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#15

「翼さぁ、最近女子と仲良いよなー」


 突然ボソリと助が呟く。俺は「えー、そうかー?」と聞き返す。助の言葉に嫌味が混じっていたのかもしれないが、俺的にも最近女の子と仲良くなってきていると思っていた。


「確かにな。急にどうした?」

「好きな子でもできたんじゃん?」


 冬樹の質問に、助も被せてきた。俺は、笑って「んな訳ねーじゃん」と返す。実際にそうだから。

 そう思っていると、助があり得ない事を口にした。


「でもさ、翼ってモテるよな」


「えぇ!?」と驚かざるを得なかった。そんな話一度も聞いた事がない。それもそうだろう。つい最近まで女の子との関係に疎かったのだから。


「結構顔いいし」

「い、いやいや……そんな事ねーよ」

「あるんだって」


 冬樹まで賛成する。そう言われるのはべつに嬉しくない訳ではなかったが、そういう存在はイジメやハブりの対象となりやすい。だから、思いっきり喜ぶ事はできないのだ。


「これからもっと女子と仲良くなったら、告白とかされんじゃね?」

「え……」

「そしたら俺らがちやほやしてやんよ」


 ニヤニヤしながら俺弄りを楽しんでる2人だった。


*


「ねぇねぇー、七峰君ってカッコいいよねぇ」


 菜穂ちゃんが突然、廊下側の窓の外を眺めながら呟いた。それに対して菜穂ちゃんの隣で同じように窓の外を眺めているはなのんが「確かにぃ」と賛成する。その後も2人は、窓の外を眺めながら同じような言葉を繰り返した。たぶん廊下に七峰君がいるのだろう。私もチラリと2人の隙間から廊下を見る。……あっ、ホントにいた。


「……わっ! 七峰君こっち来るよっ」


 菜穂ちゃんが言う。七峰君、すごい人気者……と思いながら私もはなのんの隣で廊下に顔を出した。少しして、七峰君が私達の前を通る。その時菜穂ちゃんが七峰君の名前を口にすると、七峰君はこちらを向いて手を振ってきた。菜穂ちゃんとはなのんは笑顔で振り返す。私も、少し遅れて二人と同じように手を振り返した。

 七峰君はすぐ通り過ぎてしまい、また他の人にも手を振っていた。凄い。3年生になる前までは、こんな事はなかったのに。一気に人気者になったな。


「はー……。やっぱり七峰君はカッコいいねぇ」


 窓の外を眺めるのをやめた菜穂ちゃんがそう言った。はなのんも、「うんうん」と再び賛成する。


「うちらってなにげさ、七峰君と仲良くない?」

「確かにー! 私、二人に呼ばれてるアダ名で呼ばれちゃってるし!」

「私なんか、アダ名つけてくれたんだよー? 私って2人に“菜穂“って呼ばれてるからそのままかと思ったけど七峰君がつけてくれて♪ ホントヤバいーっ」

「“チガちゃん“でしょ? いいなぁ~」

「未里は?」


 突然話をふられ、「へっ?」と抜けた声が出る。ビックリした……2人のテンションについていけないから、ただ聞いてたかったのに。


「あ、私は……“ミサちゃん“だよ」

「へぇ、そっかぁ」


 2人は私の答えなんてどうでもいいとでも言ってるかのようにさらっと流す。べつに、私はそれでもいいけど。

「そういえばさぁ」と菜穂ちゃんが言い、いつの間にか話題が変わっていた事に気づき、急いで話を理解した。


「七峰君って、好きな人いるのかなぁ」

「えー? 聞いた事ないね」

「未里はある?」

「うっ、ううん。ないよ」

「もしかしてさぁー……私達の中の誰かだったり!」


 はなのんがあり得ない事を言い出した。そんな訳ないだろう。七峰君はカッコよくて、人気者になり始めているんだから。


「それホントにあるかもよー?」

「えっ、じゃあ聞いてみよーよ!」


 えっ、ホントに行くの!? と驚いていると、「未里も行くよ!」と言われ、急いで2人のあとを追いかけた。




「えーでは、今年の体育祭の実行委員を決めまーす」


 担任の先生の言葉を聞いて、もうそんな時季かぁ……となぜかため息が出てくる。ボーッとしていると、先生が皆に「くじ引いてー」と声をかけていたので、菜穂ちゃん達と一緒にくじを引く事にした。

 長い列の最後尾に並ぶ。前に並んでた人達はくじを引いては喜び、引いては喜んでいる。まだ引いたら即実行委員となる「当たり」は出ていないらしい。嫌だ、まわってきちゃう……とビクビクしていると菜穂ちゃんの番になり、はなのんの番になり、私の番になった。

 箱の中に手を入れ、直感でサッと1枚の紙を取り出す。恐る恐る四つ折りになっている紙を開く。するとそこには……「アタリ♡」と書かれていた。


「え……」

「未里? もしかして……」

「えー、実行委員は白石で決まりー」


 クラスはワァッと盛り上がる。その中私は、菜穂ちゃんとはなのんに慰められながら落ち込んでいた。

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