地下図書館のシャーロック
「うん、美味しい!」
俺が買ってきた大福を頬張りながらひとねは目を輝かせた。
ひとねの妖怪存在説を聞いてから数日。今だ足取りがおぼつかないひとねの為に俺はこの地下図書館に通っていた。
「なあ、ここの入り口はマンホールしか無いのか?」
町の端にあるとはいえ毎回マンホールを開けて入るのは人の目が気になってしょうがない。
ひとねは手についた粉を服で拭いて
「あるよ、入り口」
「……え」
あるのかよ!
「私が知っているだけでも数十個はある」
「……後で教えろ」
「わかった」
ひとねと出会って約一週間。もう少し何か教えて欲しい。わからない事だらけだ。
とりあえずはこの一週間でずっと考えていた疑問からだ。
「なあ、ひとね」
「何かしら?」
「お前は長い間……数年寝ていたんだよな?」
「そうよ」
ならば……
「いつも俺に預ける金は何処から出ているんだよ」
「金庫だけど」
「え? 何? お前大金持ちなの?」
「どうかしらね?」
もしかしてご令嬢? 結構可愛い容姿だしあり得なくは無い。
「因みに家は金持ちじゃ無かったわ」
「……そうかい」
ひとねはお茶を飲んで
「怪事件の一週間って知ってる?」
「ん? まあ一応」
ここら辺では有名な逸話だ。
昔この町で起こった数々の怪事件。
馬車を引いていた馬が突然死んだり川が干上がったり。そんな怪事件を一週間で解決した主人公の物語。だったかな
「まさか……お前」
いやいやあれは逸話だ。どうかしている。
「私はその主人公では無いわ」
「…………」
おいおい。
「でもその逸話を少し借りて商売をしていたの。 怪事件を解決する探偵としてね」
「探偵……」
「別に何かを推理するわけじゃないよ、その怪事件にあった資料をこの本棚から探し出して対処法を教えるだけ」
ひとねは一枚の紙を棚から取り出した。
「これが結構儲かってね……そろそろ再開しようと思うんだ」
ひとねから紙を受け取る。
『復活・怪事件限定のシャーロックホームズ!』
とてつもなく胡散臭い。
「こんなので商売成り立つのか?」
「まあね。この町は何故か怪事件が多いからね……君、この紙をコピーして神社などに配ってくれ」
「……何でだよ」
ひとねは少し考える。このタイミングで何考えてんだよ
「明日頼む予定の高級シュークリーム、奢ろうか」
「……是非やろう」
上から目線が気になるが高いシュークリームの為だ。
男子高校生は欲望に忠実で、大体が金欠なのである。