股間請負人
世の中には、表の仕事と裏の仕事がある。表の仕事なら、履歴書に書ける。裏の仕事は、履歴書に書いてはいけない。そして俺の仕事は、その裏の中のさらに裏に位置するものであった。今日も俺は依頼を受けて、ある現場で仕事に取り掛かっていた。
「くっ...、やめろっ!やめてくれっ」ターゲットの男性が叫ぶ。だが俺はやめない。さらに俺の手の動きは速くなっていった。シュッシュッ。リズミカルに旋律を奏でるように上下に動く手。たまにわざと動きを遅らせて、じらす感じにする。そのたびごとに男性は体をビクッ、ビクッと震わせる。そろそろ絶頂が近いようだ。そばでビデオカメラを構えてる助手の目も、キラキラと輝き始めた。「所長、イクんですね?もうすぐ!」「あ..ああ」俺はちょっととまどいながらそれに答えた。イク瞬間を逃すまいと、助手のカメラを持つ手に力がこもる。大事なのはイク時の顔と、噴出した白い液体のコラボだ。同時に画面に収めなくてはいけない。絶望の中に、あまりの気持ち良さ、同じ男性に絶頂させられたという背徳感と屈辱の入り混じった何とも言えない複雑な表情。そこが大事なのである。
「うわあああっ」ターゲットの男性は叫んだ。限界まで我慢を続けたせいか、白濁液の噴出量が半端ではない。何度もビクッビクッと体を震わせながら、男性はがっくりと体をうなだれた。カシャッ。動画と共に、静止画も最高の一枚が撮れたらしい。ハアハア言いながら、助手の子は目をうるうるとさせていた。「所長、この写真一枚貰っても良いですか..?」「..まあ、個人的に使うぶんにはな」「あざっす!!」
「さて...」俺は男性の前に立った。「分かっているな..?」「くっ..」この男は、ある大企業の幹部だ。新しい密売のルートを独自に開発し、それを会社に見つからずに販売し自社に大ダメージを与えたのだ。社長から怒りを買ったこの男を社会的に抹殺して欲しいと、俺のところに依頼が来たのである。もちろん俺は殺し屋ではない。そういった暴力的な仕事には全く興味がない。ならどうするか?つまり『社会的に恥をかかせてターゲットの人生を抹殺』するのである。
それはどういうことか?一言でいえば、当人にとって死ぬ程恥ずかしい写真、動画を撮影し、それを世間にバラ撒くことなのである。それは何でも良い。不倫の現場や、悪事を働いた時の現場の写真、決定的な証拠の映った言い逃れの出来ない画像などだ。それをネットやSNS、果てはテレビなどにもタレこんで全国に報道させる。基本的に暴力で脅して悪事を止めさせるような真似はしない。依頼を受けた時点で、すでにバラ撒くことまでがセットになった条件で、ターゲットがどんなに反省しても回避されることはない。
ただ当人が清廉潔白で、悪事の写真が全く出ない場合もある。そういった時のみ、こういった男性にとっては死ぬ程恥ずかしいであろう『射精の瞬間』の画像を使用するのだ。最初は自慰行為の現場を撮ろうともしたが、難易度も高く、高齢者の場合はそういった行為もほとんどしないため時間節約のために強制的に射精させる今回のような行為に打って出るのである。まあこの方が、遥かに屈辱度は高い。男に性器をしごかれ、それを他人に見られるのだから。ほとんどの場合、バラ撒かれた後は、ターゲットは姿を消す。世捨て人になってしまうことが多いのだ。
その場にがっくりと膝を落としている男を後に、我々はその場を後にした。助手はうっとりとしながら、その写真を見つめ、「この白濁液の放物線が、たまらないですよね!」などと一人で興奮していた。あと俺に対し、グッと小さなガッツポーズをして、「ナイス手コキでした、ごちそうさまです!」と言った。
彼女は俺の助手であり、三年程前から一緒に仕事をしていた。最初の頃は地味な仕事のためか、いつも退屈そうにしていたが、ある時今回のような強制射精を余儀なくさせるような依頼が入り、撮影役として連れて行ったら見事豹変。いや、本性を現したと言って良いのか、「良いっ良いっ、良いですよ?所長、ブラボー!!」などと言って見事なカメラワークで、写真を撮りまくっていた。どうやら彼女の部屋には、ボーイズラブの同人誌がうず高く積まれているらしい。
