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#02

 翌日。

 昨日はさんざんだった。委員会があると思ったら急になくなるし、性格残念なイケメン君と会話したと思ったら殴っちゃうし。彼は怒っていないだろうか。一応謝りたいけど、もう関わりたくないな。

 そう思っていたのに―…


「よっ。遊佐ちゃん」


 彼は、私のところに来た。


「……何で来るの。ってゆーか、“遊佐ちゃん“って嫌だ」

「えっ、いいじゃん!親しい感じで」

「全く親しくないし」


 そう言って立ち去ろうとすると、「待って!」とひき止められた。


「じゃあさ、名前何ていうの?」

「伊織です」


 ……って、なに正直に名前教えてんの!!絶対もっと関わってくるって!

 彼をチラッと見ると、何かを考えていた。


「んーじゃあ……“いおりん“ね!」

「……は?」


 なにが、「じゃあ」よ。なに勝手に、人のアダ名つけてんの。ってか、私達そんなに親しくないし。“いおりん“って……アイツみたい。


「可愛いっしょ?」

「可愛くない。それに、頼んでもないし呼んでほしくもない」

「俺のことも、“翼“って呼んでね~」

「親しく見えるから嫌。ってゆーか、人の話聞いてる?」


 そう聞いても、「えー。じゃあ、何だったら呼んでくれる?」と私の言葉に対して返答してくれない。ナルシストなうえに自己チューだなんて、最低だな。


「どんなアダ名でも呼ばない。私は“七峰君“でいい。その前に、私の話聞け」


 そう言うと、「ちぇー」と残念そうにここを立ち去ろうとした。私の話、全く聞こうとしてないな。まぁ、それでも彼がここを去った事には変わらないので。私は、一気に開放感を感じた。

 のびーをしていると、遠くで見ていたと思われる麻弥が、私のところに走って来た。


「ねねね!伊織、いつから七峰君と仲良くなったの!?」

「いやいや。仲良くない」

「言葉のキャッチボールが凄かった!」

「いや、あれ全然キャッチボールできてないから。あっちからの一方的だから」


 麻弥は何かを勘違いしているようだ。困るな。

 私はこれ以上この話はしたくなかったので、「そういえば」と無理矢理話題を変えた。


「麻弥は、七峰君とはどうなの?」

「どうって……何ともないかな~」

「告白とか、しないの?」

「しないよぉ。七峰君、カノジョいるもん」


 意外。麻弥の口からこーゆー系の言葉が、さらりと出てきた。

 私はべつに、七峰君にカノジョがいる事には驚かなかった。そりゃ、いるでしょうよ。仮にも“イケメン“なんだから。私はそんな事より、カノジョがいるのに他の女子と仲良くしているのが気に食わなかった。


「……麻弥、七峰君にカノジョいるのに七峰君のことが好きなんだね」


 私はその事に関して疑問に思っていた。カノジョがいる人を好きになっても無駄じゃないのだろうか。勝ち目など、到底ないだろうし。高校二年生にもなって、未だ恋をしたことのない私には全くわからなかった。


「……うん。好きになっちゃったんだもん。好きでい続けるよ」


 ……やっぱり、私にはわからない。




 放課後。


「いーおりんっ。遊ぼーぜ!」

「嫌」


 私のところに来た彼を、即答という技で倒してやった。七峰君は、昨日と同じように倒れる。


「ちょっとは考えてくれよ~……。他の女の子なら、すぐOKしてくれるのに」

「他の女の子とは違うので」


 そう言って歩きだす私の後を、七峰君は金魚のフンのようについてきた。


「……ってゆーか、カノジョいるんでしょ?大切にしなきゃ、逃げられちゃうよ」

「俺達は、固い絆で結ばれてるんで」


「いや、愛かな?」と付け足す七峰君を殴ってやりたい。それほどにうっざい。でも、また殴るのは止めておこう。昨日は、まだ一回だから許してくれたのかもだし。


「……じゃあ、その愛とやらで結ばれているカノジョさんと遊びに行けば?」

「今日部活あるからさ~」


 ……チッ。


「……何して遊ぶの?」

「おっ。遊ぶ気になってくれたか」

「違う。ただ聞いてみただけ」

「んー。あんなコトやこんなコト?」


 七峰君は、ニヤついた顔でそう言う。うん。大体わかった。


「……カノジョとやれ」

「もうやった~」

「聞いてない」


「はぁ……」と深いため息をつく。疲れるな、これ。

「ねーぇ?」と何かを聞いてくる七峰君に、私は言い放った。


「もともと遊ぶ気なんかなかったし、私には帰ったら勉強するという用事があるので。チャラくてナルシで自己チューな人なんかに負けてらんないからね」


 そう言って、私はズカズカ歩いた。後ろから「……キミ、面白いね」と呟く声が聞こえたが、完全に無視した。

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