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魔王と超時空爆弾的な宅急便

なんとなく思いついたので書いて見た。

そんなお話、あまり期待せずに読んでくれたら嬉しい。

魔界を策謀の渦に落としいれ、冥界をさ迷える魂で埋め尽くし、人の世界を荒廃させし者。


―――魔王。


彼の狂気に触れた者は発狂し、植物は禍々しくその姿を変貌させ、獣達は魔物へと姿を変えた。


彼の住まう居城は魔界の奥地にあり、伝説の勇者ですら彼の元へはたどり着くことは叶わないであろうと言われている。

たとえ、たどりつけたとしても。

其処に待っているのは、城の周りを何重にも張り巡らされた深い堀と、どんな魔法も寄せ付けない厚い城壁、その門は数十トンの魔法鉱物で作られており、常軌を逸した強靭な肉体の持ち主でも開けることは出来ないであろう。


そして、いざ門をくぐることが出来たとしても、其処に待っているのは数万に及ぶ亡者の大群。

たとえ空から壁を越えることが出来ても、城壁の上には疲れを知らぬ亡者の弓兵が常時見張りを行っている。


まさに、其処は難攻不落の城塞...、のはずだった...。



つい、先ほどまでは。




「城門が正面から破られただと!」


城の最深部、幾重にも耐魔結界が張られており、壁はもちろん天上や地下からも侵入することは不可能である王座の間。

其処では、今世最強最悪と謳われている当代の魔王ラハナーク・サキシュが玉座に預けていた体重を少し浮かせたような微妙な中腰で、部下の亡者からの報告を聞いていた。


「そ、それで、敵はどのような方法で門をあけたのだ!