それから何日か後、一本の電話が入った。何でも俺に名指しで、どうしても依頼を受けてもらいたいとのことらしい。珍しい。ほとんどの場合は仲介役、間接的にあの社長の弱みを暴露して欲しいなどといった距離を置いたターゲットへの攻撃の依頼となるのだが、今回は直接会って当人自身から頼みがあるらしい。俺は少しいぶかしんだが、高額の依頼という事もあり指定された現場に助手と共に向かった。そこは閑静なオフィスビルの一角で、名前を聞けば誰もが知るような企業だった。
「ようこそ..」部屋の奥の窓のそばにいた男が静かに言った。こちらを振り向くと、どこかで見たような感じがした。「あなたは..?」「ふふっ、まだ分からないのかね?」そう言った瞬間、俺はふと思い出した。あれは約1年前のことだ。場所は工場の跡地、この男が企業で不手際を起こし、そのため男の上司から俺に依頼が来て、弱みを見つけて社会的に抹殺して欲しいとのことだった。だが、どんなに調べても、脅しに使えそうな汚点が出てこなかったため、やむなくいつもの強制射精をさせて、全世界に生配信するシステムに変更した時のことだった。
「ぐっ!、ぐっ!、おのれっ!!」俺に肉棒をしごかれながら必死に耐えるその男。両腕は背中越しに縛られていて身動きが取れない。すごい形相でにらみつけるその男。そばでカメラを構えている助手の手にも力が篭る。「なぜだっ、なぜこんな真似をする!?」「悪いな、これも仕事だ。あんたは失敗した。だからここらで引いて欲しいとの上司からのお達しというわけさ」俺はそう言って、カリに指をかけた。「あうっ!?」男は体をビクッと震わせ、虚空を見上げた。俺の手コキのテクニックはプロ級になっていたといって良い。何しろその現場を動画に収め、場合によっては生配信しなくてはならない。時間がかかっては駄目なのである。運営に削除されるまでのわずかな時間。そこが大事なのである。そのため、俺はどんなに枯れ果てた不能の男性であっても、10分以内に絶頂させられる技量が身に付いていた。具体的な技としては、カリを指の甲の部分でさすって刺激、親指と中指でプニプ二と亀頭をつまむ、他にも玉袋をギューッと握り、圧力を掛けて射精管の部分を刺激など、数え上げればキリがない。
その時は、周りには彼の部下もいた。皆縛られている。あえて行為を見せるようにしておいた。屈辱度を上げるために。皆何が起きているのか分からないらしく、怯えていた。だが段々と状況が掴めてきたらしく、「社長!!」「ああっ、何でこんなことに..」部下たちの嘆く声が聞こえる。しかし俺の手は止まらない。シュッシュッ。モニュッモニュッ。だがまだ絶頂には遠いらしく、男には余裕があった。「お、覚えてろ、必ずこの屈辱の借りは..、ひゃんっ」などと強がっていた。だが、段々とその余裕もなくなっていった。「くうっ!!ひぐっ、ぐっ..、おっ」耐える声にも焦りの焦燥が滲み出てきたことが分かる。そしてついに、「おいっ!、お前たち、目を閉じてろっ!!絶対にこっちを見るんじゃない!!いいなっ!」と叫んだ。部下たちは一体なぜそんなことを社長が言ったのかすぐには理解できなかった。だが俺にはよく分かった。『こいつはもうすぐ絶頂する』要するにイク瞬間を部下に見られたくなかっただけだ。だから部下たちに目をそむけさせようとした。カメラを構えてる助手も、その辺の機敏は良く分かっているらしく、こちらに向かってVサインをしていた。「ぎ、業務命令だっ、向こうを向けっ!!」と叫び、虚空を仰いだ。それが最後の男の言葉だった。『何が業務命令なんだか..』。俺は吹き出して、最後の一コキをした。
「は~い皆さん、今から白濁液が噴出しますよ~!?注目ゥ~」と俺は言い、皆が一番見えやすく、そしてカメラにもその瞬間が映りやすい角度を計算して、竿の部分に力を込め、絶頂させた。グビュッ、グビュッ、グピュルルッ。ゆるやかな放物線を描き、男のまっしろしろすけは虚空に消えていった。信じられないような量だ。やはり限界まで我慢していた分、放出量も桁違いに上がってしまったのだろう。部下たちも茫然自失し、今目の前で行われた光景が信じられないという風体であった。残されて、うなだれて動かなくなった全精気を絞られた男と、意気消沈した部下たちを後にし、俺たちはその場を離れた。
それが約一年前のことだった。その現場にいた社長が今まさに目の前にいる。だが、あの時のような弱々しい感じは一切なく、威厳に満ちた精気溢れる顔をしていた。あの後、この社長は傷心を癒すために、『探さないで下さい』と書置きを残し、旅に出たと聞いた。いつの間に戻って来たんだ?
