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臓器無き者は

 ひとねの宣言から数十分たったくらいに、両方の赤ん坊が一斉に泣き出した。

「オムツを替えて見てくれ」

 ひとねの指示を受け、女性が慣れた手つきで片方の赤ん坊のオムツを替える。

 もう一方の赤ん坊のオムツを取ろうとしたところで女性がひとねに顔を向けた。

「あの……こっちも変えますか?」

 ひとねはまたニヤリと笑う

「いや、その必要は無い」

 ひとねはポケットからお札を取り出しながらオムツを取られかけている赤ん坊に近づく。

 少し赤ん坊を見た後に頷き、躊躇いなくお札を腹部に貼り付けた。

「こっちが……偽物だ」


 *


「仕事の後の甘味は格別だね」

「まあ……そうかもな」

 女性からお礼を受けとり、ひとねが直行したのは近くのケーキバイキングだった。

 どうやら朝に機嫌がよかったのはこういう事らしい。

「どうしたんだい? 私の奢りだけど今回はバイキングだ、遠慮する必要は無いよ」

「いや……うーん」

 俺は苦笑いを浮かべて珈琲をすする。甘い物は嫌いじゃないが、空きっ腹に甘い物というのは気が進まない。

 昼飯を食べていないから空きっ腹なのはひとねも同じはずなのだが……

「甘い、美味い! 幸せだ」

 ケーキを食べながらウインナー珈琲を飲んでいる。空きっ腹に甘い物と甘い飲み物とは……わけがわからない。

「そんなに食べたら腹を壊すぞ」

「逆に君は食べなきゃいけないんじゃないか?」

 ひとねはフォークをくるりと回して続ける。

「昼ごはんを食べていないんだから君の腹はあのカラスのような状態だと思うけどね」

「まあ、そうだが……」

 そう、カラス。ぺんたちころおやしの腹の状態は今の俺と同じような感じだった。

 空きっ腹。いや、寧ろ腹の中に何も無い。そんな状態だった。

 だから片方の赤ん坊。偽物のぺんたちころおやしは排泄が出来なかったのだ。

 泣くのは真似できる。手足を動かすのも真似出来る。しかし何も無い体の中から物を出すのまでは真似が出来ない。

 だからひとねはどちらが偽物かというのを判断できた。そういう事だ。


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