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カラスの問題提起

「ぺんたちころおやし、アイヌ辺りに伝わるカラスの妖怪だ……という知識は今回必要無いね。今回必要な事だけ話そう」

 ひとねは部屋の中で一人立ち上がり、得意げに話す。

 こいつの知識は相当なもの……かとも思ったが、出発直前に何か資料を読み込んでいたのを見ているから驚きはない。

「ぺんたちころおやしがどちらかというのが分かれば解決は早い、私が対処する」

「どうやってだよ」

 ひとねはポケットから数枚の札を出した。

「この札を貼ってやればいい。低級妖怪なんてこれで一発だ」

「……ならどちらにも貼ればいいじゃないか」

「残念ながら赤ちゃんはこの札に耐えられない。死にはしないが強い後遺症が残ってしまう」

「見分ける方法はあるのか?」

「記憶と動きで判断するんだけど……今回は不可能だ」

「じゃあどうすれば……」

 女性が少し大きい声を出す。ひとねは女性を抑えて口を開く

「ぺんたちころおやしは対象の姿形をコピーする。しかし中身、臓器などのコピーには時間がかかる」

「じゃあ完全な人間ってわけでは無いのか」

「そうだね、カラスの幽霊が乗り移ったと考えてくれて問題は無いだろう」

「なるほど」

 だからひとねは歩けるかを聞いたのか。人間とは違う足をもつカラスでは人間の足を上手く扱えない。そういう事だ。

「つまり」とひとねは今までの事を纏めて言い直す。

「今回の条件で赤ちゃんに出来てカラスに出来ない事。それを見つければいいんだ」

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