「フッフッフッ、探しましたよ?お久しぶりですね」不敵に笑う男。全身には覇気がみなぎっていた。「..どういうことだ?アンタが俺の依頼人だって?まさかあの時の復讐でもするつもりで俺を呼んだのか?」さらに笑う男。「そんなことはしない。私はただ君に挑戦状を叩きつけたかっただけなのだから」「挑戦状?どういうことだ?」俺は困惑した。「あれ以来、私は自分の恥ずかしい画像が全世界に出回ってしまい、居てもたってもいられなくなった。仕事も追われ、私に出資をしたいという企業もなくなった。家族も去った。君と私の上司の思い通りに私は社会的に抹殺されたと言って良い。..だが新たに別の感情が生まれてきたのを感じた」「別の感情?」「そうだ、今までは表の世界でルールに従ってビジネスをしてきた。だが、それには限界があることも分かっていた。正攻法だけでは、通用しないことも。そして君に敗れて全てを失って分かった。ルールを逸脱した方がより儲かるし、自分の資質も生かせることも知った」「だから今は感謝すらしているのだよ?」彼はそう言って目を細めた。確かに今助手に調べてもらった資料によると、男は裏の世界でかなりの財を築き、ポジションもかなりの高位にいる。
「ならどうしてここに俺を呼んだ?まさかお礼を言いたかったわけでもあるまい」「フフッ、それはだな..」こちらを振り向くと様子が少しおかしい。よく見ると妙に股間がふくらんでいる。「正々堂々と君に勝負を挑みたくなったからだ」姿勢を正し、近づいて来る様子に俺は焦りを感じた。「どういうことだ?一体何がしたい?」「..君は一定時間以内に、必ずどんな男性でも絶頂させられるらしいな?その道のプロだと。ならば私がそれに耐え、その規定の制限時間を超えたらどうなる?」「...」「君のプロとしての面子は丸つぶれではないかね?」確かに、生配信中に全世界の人間に見られている状態で、もし失敗したら、俺の仕事の力量を疑われる。もしかしたら仕事の依頼もなくなるかもしれない。
「それが目的か?俺を潰すために」「これでも私は君を高く評価しているのだよ?だからこそ正々堂々と勝負してみたくなっただけだ」ずっとそばで黙って聞いていた助手が叫んだ。「やりましょうよ!ここで受けなきゃプロの名が泣きます。あの人はずっと所長を目標に頑張ってきたんですよ?男の心意気ってものを感じます。それに応えるべきです」と進言してきた。だが彼女の顔は興奮で真っ赤になり、目をらんらんと輝かせ、今にも失神しそうな程に輝いていた。俺は、ため息をついた。
こうして、俺たちの妙なバトルは始まった。制限時間は10分。その間に男が絶頂したら俺の勝ち。失敗したら俺の負け。単純なルールだ。そして、俺は男の陰部をしごき始めようとした。いつもながら億劫な瞬間だ。以前のルールに乗っ取り、男を後ろ手に縄で体を縛った。別に今回は縛る必要はないのだが、前回の借りを返すという意味で、フェアな同じ状況を作ろうとしたのである。俺は陰茎を握り、上下に動かし、リズミカルにしごき始めた。だが全く快感を感じている気配がなく、それどころか我慢汁すら全然出てこない。これはおかしい。奴もこのくらいの刺激では退屈だと言わんばかりにあくびまでしている。どういうことだ?この男はこんなに刺激に強かったか?以前の時は、確かあっという間に絶頂したはずだ。それは覚えている。
