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魔物。
おおよそ人類の敵とされる者たち。
七人の魔王に率いられる、強靭な肉体と特殊な生態を持ち、魔界に住む知的生命体たち。
人間。
獣より進化した唯一の個体、総体。
積み重ねた技術と、叡智を武器に闘うものたち。
魔界。
”界”といっても、実際に世界が分かれてるわけではなく、ただ大陸が違うだけだ。
その大陸も、今ではとても近くにある。
最早数えきれないほど昔から人間と魔物は敵対してきたという。
その理由は領土問題から生存競争、単純な快楽主義や天敵の駆除などという様々な理由があった。
さて、その魔界であるが。
魔界の全貌を把握しているのは魔王だけであり、その大陸の形状は人類も、同族たる魔物たちですら知らない。
そんな大陸の中間部にあたるその場所。
その場所に鬼牙族の村があった。
鬼牙族。
大柄な体と、それに見合った怪力を備える、魔界に住む魔物の一種族。
とはいえ、鬼牙族は魔法適性(どれだけ大気のマナと親和性が高いか……つまり、魔法がどれだけ使えるか)も少なく、怪力も結局はその躰で生み出すことができるあたりまえの力しか出せないので、魔界に住む魔物のランクとしては最下級に数えられる。
話を戻すが、その鬼牙族の村。
その村の近くに、とある奇妙な岩がある。
それは、数十年前に人類側の勇者の一人が倒れた場所であり、その勇者の遺物がそのまま放置されている場所である。
まぁ、魔界の軍勢にしてみれば歓喜のしるしであり、人類からしてみれば苦い記憶だろう。
勇者の武器、というものは、選ばれたものにしか触れられないという、ある意味、一種の呪いの側面を持っている。
もちろん、その勇者が倒れ、落とし放置された武器も例外ではない。
勇者が持った聖剣、”デュランダル”。
不滅の剣として知られ、持ち主の思うがままの姿になる魔法の剣。
それこそが、奇妙な岩の正体である。
やがて……。
選ばれたものしか抜けないその剣を。
抜き放ったものが現れる。
――――――その者こそ――――――――――――――