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まず、視界に飛び込んできたのは鮮烈なる赤だった。
「おぉ、かわいい女の子だな」
「えぇ。きっと美人になるわ」
といっても、赤いのはごつい方だけであり、ごつくない方――女の方は、俺が知っている常識的な身体つきに照らし合わせても随分と小柄で、色白だった。
「どれ、抱いてみるかね」
「あぁ、あなた。まだ首が据わってないんですから。あまり乱暴にしないでください」
「む、ぅ。すまん」
く、首が据わる……?
このフレーズは昔聞いたことがあるような……。
あぁ、そうだ。
ウェルスを拾ったばかりのころだ。
そのころはまだウェルスは生後一か月だったからまだ首が据わっていなかったのだ。
その時は町や騎士団の仲間にいろいろ話を聞いて大変だった……て、そんなことはどうでもよい。
まて、今この女の方は俺に対しなんといった……?
首が据わってない、だと……?
「まったく、赤ん坊っていうのはこういう風に抱くんですよ」
そう言いながら、俺はふわりと持ち上げられて……。
そして、その結果、俺は凄まじいものを見ることになった。
昔ながらの、金属を磨いただけの鏡。
そこに映っている、小さな鬼牙族の赤ん坊の姿の俺。
……おーけー。
状況は理解した。
(征王が下級魔物に転生って、どういうことだァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
心のなかでそう叫ぶしかなかった……。