その男は言った。「私は想像を絶するトレーニングをしてきたのだよ?その程度では、私には蚊程にも感じない」そう言って男は虚空を見上げた。「この一年私は早漏を直すために、ありとあらゆるトレーニングをしてきた。例えば自慰行為の際に寸止め100回、そしてそのままイカずに就寝。これを繰り返した。これがどれだけきついかは、君も男性なら分かるだろう?他にも亜鉛サプリを毎日規定量の5倍摂取。その後、自慰行為中あと一コキで射精する直前の状態で止め、街を歩き、平然と買い物。職場での定例会議への出席の際、射精を最初の一回の『グピュッ』で止め、残りを睾丸に溜め置きながら、何食わぬ顔でそのままプレゼンを完了などなど。血も滲むような鍛え方をしてきたのだ」俺はよく分からないが唖然として聞いていた。助手は「ワオッ!」と叫び、興奮気味に拍手までして、コクンコクンとうなずいていた。「全ては君に勝つためにだ」「...!!」俺はそれを聞いて体が熱くなった。特訓の意味は良く分からなかったが、俺との勝負のために、そこまで徹底的に鍛え上げてきたことだけは何となく分かる、ならそれに答えなければプロじゃない。
「所長、口を使いましょう!!」助手が言った。「なっ!?」「そうでしょう、このままではジリ貧です。何時間やってもこの人は絶頂しません。負けてしまいますよ。ならば次のステップを模索する時なのではないでしょうか?」と、もっともらしい提案をしてきた。『口って、まさか俺にアレをやれと?』俺は身震いした。そこまでは流石にできない。というより嫌だ。しかし助手は息遣いが荒くなり、口元からはよだれが垂れてきていた。『こいつ、ただ俺の口の奉仕を見たいだけなんじゃ..?』。そう思い、閉口した。だがすぐ考えを改め、「それじゃ駄目なんだ。この男は以前の借りを返そうとしている。ならば俺はあの時のように、手コキだけで勝負して絶頂させないと真の勝利とはいえないんだ」。俺がそう言うと、しぶしぶながら助手も納得した。だが、なぜかその男も少しがっかりしたような表情を浮かべたのは気のせいだっただろうか?
「仕方ない..」俺はとっておきの秘技を繰り出すことにした。別に封印していたわけではない。ただ単に抵抗があってやりたくなかっただけだ。だがこの状況は、もうなりふりかまってはいられない。俺は指を男のアナルに突っ込んだ。男の体かビクッと跳ねる。困惑した表情で俺を見る。「ヒッ、な、何を..?」「ふふっ、すぐ分かるさ」指を穴の奥の方まで入れ、そのまま直腸を進んで行った。そしてあるふくらみを見つけた。そしてそこを刺激した。「はうっ...!!!」男の体が反った。
ビクンッ、ビクンッ。男の体が跳ね上がった。そう、そこは前立腺という器管である。男性にとっては何のために存在するか分からないような箇所らしいが、元々は女性の子宮に当るらしく、『快感を非常に享受しやすい場所』とでも言えば分かりやすいか。そこを突きまくった。男は自我を忘れ、能動的に本能のままに動いた。もはや、動く官能マシン、電気アンマのようなものだ。
かつてない快感が男の体を駆け巡る。目はうつろに虚空を見つめたまま、おぼろげに何かをつぶやきながら、小刻みに体を震わせていた。体は小刻みに震え、時たまビクンッと足を跳ね上げる。そろそろ限界が近い。制限時間まではまだ十分にある。誰がどう見てもこの男の絶頂は間近と感じた。「くっ、くそっ、俺はまた..また負けるのか...?」男はそうつぶやいた。
そして観念したのか、今までぐっと堪えていた手は力なくだらんと垂れ、顔にも諦めに似た穏やかな表情が現れた。「ここまで頑張ったんだ、仕方ない..。相手が強大だっただけだ、俺はよくやった..」自分で自分に言い聞かせるようにして、男はもはやこれまでという菩薩にも似た表情でうなだれた。陰茎はビクビクと震え、玉袋はギュッと締まり、もはや絶頂寸前。あと一コキも耐えられないと見えたその瞬間であった。
