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鼻の長い赤ら顔

「まいどありー」

 学校帰り、ひとねに頼まれた和菓子を買ってカバンに入れる。

 偏食漠の事で色々あったが、俺とひとねの関係は全くと言っていいほど変わっていない。

 変わったといえば俺が地下図書館に毎日行っている事と……ひとねが甘味をくれるくらいだ。

 変わらない。それが今の俺にとってはありがたい。

「さて、和菓子は買った」

 ひとねは俺にもくれると言っていたけど……ここ最近甘味ばかりだからしょっぱい物が恋しくなってきた。

 駅の近くを通ると赤ら顔のサラリーマン三人組が千鳥足で歩いている。何故か皆日本人にしては鼻が長い気がする。

 一人は中年太りでひたすら笑い、もう一人の小人のような人もニヤニヤと笑っている。

 しかし最後、細身の人は二人の話を聞いている素振りを見せながらも、どこか上の空だ。右手をポケットに入れ、モゾモゾと動かしている。

 それに気づいた中年太りが細身の右手を勢いよく持ち上がる。

 ポケットから飛び出した手からスマートフォンが落ちる。

「おっと……なんだぁ、彼女かぁ?」

 上手くキャッチした小人がからかいながら細身にスマートフォンを渡す。

「違いますよ……」

「おー! 隅に置けないなぁ!」

「違いますって……」

 話を聞いていない中年太りの言葉に細身は溜息をつき、スマートフォンをポケットにしまう。

「……ん?」

 ポケットから手を出した細身の顔を見る。あれ? あんまり鼻長く無い?

 他の二人は長めの鼻……見間違いだったか?

 偏食漠がいなくなった事で記憶力も落ちたのだろうか。

「ま、いっか」

 俺は呟いていつもの場所、ひとねの待つ地下図書館に向かった。

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