二人の甘い認識
「もぬけの殻だね」
トシの言った通り地下図書館から本などは消え去っていた。
迷い家から出るためにあの家から持ち出したシルクハットと杖を部屋の隅に置き、ひとねは部屋の扉に手をかける。
「どっかいくのか?」
「一応見回ってみようと思う。来るかい?」
「いや、晩飯の準備がある」
「がっつりしたものがいいな」
「へいへい」
ひとねの足音が遠ざかったのを確認してスマホを取り出す。
開くのはトシに渡された謎のデータ。どうやら動画ファイルのようだ。念のためイヤホンをして再生する。
画面にトシの顔が映る。
『これを見ていると言う事はワタシはもう成仏した後なのだろう……言ってみたかったんだよね、この台詞!』
軽く笑った後、トシは真面目な顔になる。
『キミたちが調査をしている間、暇だったのでキミたちの事は調べさせて貰った。ここにいるという事は怪奇現象に絡んだという事だからね、一応気になったのだよ』
今思えば俺の記憶力を知っているような発言があった。
『キミの方は解決したようだが、探偵クンの方はまだらしいね。そこで一つ忠告……と、いうよりキミがしている勘違いを正しておこうと思う』
勘違い? 未だひとねに取り憑いている不死鳥に何かおかしな点が?
トシは「一度しか言わない、このデータは消滅する」と前置きした後、一呼吸置いて口を開く。
『彼女の中に、不死鳥はもういない』
「……え?」