俺は体勢を変えた。男の後ろに回りこみ、片手を陰茎の下部の尿道付近に、もう一方の手をアナルの辺りに添えた。「なっ、何を!?」驚いた男が叫んだ。そこから指で尿道を圧迫し。噴出寸前の白濁液を強制的に止める。そしてゆっくりと押し戻す。そう、こねるようにして元々あった睾丸の部分まで精液を押し戻すのだ。「はうっ!?」男は信じられないという体でこちらを睨んだ。『なぜイカせてくれない?どうしてこの最高の瞬間を奪う!?』といった表情だ。もはや勝負はどうでも良いらしい。そして俺は次のステップに移る。もう一方の手を添えた部分、アナルから指を挿入し、内部の精液が通る場所、射精管を押さえ付けたのだ。「ヒィッ!!」男が叫ぶ。それはそうだろう。この部分は最も快感を感じる神経が集中している。射精寸前だった快感が、さらに強まるような感じだ。だが白濁液は出ない。ある意味拷問だ。
男は思った。『くっ..、まさか私を弄んでいるのか..?、なぶりものにして?』だがそうではないことは、すぐ分かった。これは真剣勝負だ。俺の真摯な態度。絶対に手を抜かず、任務は命がけで成功させるという仕事への熱意。そういったものが分かっているからこそ、勝負を持ちかけたのだ。決して敗者をなぶりものなどはしない。そういう紳士協定のようなものが、二人の間にはあった。
『ならばなぜ..?はっ..、もしかしたら..』男の脳裏にはある考えが浮かんだ。『完全勝利...?』これはどういうことか?つまりは、以前のように無理やり強制射精させても、屈辱からまたリベンジを誓ったり、両者のわだかまりは絶対といって溶けない。これでは無限ループだ。完全に屈服させなければ意味がないのである。だからこそ、今あと一コキで勝てる瞬間を捨ててでも、その先にあるもっと大きな終着点、絶対服従ともいえる快感のとりこにさせる必要性があったのである。
俺の指にさらに力がこもる。リズミカルに振動を打つような旋律を奏でる動き。男の体はもう自我がないかのごとく、ビクンビクンと跳ね上がる。『そろそろかな』俺は射精管を刺激していた指の位置をずらし、前立腺へと移動させた。「あうっっ!!!」男は虚空を見上げた。これ程の快感は未だかつて味わったことがない。前代未聞の体が震える程の感覚だ。それもそのはず。これが俗に言う『ドライオーガズム』というやつだ。やり方は至って単純。射精寸前に、尿道圧迫で精液を止め、その辺りを行ったり来たりさせてから、射精を止めたままにして前立腺を刺激だ。絶頂の快感を感じたままで、精液が出ないため快感を感じていられる時間が圧倒的に長くなるのである。
そして、今までうなだれていた男の手がよろよろと少しずつ上がって行った。そして、ある動作をし始めた。それは『ピースサイン』だ。顔は苦悶の表情で引きつってはいるが、顔には笑顔をたたえ、そしてよだれしたたる舌も出しながら、カメラ目線で答えた。いわゆるこれが、『アへ顔ダブルピース』というやつだ。快感が絶頂に達すると、恥も外聞も捨てて、自分の意思ではどうにもならず、その『しぐさ』をしてしまうらしい。「あうっ、あうっ」気持ち良すぎて、目の焦点が合っていない。
ドライオーガズムは精液の噴射がない。だがその代わりに我慢汁の出が凄い。もう溢れんばかりにドクドクと出てきている。もしかしたら1リットルは出ているかもしれないという量だ。だが本人はまだ勝負のつもりでいるのか、「あっ、くっ、しゃ、射精だけは..、くぅっ」などと息巻いている。だが、これだけの醜態を全国に生で晒してるのだ。今更射精を見せなかったことが何になるのであろう?とも考えた。恐らく、もう思考回路はマヒしているために、ただ精液の噴出を耐えることだけが今の自分に出来る精一杯、耐えることが唯一の希望、そこににしがみついているといった感じなのだろうか。助手のカメラワークは冴え渡り、様々な角度からその決定的瞬間を撮り収めていた。
