墓を磨くは怪奇的か
更に二日後、心地よい春風の吹く日に事件は進展した。
「……健斗、反応だ」
「お札が剥がされたって事か」
「ああ、現場に急行しよう」
*
「いや、入れよ」
「君が行きたまえ」
今回何度目だこのやり取り。
「位置情報はここなんだろ? なら墓磨きがいる可能性が高い。追い払うだけと言っても怪奇現象に対して俺は無力だ」
「…………」
「なあひとね、なんでお前はここに入りたがらないんだ?」
「……わかった。行こう」
豆田さんの墓からお札は剥がれ、地面に落ちていた。
「墓磨きはもう立ち去った後か」
「いや、墓磨きは来ていない」
「え?」
ひとねは豆田さんの墓を撫でる。その手に砂がつく。
「墓磨きが来ていたのなら汚れがある筈がない」
「でも反応してから数十分は経過しただろ? この風で砂がついたんじゃないか?」
「その可能性はない」
「え?」
ひとねが札が貼っていた場所を指す。
「ここは汚れていない。理由はわかるね?」
「そりゃあ札が貼られていたからな」
「もし墓磨きがこの札を剥がし、墓を掃除したならばここも同様に汚れていなければおかしい」
「って、事は札は誰が……」
「最終的には風、だろうけど」
札を拾い上げたひとねが裏面を見せてくる。砂で汚れており、端が少し曲がっている。
「きっかけはこの端が剥がされた事。この端を起点に風が剥がしていった」
「じゃあ誰かがそう仕込んだ?」
「ああ、そうだとも。今回の事件、墓磨きが起こしたものではない」
ひとねは札を捨て、俺を指す。
「君だろ? 健斗」