ドッペルベビー
女性に案内されて、俺たちはある部屋にいた。
どうやら子供部屋みたいで赤ん坊向けのおもちゃなどが沢山置いてある。
部屋の奥には大きな赤ん坊用ベッド。そこに赤ん坊が寝ており、その赤ん坊が今回の問題だと言う。
そこを除きこむと……
「こ……これは」
「ふむ……」
俺が驚きひとねが予想通りと言わんばかりに真顔で頷く。
大きな赤ん坊用のベッド、そこには赤ん坊が二人寝ていたのだ。
そっくりなんてレベルじゃない。どこにも差異が無い。
「双子……じゃないんですよね」
俺の言葉に女性が頷く。
「はい、私の子は一人だけです」
ひとねが俺の肩を少し強めに叩く。
「なに余計な事を聞いているんだい? 今回の案件は自己像幻視だと言っただろう?」
「わかってるけどさ……」
聞くのと実際に見るのは違う。少し驚いたんだ。
「まあ、それはいい。さて、いつからこうなったか……いや、こうなる少し前の状況から説明して貰ってもいいかな?」
「えっと……前からですか?」
女性は赤ん坊をチラチラと見ながら聞く。このまま放っておいて大丈夫なのかが心配なのだろう。
『自分のドッペルゲンガーを見た物は近々死ぬ』なんてのは有名な話だ。
ひとねもそれを察したのだろう。赤ん坊を一目見てから口を開く。
「すぐに死ぬなんて事は無い。今日一日は大丈夫だろう」
それに、とひとねは続ける。
「事件の前から話を聞いておいた方が、判断が確実になる」