男が「もっと、もっと!!」と言うたびに、俺は『もしかしたらこいつ、以前の快感が忘れられなくて、ただ単に俺に手コキしてもらいたかっただけなんじゃ..?』とも思ったが、今は深く考えないようにしていた。そして最後の仕上げに入る。やはりどんなに気持ち良くさせようとも、白濁液の噴射がなければ終わらない。動画や写真で残す以上、目に見えた絶頂の瞬間の証拠が必要なのだ。ドライオーガズムはイキ具合が傍目には分かりにくいのが欠点である。だから俺は尿道をふさいでいたその指をどけて、そのマグマのように溜まりに溜まりまくった白濁液を噴出させたのだ。その後のことはもはや言うまでもない。男は、この世の快楽の全てを手に入れたかのように、全知全能の神であるかのごとくのアルカイック・スマイルと共に、俺の頭の上を越えるかのごとくの大量の白濁液を天に向かって吐き出したのであった。
ビュルルルルッ、グピュルルルッ、ビュビュッ、ドクッドクッ。普通であれば、脈動が4、5回もあれば絶頂は終了するはずであるのだが、今回のその男のソレは、その数倍、いや数十倍もの鳴動と共に、終わることのないロンドのごとくに脈打つことを止めなかった。放心と満足感の入り混じった表情を浮かべ、男は頭を垂れた。「やりましたね、所長..、男と男の最高の真剣勝負、目一杯堪能..いや、記録させてもらいました!グッジョブ、最高っス。じゅるり..」そう言った助手は、もはや自分の足では立ってられない程に足が痙攣し、早く家に帰って今までしたためた記録を、マイファイルに収めたくて仕方がない風体であった。俺は、やれやれと首を振りながら、今回の激闘を振り返りながら、その場を後にしようとした。しかし。
後ろには人がいた。一人じゃない、何人もいる。誰だ?この男の仲間か?驚きいぶかしんでいると、男が「くっくっくっ」と笑った。「まさか・・」「そのまさかさ」近づいて来るその男たちは皆警察手帳を持っていた。どうやら俺たちはハメられたらしい。最初から少しおかしいとは思っていた。真剣勝負と言いながらも、こちらが負けた際の罰則を何も言い出さなかったり、自分の体を縛らせたりと。
本来ならこうやって囲まれているこの状態は絶体絶命のはずではある。だが俺は妙に落ち着いていた。こちらもプロだ。いざという時の脱出経路は確保してある。とりあえずは、最初にハッタリをかます必要がある。こういうのは初っ端が肝心なのだ。「はっはっ、お前たち、それで勝ったつもりか?甘い、まだまだ甘すぎる。俺の顔を見ると良い」そして、あごの辺りに手をやって薄い張り付いているカバーのようなものを剥がす真似をした。「この顔は特殊メイクだ!」そして頭にも手をやり、「頭部にはフルウイッグ!」「そして足にはシークレットシューズ!」喉にも手をやり、「声はボイスチェンジャーだ!」「つまりは、今この場で現行犯で身柄拘束をしない限り、俺を捕まえるのは不可能となる!」と煽り、その後窓に手をやり、あらかじめ助手に指示して取り付けておいたロープを伝って降りた。
警察というものは、基本的に相手が自分たちに恐れを抱き、怯んでいるものと思考しているものだ。だからそこを逆手に取って、大胆不敵に逆に大仰に振舞うことが、対警察官の対処法であるということは、長年の経験で分かっていた。もちろん今言った変装も実際には施してはいる。やはり非合法の仕事だ、監視カメラも怖い。というより、手コキで全世界に生配信されるのだ。素顔を晒すわけにもいくまい。それが一番の理由かもしれないが。
しばらく逃げたが、全く誰も追いかけて来る気配がない。不審に思った俺は、一緒に逃げて来た助手をそこで待たせて、こっそりさっきの場所に戻って偵察してみた。ドアの淵から見ると、なぜか警官たちは戻って来た俺を見ようともぜず、ずっと同じ場所で何かを話し合っていた。いぶかしんだ俺は、さらに煽るべく大声で言った。「ヘイヘイッ、どうした、俺はここだ!良いか、何度でも言うぞ?この顔は特殊メイク、頭はフルウイッグ、声はボイスチェンジャー、おまけに足はシークレットシューズだ!!絶対に正体は掴ませはしない!へヘン」そう叫んだら、一人の警官がこちらに気づいたらしく、ぼそっと言った。「いや、普通に指紋。DNA鑑定で分かりますが..」「うっ、うるさい!」俺は頭に血が上ってその場から逃走した。
