#01
こんにちわ!ゆらです。
三作目です!今回も、初恋ネタです。笑
でも、一作目とは全く違うストーリーですので笑
それでは、最後までお楽しみください♪
完璧なイケメンなんて、この世にはいないんだ。
「七峰君!こっち向いて!」
「今日一緒に帰ろー」
うるさい。朝からそんなにはしゃいで、午後までもつの?
そう聞きたくなるこの瞬間が、私 遊佐伊織は大嫌いだった。
さっきからあそこにいる女子達の中心で祭り上げられている彼の名は七峰翼。皆曰く“イケメン“らしく、まぁ、私から見ても確かに整っているとは思う。そんな彼の虜になる女は多いらしい。ここ、桃咲高校の朝は、いつもそんな感じだ。
でも、皆夢見すぎじゃない?世の中、“完璧なイケメン“なんて、いるはずないのよ。顔はいいとしても、性格がダメダメだったり、頭が悪かったり運動神経が悪かったりするのが普通。なのに、彼は頭脳明晰なうえに運動神経も抜群だった。……なら、残るは性格。まぁ、私なんかが彼と交わる事なんてあるはずないのだから、関係ないのだけれど。
私は独り教室へと続く階段を上っていると、頭上から聞き慣れた私の名を呼ぶ声がした。
「伊織っ、おはよ!」
そう元気よく挨拶したのは私の親友と言ってもいいほど仲の良い友達の清瀬麻弥。短めの髪を後ろでひとつに結っているのが特徴的で、私とは違って女の子らしい女の子だ。
麻弥は、あの女子達と同じように朝からはしゃぐ。
「ねぇねぇ!聞いてよ伊織!私ね、あの七峰君と話しちゃったんだー!!」
ここのような話、何回聞いただろうか。
この言葉を聞いてわかるように、麻弥も七峰君の虜の一人で。数回しか話した事ないのに、なぜ好きになったのだろうか。不思議だ。
私は、無視するのはさすがに酷いと思ったので、「へー、凄いねー」と言っておいた。ヤバい、棒読みになってたかも。
「ちょっとー。伊織、棒読みだよ?どうでもいいって思ってるでしょー」
あ、バレたか。と思い、「うん」と正直に頷く。すると麻弥は、苦笑いをした。
「ホント、伊織って正直だよねー。まぁ、そこがいいのかもだけど」
「そう……なのかな」
よくわからず、曖昧な返事をする。麻弥は、「うんうん」と頷き、すぐ表情を変えた。
「ねぇねぇ、今日って中間テストの順位発表だよね!」
そう。麻弥が言ったとおり、今日は先日行われた中間テストの順位発表の日なのだ。私は、勉強には力を入れてるほうだから、そういうのは気になって仕方がない。
「何位かなぁ。上がってるといいなぁ」
「発表って、お昼過ぎだよね?」
「うん!一緒に見に行こうね~」
麻弥の言葉に頷いた。
お昼過ぎ。私達は昼食を食べ終え、順位表が貼られている壁のところまで行く。そこには人だかりができていた。
私達は、背伸びをして自分の順位を確認する。私の名前は……あったあった。今回は、5位だった。いつもどおりだ。
私より頭の良い上位三人の名前を見る。そこにある名前もいつもどおりだった。でも、私はその中の1位のところに書かれている名前が気に食わなかった。
――七峰 翼。彼の名前は、一年生の頃からずっと同じ場所にしか書かれていない。なぜ彼は、私より勉強してなさそうなのに1位をキープし続ける事ができるのだろうか。不思議だ。ぜひ秘訣を教えてもらいたいものだが、まずその前に関わりたくないから無理だな。
「伊織っ、何位だった?」
隣で麻弥が私に問う。
「5位。麻弥は?」
「相変わらず凄いねぇ。私は26位だったよ」
500人くらいいる中での26位も、なかなか凄いと思う。麻弥も、私と同じで塾に通っているからかな。
すると突然、麻弥が「あ、そうそう」と何かを思い出したかのように言った。
「先生にね、『今日、急遽委員会の集まりがあるらしいから、遊佐に伝えといてくれ』って言われたよ」
「えー、めんどくさ……」
思わず心の声が漏れる。麻弥に、「がんばっ」と言われた。
放課後。委員会の集まりの為に残っていた私は、その集まりがなくなった事に苛立ちを隠せなかった。あると聞いていたから残っていたのに、十分程待たせて「なくなった」だなんて、酷すぎる。
私は、教科書等を鞄に詰め、席を離れようとした。その時、ドアの方から誰かの声がした。
「あのー」
「はい?」と振り返る。するとそこには、かの有名な七峰君の姿があった。彼の手には、彼の物とは思えないハンカチが握られていた。
関わらないと思っていたのに、私に何の用だろうか。
「清瀬 麻弥ちゃんって、どこにいるか知ってる?」
七峰君の口から、麻弥の名前が出てきた。麻弥が好きな、七峰君の口から。その事に私は反応し、「麻弥ですかっ!?」と声のトーンが上がってしまった。
それに反応した七峰君は、私をまじまじと見つめる。そして、思いがけない事を口にした。
「……今、声上がったね。もしかして、キミも俺のこと好き?」
「はぁ!?」
今すごく、この人の顔を殴りたい衝動に駆られた。ただでさえ、イライラしてるのに。でも本当に殴るとあれなので、言葉で殴る事にした。
「なに言ってるの!?そんなわけないでしょ!この、ナルシスト!」
そう怒鳴りつけると、七峰君は「ぐはっ……」と折れた。言い過ぎたかな?
「い、今の言葉、今までで一番グサッときた気がする……」
「アンタが悪い!」
今度は手が出てしまった。七峰君は、私に殴られた場所を擦りながら崩れ落ちる。ヤバい、今度こそやり過ぎた。
「ま……麻弥は書道部なので、3年B組にいますっ」
それだけ言い捨てて、私は荷物を持って昇降口まで走った。
関わらないって思っていたのに、話しちゃったし、殴っちゃったし。もう、私は何をやっているんだろう。ただ、わかったのは。
イケメン君の性格は、終わってました。