召喚と追放
いつも通りの残業からの帰り道、自分の周りが光り始める。
何か、空気が変わったかのような違和感を覚え、目を開けるとさっきまでの帰り道とはまるで違う空間にいた。ほかにも、知らない人が何人かいるのが見える。
「ここは…?」
誰かが独り言のように声を上げる。距離の感覚がなくなりそうな白い空間に自分がいるのだと思うと声をあげたくもなる。
「ここは狭間の空間。世界と世界の間にあり、世界同士を繋げる場所。」
何処からともなく、はっきりと声がする。
「あなた方は別の世界の人々から勇者として召喚されます。その際、何も力のない状態では簡単に命を落とされてはお互いに益がないでしょう。なので召喚された世界に存在する特殊能力、「スキル」をここで与えます。」
突然死にかねない場所に送られることを言われる。ゲームでよく聞く「スキル」という存在があることも。
「あなた方に与えるスキルは人間性に適したものが選択肢として与えられます。その中から5つのスキルを選んでください。」
そう言い終わると自分の頭に複数の文字が浮かび上がる。
超反撃(物理)、超反撃(魔法)、超反射、超回避、鑑定、未来予測、成長限界突破、復讐の化身、報復する肉体、死への導き
おそらくこの中から5つを選ぶのだろう。
「また、スキルは人によって取得のしやすさがあります。人間性は最も影響を受けれるものであるというだけ。今選ばなかったスキルも経験を重ねることで必ず取得できるでしょう。」
なるほど、ならば最初から有用そうなものを選びたくなる。
スキルの概要はざっくりと説明される。
超反撃:敵からの攻撃に対して物理攻撃か魔法攻撃でより強く反撃できる。
超回避:視覚外からの攻撃でも回避できる。
鑑定:対象の情報を見ることができる。
未来予測:任意のタイミングで次に起きることを予測することができる。
成長限界突破:肉体の成長の限界を突破して成長することができる。
復讐の化身:憎悪を持った状態で対象と戦闘になると身体能力が上昇する。
報復する肉体:攻撃を受ける度に身体能力が上昇する。
死への導き:対象の弱点が可視化される。
(…決めた。)
俺は未来予測、成長限界突破、復讐の化身、報復する肉体、死への導きを選んだ。
基本的にシナジーがあると思われるスキルで固めた構成になった。
ほかの人たちは次々とスキルを決めて俺が最後に召喚されるようだ。
「あなた方の活躍を期待していますね。」
そう言って光に包まれる。
目を開けると召喚された人以外に周りにはフルプレートの甲冑を着た人たちと、玉座に座った人、周りに侍っている何人かがいる。
「よくぞ参られた。異世界の勇者たち。まずは突然の召喚に応じてもらったことに感謝する。そして、どうかその力を私たちに貸してはもらえないだろうか。」
王様らしき人がそう言う。王冠を頭にしているのだから王様なのだろう。
「私たちは、魔族を中心とした存在との対立により日々疲弊していっている。勇者たちの力をもってこの状況を打開することができれば私たちの生活は改善されるだろう。人々の安全が確保された暁には君たちの望みを叶えると約束しよう。ただ…。」
何か言いづらいことがあるのだろうか。
「元の世界に帰る、とう望みは叶えることは私たちにはできない。」
「何故ですか!」
そう一人が叫ぶ。
「私たちは異世界から人を呼ぶことができても戻す術は持っていないのだ。召喚魔法自体、古の魔法であり、すべてが判明していない魔法なのだ。その逆をしろというのも私たちでは無理なのだ。」
「そんな…。」
叫んだ人がうなだれる。
確かに帰れなくなるのは残念,,,なのか?あんな残業続きでなんの楽しみもない生活に何の未練があるのか。自分には関係のない状況なのではないかと考え始める。
「突然のことが続いて混乱しているのはわかる。何日か経って落ち着いてから改めて話の続きをしよう。」
そう言い終わると部屋へ案内される。
「こちらの部屋でしばらくお過ごしください。」
なんとも広い部屋でこれから自分がどういったことをされるのか、することになるのかを考える。
(女神っぽい存在からの話とあの王様からの話しでは多分、魔族と戦わされることになるのだろうけど…。この世界ではほかになにができる?超反撃のスキル説明からして魔法があることは確実だし、まずはこの世界を知ることから始めた方がいいな。)
ざっくりとした展望を掲げているとドアが叩かれる。
「鑑定士です。ドアを開けても大丈夫ですか。」
鑑定士という言葉に?マークが浮かぶが城の者であれば心象を悪くするのも面倒ごとになりそうなので、「どうぞ。」
と返事をする。
「突然の訪問、申し訳ありません。王様から勇者一人ひとりのスキルを鑑定するよう言われています。」
(誰が何を持っているかを把握しておく方が使いやすいってことかな?)
「何か自分がすることはありますか?」
「いえ、そのままで結構です。」
紙に鑑定情報をメモしているのか、せわしなく手を動かす鑑定士。
「確認ですが、クロミヤ・ジュン様で間違いないでしょうか。」
「ええ、間違いありません。」
鑑定は名前とスキルがわかるのか、と考えていると、
「それではこれで失礼させていただきます。どうか、ごゆっくり。」
そう言い終わるとドアを閉めて帰っていった。なにか、考えていたような顔をしていた気がする。
考えても仕方ないので思考を放棄してベッドに体を投げ出して眠りにつく。
次の日の朝、ドアを何度か叩かれて開けると騎士らしき人物が立っている。
「クロミヤ・ジュン。あなたのスキルから勇者とは認められないと王様がおっしゃっています。故に、あなたをこの国から追放します。」
丁寧な口調でそんなことを言われた。




