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#21

 翌日の朝は、七峰君と会わなかった。

 何でだろう。昨日の事、気にしてるのかな。……って、べつに会いたい訳じゃないのに。

 今日の朝は静かにすごせるかも。と思いながら階段を上がりC組の教室へ。そう思ったのが間違いだったなんて、この時はわからなかった。

 やたらC組の教室の周りが騒がしい。何事だろうか。私はイライラが隠せない様子で人混みの中へ前進する。が、そのイライラは、一瞬にして驚きに変わったのだった。周りに戯れている人達でよく見えないが、黒板に1枚の写真が貼ってあるのがわかった。そして、その写真に写っている人が誰なのかも。


「何よ……これ……」


 写真に写っているのは、紛れもない私と七峰君だった。七峰君は机に座り、私は目の前で腰を折った状態。それはつまり――昨日の、キスをした瞬間だった。

 キスをする瞬間を綺麗に撮っている。短めのキスだったから、撮った人はかなりの技術の持ち主。それに、すぐスマートフォンを取り出せて、こういう場面や騒ぎが好きな人。そして、これを朝早くから貼り出す程早起きな人が犯人―…


「……まさかっ……」


*


「やっベー、遅刻!!」


 いつもより20分も遅れて家を出てしまった。猛ダッシュでバスに乗り、バスから降り、駅内を走る。電車とバスは運よくあった為、電車の中で未里に朝一緒に行けない事を告げるLINEを打った。もう遅かったかな? と思ったけど、『大丈夫』という返事がすぐ来たので、遅かれ早かれ一息ついた。

 駅に着いた電車を駆け降り、走って駅を出る。この時間は人が少ない。やはり、いつも会う所で今日はいおりんと会わなかった。遅刻ギリギリで学校内に入り、階段を駆け上がる。すると、C組に集まっている人だかりが目に入った。取り敢えず、息を整える。だが、その暇はなかった。クラスメートの1人が、なぜか俺のもとへ駆け寄ってきた。


「翼! 早く来いよ!」

「え? ちょ、何で……」


 そいつに腕を引っ張られ、つれて来られたのはC組の教室。え、まさか、俺はこの騒ぎに関係しているのか……?

 人混みをかき分け、「あれ」と指差した方向を見る。そいつが指差した方向には――俺といおりんが写っている写真が貼られていた。しかも、昨日のキスした瞬間の。


「何だよ、あれっ……」


 何も言えないでいると、黒板周りの人混みの後ろにいたいおりんがズカズカと人混みの中へ入っていった。そして、無言且つ無表情で貼られていた写真を剥ぎ取る。「……くだらない」と呟いてその写真をビリッと破いた。そして、ゴミ箱in。俺はなんだか胸が苦しくなったので、その場を後にした。


「……よ、翼」


 トボトボ歩いていると、正面から誰かに声をかけられた。顔をあげると、そこには新の姿が。


「新……」

「後ろめたさがガンガン伝わってくるが」


「どうした?」とでも言った様子で聞いてきた。俺は新の隣に並んで重たい口を開いた。


「……キス、しちゃった。いおりんと」

「知ってる」


 新の即答且つ速答に、俺は思わず驚く。新は気にしない様子で続けた。


「C組に貼られている写真見た」

「あー、うん……」

「犯人は、蒼井雪」


 新の言葉に、「えっ!?」と聞き返す。さらっと犯人の名を口にした新は、更に続けた。


「あの写真の技術は確かに彼女だ。前、蒼井さんが撮った写真を見せてもらったけど確かにそうだ。それに、蒼井さんは常時首からスマートフォンをさげてるだろ?」


 新の完璧な推理を聞いて、「確かに……」と納得せざるを得なかった。雪ちゃんは仲の良い女の子の1人だ。そんな子が、なぜこんな事を……。

 悩んでいる俺を見て、新が徐に口を開いた。


「……遊佐さんの事を気にするのもわかるが、お前は白石さんを優先して気にするべきだぞ」

「……わかってる。わかってるけど、今は未里よりいおりんのほうが申し訳ない気持ちが大きい」

「……そうか」


 新は、少し気に食わない様子で頷いた。

 俺の言った事はあくまでも事実だ。なぜかはわからない。けど、本当にいおりんに対する申し訳ない気持ちでいっぱいだった。「何でかな~……」と俺は天井を仰いだ。

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