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魔界転生 ~伝説の勇者が下級魔物に転生したらどうするよ?~  作者: 黒姫双葉
第一章 魔界転生?!~鬼牙族の少女、リリー~    (幼少期編)
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3

そして―――――。

この日、俺は三歳になった。


「おめでとう、リリー」

「これでお前も外に出れるな!おめでとう、だ!」

「おー、ありがとう!」


鬼牙(オーガ)族のしきたりとして、子供は自衛のできる三歳まで家の外に出してはいけないんだと。


家の外に出たことがないからわからないけど、俺の場合は二歳で立ち上がることとしゃべることができるようになった。

それを驚いた様子もないからきっとこれが鬼牙族にとっては普通なんだろうな。


二歳から三歳までの開いた時間は言葉を教えたりする、っていう期間らしい。

俺はその間に魔界語を学んでしゃべれるようになった。


もともとの人類語と月狼(ワービースト)語、森精(エルフ)語も普通にしゃべれるから、四か国語を使えるようになったってことだな。

まったく、子供の脳の柔らかさというものは侮れんな。

生前の俺が月狼語と森精語を覚えるのに三年くらいかかったというのに、今の俺は一年で魔界語を完璧に覚えてしまった。


ちなみに、算数とか歴史とかは特に教えないようだ。

もう一つ意外なのは、魔法に関しても何も教えないっていうことだった。

何でだろうな?


そうそう、二歳になって半年くらいしてから俺にも角が生えてきた。

ギージに比べたらとても小さい、額の両側に生えた二本の角。

鬼牙族の証だ。


少し複雑な気持ちで角を触っていると、

「どうした、角が小さいから悩んでるのか?ハッハッハ、なに、リリーは女の子だから仕方ないさ!」

といわれた。


女の子( ・ ・ ・ )だから( ・ ・ ・ )……?

どういうことだ?




それはさておき、初めての()だ。

待ちに待った、二年ぶりの外のセカイ。


「じゃあ、お袋、ギージ。行ってきます」

「おう、いって来い」

「気をつけるんですよ?事故とかにも、魔獣とかにも…」


はは、メイは心配性だな。


「お袋、大丈夫だよ」

「…そう、ですね。いってらっしゃい、リリー」


木戸を開け、俺は外へと歩き出す―――。





――――――――目を見開いた。

見渡す限りの、赤黒い大地。

ギージの家よりも小さな、しかし構造は同じ建物。

そして、それの周りにたくさんいる、俺と同じ種族――鬼牙族の人々。


「ここが、魔界……。ここが、鬼牙族の村………!!」

あぁ、まったく。

二回目の生は新しいことが多いなぁ!





ふむ。

とりあえずは、村を散策してみることにする。

「へぇ、店は屋台形式になってるのか」

家とは別に、木組みの屋台があってそのに品物がある。

服屋に武器屋。

あ、本屋もあるな。


本屋にはいってみることにした。


「本屋の屋台はでっかいなぁ…」

食べ物屋とか服屋の屋台は、人間界の祭りでも出るような屋台の規模なのだが、本屋の屋台はその三倍くらいはある。



「……お嬢さん、こんなところに何か用かな?」

背後から気配がぬっと現れる。

「あぁ、少し歴史が知りたくてな」

まぁ、”見切り”で読めてたから特に驚きはしなかったけどな。

振り向くと、小柄な鬼牙族の女が立っていた。


「歴史?これまた変なことに興味を持つお嬢さんだねぇ」

そう言うと、煙管を取り出し煙草を吸い始める女の人。


「ふぅ……。お嬢さん、村長の所の?」

「え?あぁ、そうだけど」

なんだ、俺はそんなに知れ渡ってんのか?


「そう。見ない顔だからそうじゃないかと思ってたんだよ」

あぁ、そう言うこと。

新参者で見たことないってことから推測しただけか。


さて、本でも探そうかな。


「ん?ええと、これが戦闘指南書で、これが医術書か」

全部魔界語で書かれている。

当然だわな、ここは魔界だし。


にしても、全然歴史書が見当たらない。

なんでだ?


「歴史に関してはここにはないよ」

「なに?」


「鬼牙族ってのは戦争によく駆り出されるからね。言い方は悪いが、よく死ぬ種族なのさ。集落の男が全滅なんてこともよくある。だれしも、この村でだれが何人死んだかなんて記したくはないだろう?」

「確かに、それは一理あるな」


「それに、鬼牙族は魔界の各地に集落がある。そこごとに歴史書を作ってたら歴史がごちゃごちゃになっちまう。だからつくらないのさ」

まあ、一か所だけ歴史を記す村もあるけどね、と付け加えた。


「ほう、そうなのか。……しかし、困ったな。これでは歴史が調べられない」

今の俺は転生した身。

転生前からどのくらいの月日が経ったのか、どういう風に世界が動いたのか知っておきたかったのだが……。


「なあ、お嬢さん。あんた名前は?」

「む?リ……リリーだ」

いかんいかん。

まだ前の名前を名乗ろうとしてしまう。

流石に、たった二年じゃ慣れないな。


「そうか。ならばリリー」

彼女は煙管を置き、俺の方に歩いてきた。


「歴史に関して、私が教えてやろう」

「それは…」

ありがたい。

ありがたいが、この小柄な女性がどれほどの知識を持っているのだろうか?


「おや、私では力不足かな?これでもこの村一番の年寄りなんだがね」

「え?」


この、小柄な女性が?


「はは、ギージの坊やは赤ん坊に常識を教えなかったようだな。なに、それも踏まえて教えてやろう」

おいおい、村長(ギージ)を坊やよばわりかい。

これは、嘘はなさそうだな。

言動からも、気配(・ ・)からも。


なにせ、見切ってまで確認したのだから。


「じゃあ、お願いしてもいいか?」

「あぁ、いいとも。しかし、今日は初めて外に出たのだろう?勉強は明日からにするから、今はもう少し外を見てきた方がいい」

「了解した。……あぁ、そう言えばまだ大事なことを訊いてなかった」


教えを乞う立場である以上、ちゃんと知っておかねばならないこともあるな。

まぁ、まずひとつは。

「あなたの名前は?」


「ランダという。みなからは長老、と呼ばれているよ」


長老ランダ、か。

「では、また明日」

俺のその言葉に、彼女は手を振って答えた。

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