「緊張しました…」
ちょこんと椅子に座ったガイアを見て、普通の人なら言葉を失っただろう。あまりに自然で人の筋肉のみが表現できるあの無駄を含む動きが完璧に表現されている。いや、現にしている。
それにこの声、緊張から解き放たれたようなため息交じりの声色。それに連動するようにへの字に曲がる眉や落ちる肩。子供のような無垢な表情をつくるガイアは脚をブラブラさせた。
アンドロイドもペットロボットもガイアに比べればまだまだロボットである。先ほどの記者たちがこれを見れば逆にシャッターを切る音が聞こえなかったに違いない。
「いやーー記者会見なんて柄じゃないし適当に終わらせようと思ったらすぐ終わったよ」
「でも所長さんは大丈夫なんですか?」
「気にしなくていいよ、たぶん許してくれるし。それよりガイア、”記者会見”漢字で書いてみて」
どこから出てきたのか紙とペンを出した結城は、そこに字を書くように言った。
「えっと……。こうでこうで……」
書き順を思い出すようにゆっくりと書き始めたガイアを親の目で見守る。
ここまで近づいたんだ。彼はすでにロボットではなく我々と遜色ない人間だ。そう結城は思っていた。
パチパチパチパチ
突然後ろの方で拍手が聞こえた。驚いた結城が後ろを見るとそこには金髪の男性がいた。
「すばらしいですミスター結城。ぜひその成果を人類の為に使ってほしいですね」
「シュバルツさん…」
シュバルツと呼ばれた金髪の男性はゆっくりと近づいてくる。この男、シュバルツは某国のエージェントで、いち早く結城の研究を知りその技術を兵器に利用しようとしていた。
「何度言われてもこの技術を兵器に使わせるわけにはいきません」
結城はガイアの前に立ちふさがった。
「しかしミスター結城、この技術を使えばもう戦争で人が死ぬことはなくなるんですよ?家族が悲しむことがなくなるのです」
シュバルツが手を広げ言った。
「ロボットたちが可愛そうです」
鼻を鳴らしたシュバルツは少し考え手を鳴らした。
「そうでした!しかし彼らから悲しみの感情を取り除けば万事解決ではないですか?」
「それでは今までのロボットと同じです!!」
結城はシュバルツのそういう考え方が嫌いだった。
「そんなことないですよ!きちんとした愛国心を持って敵国に攻め入る正義の戦士!それのどこがロボットなんですか?」
「正義という言葉をそんな風に使わないでください!!」
激怒した結城を見てシュバルツは少し驚いていた。顔は笑ったままだったが。
「戦争に正義や悪はない!!それは前にも言ったはずです!私はそんなことの為にガイアを生み出したんではない!!彼には本当の正義を教える!!」
「ではミスター結城、あなたのいう正義とはなんですか?」
シュバルツが近づく。体格のいいシュバルツの威圧感に負けじと結城も近づいた。
「彼には喜び以上に悲しみを知ってほしい。悲しみを感じ、強い心をもって人々の力になってほしいと思っています。それが私の教える正義です。彼の名前はガイア、この星の神の名です。その名のとおりすべての人を見守る存在になってほしいんです!」
シュバルツと結城の視線がぶつかる。
「やれやれ……だから精神論を語る人間は嫌いなんだ。あなたはもっと実益を考えるべきだ。そのロボット一体でどれほど金が、人が動くか考えたことがあるかい?道具である以上使わなければ意味がない」
視線を外したシュバルツは背を向けて歩き出した。
「ガイアは道具じゃない。やっと本性を見せましたねシュバルツさん」
「はぁ……もういいよ。私に任せれば少しは守ってやろうかと思ったが……精々気を付けるんだね」
出ていくシュバルツをじっと見つめていると、横でガイアが立っていた。
「博士……、書けました……」
紙を広げて見せたそこには綺麗な字で”記者会見”と書かれていた。それを見て結城は我が子をぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫だよガイア、私が絶対守るよ」
シュバルツの言っていたことが少しはわかったガイアだが、今は抱きしめられていることにとても幸せな気持ちだった。
「さぁ帰ろうか!帰ってガイアの弟を起こそう!」
「はい!帰りましょう」
体を離した2人は笑顔で手を繋いで帰ろうとした。
「コォラァアアア結城!!!お前ってやつはぁああ!!」
突然後ろのドアを突き破るように入ってきたのは結城の上司で研究所の所長だった。
普通の所長像とはかけ離れたガッチリした体から繰り出された鉄拳でドアも変形してしまう。「この人絶対研究者じゃない」と日ごろ結城に思わせるほどのスーパーパワーを発揮した所長がズンズンと近づいてくる。
「記者たちが妙に帰るのが早くて聞いてみたらこの有様かぁ!!」
所長なのでガイアが人間のように振る舞えることも知っていて、今回の記者会見を用意したのも所長だった。
「しょ、所長。これには理由がありまして……」
「問答無用!!罰としてそのへにゃへにゃの体を俺のようにしてやろう!ん?これでは罰ではないな。よかったな結城、褒美だ!!特別メニューでいくぞ!」
指をボキボキと鳴らし近づいてくる所長は笑顔だが、米神には筋がビキッと力強く出ていた。あの体になるということは絶対褒美ではない、待つのは地獄のみだ。
「ヤ、ヤバイっ!!!逃げるぞガイア!!!」
結城はガイアの手を握るが、ガイアは少し他人事の顔をしていた。
「ガイアァアアア!!!お前も同罪だぞぉおお!!!」
「逃げましょう博士!!」
ようやく事態の深刻さを気づいたガイアと手を繋いで走っていく。それを所長は追いかけようとするが、一瞬その姿に目を奪われてしまった。
まるでどこかに遊びに行く予定を立てたが、当日になって寝坊してしてしまって、それでも急いで目的地に向かう父と子のように笑顔で走っていくのだ。
息子がいる所長にしてみたら少し涙が出そうなシチュエーションだが、今は違うと気持ちをハッと戻し二人を追いかけた。
どうも作者です。
やっと書き終わりました。
これが本当のプロローグだぁーーーー!!!