酒会は皆傲慢であるか
夕方、俺とひとねは駅の近くにいた。
「……あれだね」
赤顔酒会は見覚えのある三人組だった。
中年太りと小人と細身、この前和菓子を買った時に見た赤ら顔のサラリーマン達だ。
今は赤ら顔では無い、どうやらこれから飲みにいくようだ。
ファミレスで時間を潰す事、約三時間。
三人組が赤ら顔になって飲み屋から出てくる。
「……なるほど、天狗だね」
三人組は全員鼻が長かった。どうやら俺の見間違えでは無かったようだ。
俺たちが監視する中、千鳥足で細い路地に入った三人は同時に立ち止まる。
「そろそろやりましょうか」
と、小人の男。
「うむ、ちょうどよいな」
と、中年太りの男。
二人が細身の方を見るが、細身はスマホを見ていて気づいていない様子だ。
「おい! 何をしている!」
小人が怒鳴ると細身の身体がビクッと揺れる。
「え、あ、そうですね」
と、細身の男。
三人は空を仰ぎ、目を閉じて両手を広げる。
「いざ参らん、大空へ!」
古風じみた口調で中年太りが叫ぶと三人の背中から羽が生えた。
中年太りは帽子を小人は眼鏡を細身はスマホをそれぞれ持ってジャンプする。
ジャンプした三人の身体は地面に戻る事なく、勢いよく動く羽の動きに合わせて宙を舞う。
今まで幾つかの怪奇事件を見てきたけど……ここまでハッキリと非日常が目の前に広がったのは初めてだ。
「ひとね……これはもう天狗で確定だよな」
「そうだね……いや、細身の男の鼻をよく見るんだ」
ひとねに言われて舞う三人を目で追う。
他の二人に比べて細身の鼻は短い気がする。普通の人と比べれば長いのだが天狗には見えないくらいの長さだ。
「天狗は慢心の権化、おごり高ぶる者に起こる怪奇現象だ」
「……何が言いたいんだ?」
「君はあの三人全員がおごり高ぶる者、傲慢に見えるかい?」
ひとねに言われて考える。
中年太りはいかにも偉い立場にいそうな態度、特におごり高ぶる者の多い立ち位置の人間だろう。
小人はどうだ? 中年太りに対しては下手に出ているが細身に対しては上から接している。下の者にはおごり高ぶる者に見えるだろう。
ならば最後、細身はどうだ?
中年太りより、小人より下の立場であろう細身におごり高ぶる様子はあったか?
少なくとも俺はそんな姿を見ていない。
「強いて言うなら……細身は違うように感じる」
俺の答えを聞いて、ひとねは満足そうに頷く。
「私もそう思う。もちろん小さい男のように下の立場の者に対してはおごり高ぶるのかもしれない」
「しかし、だ」とひとねは付け加える。
「不明な点がある以上、私は処方する事ができない」
と、言うことは……
「調査するって事か」
「ま、そういう事だね」




