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紳士とスラム街と受付の少女

まあ、成り立ちというか主人公が死んだ時の話はまたいずれ。

多分プロローグのつもりの一章が終わったら書くと思う。

と言っても、あらすじ以上の内容はほとんど無いんだけどね。

(株)異界運送社『黒鴉』と書かれた看板が付けられた建物は、広く一般では王都と呼ばれる都市の端、俗にスラム街と呼ばれる区画の一角に存在していた。

ちなみに看板の裏には、(株)と書いておけば会社に見える~フッシギーとと書かれているのだが、それはこの店の店主と、お店のカウンターに据え付けられた椅子の上にちょこんと礼儀正しく座り込んでいる少女と、店主の傍をいつもポテポテと歩いている相棒のお子様しか知らない事実であるのは、どうでもいい話だ。


まあ、建物自体スラム街にあることもあり、強風が吹けば吹き飛ぶのではないかというレベルのボロボロの外見をしているのだが、ウエスタン風の両開きの扉を越えて中を覗いて見ると、其処は案外綺麗な内装をしていることがわかる。


荒い木目調のカウンター、というか木をぶった切ってカウンターに見えるように組んだ物が扉をくぐったすぐ目の前に置かれており、其処の後ろでは綺麗にくみ上げられカンナで棘一本まで滑らかに削り取られた大きめの椅子に座る少女がいる。


カウンターの上を見れば、来客名簿と書かれた以外は白紙の紙切れと、商品目録と書かれた分厚い装丁の本が一冊置かれているのがわかるだろう。


まあ、お店の中に置かれているのは以上であり、先ほどの言をひっくり返すようだが、あくまでスラム街ではきれいというだけの話で、俗に言う殺風景と云うのがこの店の真実である。



その今にも吹き飛びそうなお店に、騎士風の出で立ちをした男を二人引き連れた紳士風の初老の男が訪れたのは、もうすぐお昼の鐘が町中に響き渡るそんな時間のことだった。




「失礼する。

ここはカラスと呼ばれているお店で間違いないだろうか?」


本来ならこの男、お店の前に馬車を横付けにして颯爽と現れる心積もりだったのだろう。


しかし、このお店はスラム街の奥地に存在しており、元々まともな区画整理などされていないスラム街は、道などあって無いような物だ。

下手をすれば道路だと思って居た場所が次の日には沢山の浮浪者達の仮宿になって塞がっていた、というのが笑い話であり事実として受け入れられているような場所なのだ。

そんな場所の馬車で進入などすれば、迷った挙句下手をすれば馬車を捨て無ければスラム街を出られないだろうし、それ以前に馬車が入れるような道幅を維持しているところはほとんど無い。


それが、スラム街の現実であったため、初老の紳士風の男はここまで歩いてきたようだった。


事実その男額には球の汗が浮かんでおり、その口元には絹の上等そうなハンカチが当てられて、スラム街に住まう者達同じ空気を吸いたくないと云った嫌悪の念があふれ出ている。


「いらっしゃいませ。

異界運送社『黒鴉』にようこそ、本日はどんなご用向きでございますか?」


そんな、不快感丸出しの紳士に対して、カウンターの横に据え付けられた椅子に座っていた少女は、立ち上がると四十五度の完璧の礼と共に訊ねた。


「依頼を頼みたいのだが?

店主は居ないのか」


紳士は少女の礼を一瞥してから鼻で笑うと、横柄に少女に対して質問を投げつける。

その姿は紳士で有っても、自分より下の者に対しいて放つその雰囲気は充分に嫌悪を感じられるものであった。

現に、お店の周りでは成り行きを見守っていたスラム街の住人達が遠巻きに見守りながら殺気を放っているのだが、厚顔無知を絵に書いたような紳士はそのことに気がついていないようだった。


後ろに金魚の糞のようにくっついている二人の騎士風の男達が、周りの殺気に当てられて顔を青ざめさせているというのにだ。


背後に控えている護衛二人が既に逃げの体勢に入っていることに気がつかずに、紳士はなお傲慢に話を進めようとする。


「ほれ、小娘。

わしは、お前に用があるわけじゃないのだ、店主を出せと言っているのだよ?

聞こえておるか?

それとも言葉が通じんのか?」


なお口元をハンカチで押さえながら、その右手に持っていたステッキを少女に突きつけるようにしながら紳士は少女に言葉を吐き捨てる。


その瞬間、店の前では二人の護衛が思わず剣を抜きかかるほどまで殺気が増大し...。


そして、波を打ったように静まりかえった。


「お待たせしました、ギルフォード・セドリック様。

店主が、今戻ったようです」


そして、それすらにも気がつくことなくなおも喋り散らそうとする、紳士―――ギルフォード・セドリック―――を制する様に、ずっと綺麗な四十五度の礼を続けていた少女は顔をあげて彼を制してから、ギルフォードに後ろを向くように促した。


突然、名を呼ばれたことに面食らったように言葉を詰まらしたギルフォードは、促されるままに後ろをふり向いて其処に立っていた少年と顔をあわすことになる。


金に縁取られた黒い鳥のマークが入った帽子にその黒い髪を隠している。

その身体は上から下まで黒いつなぎに覆われており、その肩からは何故か可愛らしい苺柄の小さなバックを釣り提げている黒目の少年。

彼の顔立ちは、どこかパッとせず姿や色合いはとても記憶に残るのに、その顔や表情はなんとも記憶しにくいそんな少年だった。


そして、何より異常なのは戸口の前にいつの間にか降り立っている、黒く巨大な翼を持った黒鳥と。

彼の隣に立っている、幼いながらも今にも跪いてしまいそうな、そんな雰囲気を持った見め麗しい幼い少女だった。


そんな異様を引き連れながら、彼は然も有り難とでも云うように不敵に笑うと。


「ようこそいらっしゃいました。

ギルフォード・セドリック様、本日は我が異界運送社『黒鴉』にどのようななご用件でございましょうか~?」


そう、ギルフォードに向かって訊ねた―――。






先ほどまで放たれていた殺気によって、うまく身動きが出来なかったために主と同じように後ろを振り向くことが出来なかった騎士の内の一人は。

先ほどから、ずっとカウンターの一部を凝視していた。

その視線の先はカウンターの上に置かれた一枚の紙切れ、先ほどまで白紙であったハズの来客名簿だった。

当たり前の話だ、其処にはいつの間にか一行文字が書かれていたのだから。



来客者名簿 ギルフォード・セドリック 以下ニ名



誰もその紙に触れていないのに、いつの間にか書かれている自らの主の名前を見て、戦慄を覚えている騎士の前では、その横顔を凝視しながら薄く冷たい笑みを浮かべる受付の少女がだけが立っていた。



感想までもらってしまったから書いてみようと思うよ。

いつまで続くかも完結できるかもわからないし、不定期だけども。

感想やお気に入りなどが入る限りは頑張ってみようと思うよ。

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