強力な世界魔法でもぶつけたか?それとも空間魔法で時空ごと引き裂いたのか?」


その瞳は、すべてを飲み込むような闇色を宿しており、其処には普段ほとんど浮かべることの無い、驚きと困惑の光が浮かんでいた。


魔王の疑問に答えを返そうとしている亡者も、どこか自分見たもを信じることが出来ないのか、話すべきか考えこんでいるようだ。


「速く答えい!そやつはどうやって我が居城に入ったと言うのだ、まさか、今代の勇者が現れたと言うのではあるまいな!」


まだ、今代の勇者が現れたという情報は魔王も聞いていない。

が、過去の前例を見ても、いきなり勇者が現れたことは確かにあったので、今回の侵入者も勇者なのかもしれないと魔王は考えたのだが...。


彼の疑問に対して返って来た返答は予想外なものだった。


「いんやぁ~、そんな大層なもんじゃないぜ。

門は普通に押し開けて来ただけだし~、俺様自信は勇者なんてヤローとは無縁だしな~」


どこか、間延びした男の声が玉座の間扉を押し開けながら聞こえて来たのだ。

軽薄さと嘲りを含んだような声を魔王の部下が出すはずも無く、それが部外者のものであることがすぐわかる。

魔王が、驚いたように玉座の間の門に目を向けると。

魔族に良く有る黒髪と黒目の少年が其処に立っていた。


顔立ちは、幼い平凡な少年のそれであり、服装は上下が繋がった黒いつなぎを着ている。

頭には金で縁取られた黒い鳥のマークがついた帽子を被っており、何故か肩から幼い少女が好みそうな苺柄の小さな可愛らしいをバックを釣り提げている。


「な...、お主どこから入ったと言うのだ!」


驚くところは沢山あるが、やはりまずは其処だった。

門から玉座のままでは一本道、確かにまっすぐ歩いてくれば簡単にたどり着くはできるが。


...できるのだが、門と玉座の間の廊下には数万の亡者の群れがいたはずなのだが。


「いや~、真正面から来ただけなんだが、まっすぐ着たら目的地に着けるなんて優しい配慮だぜ~」


いや、そういうことではなくて...。


「門からここまで、数万位も及ぶ亡者の群れがいたはずなのだが...」


其処まで考えて、城全体に魔王は自らの思念を飛ばす、それに返ってくる筈の数万の思念は先ほどまで目の前で報告を行っていた亡者一つのみであった。


「ま、まさか!この城すべてを浄化したと言うのかぁ!」


亡者はすべて魔王の意思に繋がっており、思念を飛ばせば必ず亡者達から返事が返ってくる筈だった。

そう、数万の意思が...返ってくる筈だったのだ。


「お主、何者だ...?」


ゆらりと玉座の上から立ち上がると、魔王はものすごい量のオーラを撒き散らしながら立ち上がる。

地の底から噴出続ける大量をオーラは、巨大な亡者の姿を形どりながら現れる。


「返答によっては...、いや、いかなる返答をしようともただでは済まさん!!!」


その目には、憎悪を超えて殺意が浮かんでいる。


「おお~、こわこわ

そんな睨まなくても、名乗りくらいはするで~」


そういってから、黒髪の少年はだるそうに体勢を直してからサッと敬礼の姿勢を取りながら名乗りをあげる。


「毎度さまです~。

わたくし、|(株)異界運送社『黒鴉』(いかいうんそうしゃからす)の社長、桜井さくらい朱鷺杜ときとともうします~」


「はぁ?いかいうんそう?...からす?」


魔王にとってはよくわからない行動をいきなり取られて、魔王は虚をつかれたのか毒気が抜かれたように呆けて立ち尽くしてしまう。


「はい、今回は、お仕事の依頼が有りまして。

魔王様にお届け物を持ってきたしだいで有ります~」


相変わらず軽薄さがにじみ出るような間延びした口調ではあるが、その立ち振る舞いには先ほどまでは見ることも感じることも出来なかった仕事人の気風を纏わせている。


「お持ちしたのは、農家の小作人ゴローさんから注文の有りましたこちらの小包になります~」


明らかにどこかおかしいのだが、その肩からかけた可愛らしい苺柄のバックから三十センチ四方の小包を取り出すと、先ほどまでとは違う、テキパキとした歩きかたで魔王の傍まで歩み寄ってから朱鷺杜はウムを言わさずに魔王の両手にその小包を持たせた。


「こちらの方に、受け取りのサインをお願いいたします~」


頑体の良い魔王にとっては両の手のひらにすっぽりと収まる小さな箱を、呆気に取られたまま受け取ってしまった魔王に、今度はズズイと一枚の紙切れを押し付けてサインを要求する朱鷺杜。


「あ、ああ、ここでいいのか」


魔王も、思わずッといった感じでいわれるがままに受け取りの欄にラハナーク・サキシュとサインをしてしまった。


「はい、ありがとうございます。それではこちらが、請求書。

そして、こちらが商品の目録に成りますのでお時間がある時にでも目を通しておいて戴けると助かります~」


いっきにまくし立てる朱鷺杜に、魔王は目を白黒させている。

今までここまで強引なセールスを受けたことが無かったのか、何故か請求書まで押し付けられていること気がついていない。


「それでは~、ありがとうございました」


気がついてないのをいいことに、ビシッと九十度の綺麗な礼をしてから。

朱鷺杜はくるりと回れ右を実行、呆けている魔王を置き去りにして朱鷺杜は玉座の間から退出していった。


そして、玉座の扉が閉じられたとき。


「って!ちょっと待てぇぇ!!!

追え!亡者よ今すぐあいつを捕まえてこい!」


はっと、意識の戻った魔王の命令により、立ち尽くしていた最後の亡者が扉に向かって走り出す羽目となたのだった。


ダダダダダダダダ!バタン


急いで駆け出した亡者が、思いっきり玉座の間の扉を開く。

その先には、城門まで人っ子一人いない静寂の世界が広がっていた。


「くっ、逃げ足の速い奴め...

はあ、まあ良い、いまさら追いかけてもムダだろう...」


静寂の廊下を確認してから、魔王はため息をつきながら玉座に座り込んだ。

その顔には焦燥感と、疲れが浮かんでいる。


「それで...、結局あ奴は何を置いていったのだ」


玉座の肘掛に肘をついて魔王はうなだれる。

その手には、朱鷺杜が残していた請求書と商品の目録が握られている。


疲れた表情でサッとその用紙に目を通しながら、だんだんと魔王の表情が青ざめていく。


「おい!ちょっと待てあのやろうなんてもの.........!!」


其処まで言って、魔王の言葉は途切れた...。




『請求書 1,000,000,000,000G 又は「魔王の命」


商品目録 魔王に惚れてしまった娘を持つ嫉妬狂いの父ジロー殿より。


        ―――時限式超時空爆弾入り小包の贈り物でございます

          

                            (株)異界運送社『黒鴉』社長』




半径数百メートルを包み込む閃光と共に、魔王の要塞は時空の狭間に落ちていった。

魔王の悲痛な叫びと共に―――。


その直前、城からものすごいスピードで飛び出していった一羽の大ガラスのみを残して。



読みたいという人がいれば続きを書くかもしれない。

でも多分不定期。

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