表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/30

#16

「最悪だ……」


 廊下で独り、ボソリと呟いた。何が最悪なのかと言うと、先程の帰りのホームルームの時間に体育祭実行委員を決める事になって、それもくじで決める事になったのだ。俺は元々くじ運が悪く、神社で引く御神籤は殆ど凶。よくて末吉と、あまりいいほうではないのだ。そんなこんなでくじを引くと、案の定、実行委員は俺になってしまったのだった。

 ブルーな気持ちで集まる教室まで足を運ぶ。するとそこには、教室のドアの前で何やら挙動不審になっているミサちゃんがいた。


「あれ、ミサちゃん?」


 俺が声をかけると、ミサちゃんは振り向いて「あっ、七峰君!」と俺のもとへ来た。


「ミサちゃんも実行委員なの?」

「そうなの! くじでアタリ引いちゃってさ~。でも知ってる人がいてよかった!」


 人見知りなミサちゃんらしい言い方だ。何だろうな、ミサちゃんは他の子とはなんか違う気がした。


「そういえば、教室入らないの?」

「あっ、あの……なんか、入っていいのかわからなくて……」


 ダメな事があるのだろうか。たぶんあれだろう。本人は言葉を変えているが、きっとこの静寂の中教室に入るのは気が引けたのだろう。だから、俺が「入っちゃお」とリードして教室に入った。

 実行委員会、案外最悪じゃないかもな。




「翼~。どうだったよ、実行委員会は?」


 実行委員会が終わり、我が教室に戻ると助と冬樹が待っていてくれた。


「いや、意外と楽しかったよ? ミサちゃんいたし」


 俺の不幸を嘲笑うようにニヤニヤしながら聞いてくる助に、俺は平然とした態度でそう返した。


「えっ、白石ちゃんいたの!?」

「おうっ。俺と同じくくじでだってさ」


 その後俺は今日の実行委員会での活動、ミサちゃんと話した事等を話した。大体の事を話終えると、助が「あんさ……」と口を開いた。


「翼って菜穂か美神ちゃんの事好きなん?」


 なぜか俺の言った事とは全く関係のない事を助は話題にしだした。突然の事で何も言えないでいると、助は「それとも、白石ちゃん?」と付け足した。


「えっ……何で? つか、急にどうした?」

「いやさ、菜穂に聞けって言われたんだよ。『私達は他の女子より喋ってるし、アダ名で呼んでくれてるし』って」

「いや、そんなつもりは……」


 本当にそんなつもりはないのだ。ただ仲良くなりたくて、下心なんてなかった。


「じゃあ、他にはいるのか?」

「そういうのは、いない……」


 仲良くなりたいっていう俺の勝手な気持ちが、勘違いを起こすなんて―…


「翼」


 冬樹に静かに名前を呼ばれ、ハッと我に返る。冬樹は俺を見つめたまま、ゆっくりと口を開いた。


「翼、もう好きでもない女子をアダ名で呼ぶのは止めろ」

「え……」

「そうやって思わせ振りな態度をとって期待させといて、後で泣かれたりされたら嫌だろ? 気持ちよくないだろ? だから、もう止めろ」


 冬樹はいつも冷静で、冬樹の言葉は頼りになる。こういう言葉も、冬樹が言う事は大抵従ったほうがいい。そうだと知っている俺は、深くゆっくり頷いた。若干、躊躇いながら。


「翼はイケメンだからな~。大変だよな~」


 やっぱり、助の言葉は嫌味に聞こえる。顔なんて今更どうしようもないんだから、しょうがないじゃないか。そう笑ってやればいいのに、そうできないのは俺の心が弱いからかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