こういう時は、ジグザグに逃げるのが基本だ。常に横に移動することを心がけ、身を晒す時間を短くする。FPSで学んだ知識だ。ここの地形を最初に下見をしておいたのも幸いした。何しろ警官の数は多い。この幻惑させる逃避で、かなりの追っ手を減らせるはずだ、そう考えた。塀を乗り越え、壁をよじ登り、そして最後のパルクールをし終えた俺は、「よしっ、これで2.3人は減らせたはず」と思い、後ろを振り向いたが、誰もいない。一体どういうことだ?もしかして全員撒いたのか?いや、そんなはずは...。そう思って、さっきの場所を見ると、全員まだそこにいた。『...一人相撲じゃねえか』俺は恥ずかしさに俯き、その場にしゃがみ込んだ。
下半身を露出させて痙攣している依頼人の男に向かって警官の一人が言った。「では逮捕します」「はい...?」男は手錠をかけられた。「私が捕まるので..?」「脱税の容疑です」「..ですよね」そう言って、男はパトカーに連れられて行った。これは一体?もしかして、最初から俺ではなく、あの男に目星を付けて捜査をしていたってことか?調べてみると、あの男は巨額の脱税を疑われていて、かなり執拗に税務署から追い立てられていたようだった。そんな事とはつゆ知らず、俺は一人で何をやっていたんだろうと、自己嫌悪した。隣にいる助手は、もう帰宅が待ちきれないと言わんばかりに、自分のスマホにさっきの絶頂の瞬間の決定的場面を転送しまくっていた。
あれから数日が過ぎた。あの男が逮捕送検されたというニュースが入り、俺は朝食を食べながら、「壮絶な勝負だった..」とつぶやいた。実際、あの件以来、俺は少し食傷気味で、あまり仕事が手に付かなかった。特に強制射精に関わるような依頼は全て断り、通常の秘密暴露系の仕事のみに絞っていた。当然、助手は不満たらたらで、『何でですか?今は不景気で仕事を選んでいたら厳しい時代ですよ。絶対やるべきです!』と怒りをぶちまけていた。まあそれはそうなのだが、この助手の本意は別にして、仕事の幅が狭まるのは確かだ。早々に何とかする必要もある。まあ彼女もこの仕事は気にいってるらしく、絶対に辞める気はないらしい。合法的かどうかは知らないが、これだけ手コキや射精が見られるような職場は他にはまずあるまい。
しかし最近気になったのだが、どうも最近不審な電話が多い。依頼だからと現場に行ってみると、ターゲットがすでにいて、なぜかもうすでに後ろ手に縛られており、目をらんらんと輝かせていて、『早く、早く!カモ~ン』などと言ってきたり、依頼主とターゲットがなぜか同じ人物だったり。何でもあの時の配信動画を見た者が『この男は世界最高の快楽を与えられる魔法の手の持ち主』との称号を触れ回り、そしてそれが一人歩きし、何としてでも俺に手コキをしてもらいたいという依頼主が殺到してきているらしい。俺は頭痛がしてきた。たまに変な電話もかかって来て、『ハアハア、ねえ、お願い、あと一コキでイキそうなの..だから..』俺は即座に通信を切り、速攻でブロックをする。
俺はため息をつく。『なんでこんなことに..』元々裏の世界で恐れられていた俺のはずなのに。これではまるで人気者じゃないか。変な意味で。向こうで一心不乱に絶頂動画の編集作業をしている助手のキーボードの音が響く。「やれやれ、どうやらこれからも頭の痛い依頼が続きそうだ」そう言って、俺は窓のカーテンを閉めた。
(終)




